* * *
どうやってこの気持ちに始末をつけたらいいだろう。
アルコールや煙草に沈んでいくのは簡単で、だけど目覚めてしまえば泥濘から這い出てきたようにぐったりして。いいことなんてなにもなかった。内側から自分を壊しているようで一種の自傷だと思った。
今度こそ、おしまいだ。もうこれで最後だ。空になった瓶や缶を掻き集めながら、自分に誓う。
でも、それでも私は――
ガコンといつもより大きな音を響かせると、カゴを覗いた目は息をのむように見開かれ、何度かまたばきしてから私を見つめた。
「キムチ鍋、人気あるんだね。残念」
こないだのキムチ鍋がおいしかったので、今夜はあれに七味や乾燥唐辛子や辣油をしこたまいれて食べようと思っていたけれど、キムチ鍋は完売だった。三埜くんは陳列棚を一瞥してから
「昼間はそうでもないみたいですけど、夜はほら、ちょっと涼しくなってきたから。ヘルシーだし、ちょうどいいのかも。でもこの激辛麻辣おにぎりもおいしいですよ。あ、これチーズのせてお湯かけてもうまいかも」
三埜くんはいつもよりゆっくりしゃべって、いつもよりゆっくり袋に詰めた。短く切り揃えられた四角い爪は薄ピンク色で、とても滑らかに見える。
「つくりに来てよ」
掠れた声でつぶやくと、いつもの調子で「へ?」と訊き返された。
「キムチ鍋、うちにつくりに来てよ」
三埜くんは、じっと押し黙った。ほかの客がレジにやって来たので、私は浚うようにレジ袋を掴んだ。背中を押すような彼の「ありがとうございましたっ」を聞かずに店を出たのは、はじめてのことだった。