唇を尖らせた三埜くんは、バーコードを読み取ろうとしていたワインをカウンターに置いた。
「これは売りません。ビールは売るんでそれで我慢してください」
「いやいや、おかしいでしょう」
「トントンが老け顔で背もでっかいだけで、おれが標準なんです。なんだよ、みんな。トントンの顔がちょっといいからって」
 三埜くんはぶつくさ言いながら袋詰めをはじめ、私は仕方なくワインを諦めた。
 たしかにトントンは歩いていたら人目を引くような、どこか雰囲気のあるタイプだった。きっと高校時代から人気があったのだろう。だけど
「三埜くんは三埜くんで愛嬌があってかわいいと思うけど」
「へ?」
「社会人になったら上司のおじさんからかわいがられるよ。あ、ごめん。いま万札しかないんだけど」
 そう言ってお札を出すと、三埜くんはやけにそわそわして耳たぶを赤くした。私はすこし考えてから、そういうことかと察した。なんて擦れてない子だろう。
 三埜くんはしどろもどろしながら
「きょーこさん、ここからちょっと先に24時間営業のスーパーあるの知ってます?」
「うん。知ってるけど」