私は三埜くんを部屋にあげて、飲み物を用意した。彼が持ってきたレジ袋からはネギがはみ出していたので
「まさかきみは、ほんとうにキムチ鍋をつくりに来たの?」
 訊ねると、三埜くんは頬を染めて私から視線を逸らした。胸元が大きくカットされたサテンのロングキャミソールだけを身につけていた私は、三埜くんが来ることを確信していたのだろう。
「あのっ……誤解しないでください。おれ、きょーこさんが死んでないかこわくて来たんです。なんか、いつもと様子が違ったから、それで」
「死なないよ」
「もう二本も飲んでるじゃないですか。こんなことしてたら心臓とまりますよ」
「とまらないよ」
「お願いだから、心臓、とめないでくださいよ。今日子さんの心臓とまったら、おれのまでとまっちゃいます」
 いつも間延びしたようにきょーこさんと呼ぶ彼が、めずらしく今日子さんと呼んだ。彼はどこまでわかっていてここへ来たのだろう。視線はまだ、私から逸らしたままだ。