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ガコンといつもより大きな音を響かせると、カゴを覗いた丸っこい目は息をのむように見開かれ、すぐに何度かまたばきして私を見つめた。
「キムチ鍋。人気あるんだね」
こないだのキムチ鍋がおいしかったので、七味や乾燥唐辛子や辣油をしこたまいれて食べようと思ったけれど、キムチ鍋は完売だった。三埜くんは陳列棚を一瞥してから
「昼間はそうでもないみたいですけど、夜はほら、ちょっと涼しくなってきたから。ヘルシーだし、ちょうどいいのかも。でもこの激辛麻辣おにぎりもおいしいですよ。あ、これチーズのせてお湯かけてもうまいかも」
いつもよりゆっくりしゃべって、ゆっくり袋に詰めた。短く切り揃えられた四角い爪は薄ピンク色で、とても滑らかに見えた。
「つくりに来てよ」
掠れた声でつぶやくと、いつもの調子で「へ?」と訊き返された。
「キムチ鍋。つくりに来てよ」
三埜くんはじっと押し黙った。やがてほかの客がやって来たので、私は重たいレジ袋を掴んだ。背中を押すような彼の「ありがとうございましたっ」を聞かずに店を出たのは、はじめてだった。