「君は今を生きてるんだ。幸せになる権利がある。運命なんかほっとけよ。まずは自分のことを考えろ!」

 王室の長い廊下を大股で歩きながら、魔法使いは強い口調でそう言った。
 2メートルはあろうかと思える長身。
 金色の長い髪が似合う小さな顔は怒っていてさえも美しい。

「アッシュ、待って」

 私はがっちりと手首をつかまれ強い力で引きずられていた。

「私、王子のところに戻るわ」
「はあ? あんなクズのところに? 君、頭イカれてんのか?」
「私はシンデレラ。ヒロインとしての責任があるの。だから、お願い」

 握られていた手が離されて。
 美貌の魔法使いは私の顔をじっと見つめる。

 これは世界一有名なおとぎ話のヒロインに転生した少女が、仲間たちに助けられほんのちょっぴり世界を変える物語。。