なんか、今日は、駅の電光掲示板と、放送の様子がおかしい。
 何時の電車って言ったっけ、あれ?四十五分の電車なんてあったっけ?行き先書いてねーし、赤字で特急とは書いてあるんだが・・・・・・前を見るといつもの電車とは風変わりな古そうなのが止まっていた。面白そうじゃん。
扉は閉まっていった。 中もあまり変わらないが・・・・・・座って、SNSを眺める。
少し経って、どこにいるのか知るために、窓を見た。

・・・・・・電車が、浮いていた。

すげー。
どんどん僕の住んでいる街から離れていく。
八時あたりだ。
たくさんの家の光が見える。
俺の住んでいるうちはどこだろうか
とっても綺麗だ。
まるでたくさんの家族の楽しさとか、素晴らしさとかをすべて映し出しているような、そしてそれを独り占めしているような感覚になった
別の世界を見ているようでとても幻想的だ。おれ、本当に空を飛んでいるんだ。美しいという言葉ではでは形容できないほどに、美しい。
俺の住んでいる街って、退屈だと思ってたこの街って、こんなに素敵な場所だったんだ。
電車は単調なリズムでどんどん進んでいく
よく見ると、鉄の柱に小袋があった。開けるとイヤホンが何個が入っていてスマホに差し込んで音楽を聴いた。まあ、ふつうの奴だな。とりあえずスターライトパレードでも流しながら、外の景色をみていた。
「つぎは、アーセント星前」
え??Σ(・ω・ノ)ノ電車は進んでいった。自分の街をとおざかっていくさみしさと、今から起こることへの高揚感とが葛藤していた
こんな気分になったの初めてだ
「まもなく・・・」
扉が開いた。僕が思っていたのとはちょっと違った宇宙人が5人くらい乗ってきた。
普通に人間みたいな感じだった

宇宙の景色ってこんなんなんだ。

アーセント星についた。何人かが、乗り込んできた。僕の想像していた宇宙人とは違って、俺ら人間と同じ見た目だった。

その中に、1人、俺と同じくらいの若さっぽい女の子がいた。
会釈してみた。何してるんだろみたいな目でこちらをみている。

話しかけてみますか?
→はい
いいえ

「あのー・・・・・・」
うわ、めっちゃやばい人みたいな目で見てくる。イヤホンをみんなが付けた。
「ぼく、地球から来たんですけど」
「え?地球・・・・・・そんな駅あったっけ・・・・・・まあいいや、もう次の駅で終点だから、そこで降りな」
「わかりましたー」
なんかよくわからないけど、従おう。
「次は終点 ナキケ星に止まります」

変な名前だなー・・・・・・あ、そっか、ここで降りるのか。電車が息を吐きながらドアを開ける。改札、どうしよう・・・・・・
「切符がないの?」
さっきの電車に乗っていた女の子が話しかけてくれた。
「ちょっと待ってて」
小走りで駅員さんのところに行って、黒い髪を揺らしながら戻ってきた。
「これ、あげるよ」
「でも、お金」
「それね、今落ちてたヤツ」
「そっか・・・・・・でも」
「いいよいいよ」
そう言うと彼女は颯爽と改札を通り、振り返って俺を見た。

「はやくはやくー」
俺は急ぎ目で切符を入れながら通った。

長髪で、同い年くらいか 背はそんなに高くなくて、目がちょっと大きいかんじ 白いトレーナーに黒のパーカー、赤いスカートが何となく大人な感じを出している。
というかなんで俺だけ敬語使ってんだろ。
「ありがとう」
女の子は顔を少ししかめたが、無視して改札をくぐってみた。

見たこともない景色。
星が降っているような、プラネタリウムの中にいるような気分。すぐにでも走り出したい気分だった。

「きれいっしょー 」
「ここ、毎日通ってるの?」
「そうだよ」
「最高じゃん」
「ふふっ、わたしの大好きな景色なんだ」
青い一等星が少し輝きを増した
「今日の王様は気分がいいのかなー」
「王様?」
「うん、王様。知らないの?なんで?」
「いや、ココ始めてきたし、、」
少し風が吹いた
「そうなの?よく来れたね。というかもう戻れないよ、夜遅いし」
時差は奇跡的にないみたいだ。
「私一人暮らしだし、うちくれば?」
「あ、じゃあそれで」
周りはまだ電気がついている。
オレンジ色の電灯、カラフルな家並・・馬車が・・空飛んでる・・・もうここまで来ると不思議でもない。

左に曲がって狭い路地に入った。なんか建物が左右に揺れてる
「なにこれ、不気味なんだけど」
「私狭い路地苦手なの、こんな時に王様の機嫌が」
「何なのその王様って」
「後で説明するね」

広い通りに出た。今度はさっきの所よりすごい明るい、というかいま明るくなったような・・木には電飾がパァーってついて、光る小さな玉を足に抱える鳥達がたくさん飛んでる。 夜なのに、花が上を向く。オレンジ色の電灯は、さっきより明るく光り、俺達を案内してくれているようだった。
「名前、私はセラ。」
「おれはね!青士!」
「反応しづらい名前だね!」
「なんだよそれ」
地面にも黄色のライトがついているのか。
「着いたよ、ここが私の家」
ほう。アパートのようだ。玄関を上がると廊下があって、部屋は2つあるみたいだ。白いソファときれいなヒノキのテーブル、それにピアノとスピーカー、小さな台所。
「パスタ作ってあげよっか」
「ほんとに?お願いします」
「はい、もっとやわらかくしゃべってもいいのに」
「はい、分かりました!」
家庭的な女がタイプの俺である事は置いておこう
「いただきます」
パスタを食べる。
「おいしいよ」
「ほんと?よかったー」
「俺も、セラがいなかったらどうなってたか」
 ほんとに行くとこなかったな。
「俺さ、いろいろ聞きたいことがあるんだけど」
「私もだよ」
「まあ、まず一ついい?」
「なに??」
「王様って何?」

セラはめんどくさそうな目をした。そのまま話し始めた。

「この星にはね、サンタクロースっていう魔法使いがいるの。その人はね、1ヵ月に1回 24日に誰か1人に魔法をかけるの。まあ、誰かは決まってないんだけどね」

サンタクロースって、あの信じる人がほとんどいないのにみんなにめっちゃ好かれてる、あのプレゼントをくれる人かな。ていうか話が壮大すぎない?

「それで、魔法にかけられた人の感情で、この世界は変わっていくの だから、その人が悲しんでたら世界中で雨が降ったり、その人が嬉しい気持ちだったら世界中が明るくなったり、とか、怖いって思ったら周りがめっちゃ怖い景色になったりとか。」
なるほど。
「だからね、この世界では魔法にかけられた人を王様と呼んでいるの。毎月24日、サンタクロースが誰かに魔法をかけると同時に、それまでの王様の魔法をとく。だかららこの世界に王様は1人しかいないんだよ。」
時計がコチコチと進んでいく。
なんか自分だけ喋っているのが寂しくなったのか、スピーカーをいじり始めた。
音楽プレイヤー持ってない?と聞いてきたので、渡すと、それを差し込み、曲を適当に選択して流し始めた。
「知らない曲しかねーし、ていうかなんで言葉通じるの?」
「ああ、いま青士イヤホンしてるじゃん」
「ああ、これか」
「この星ではみんなしてるよー、これ付ければ意思が通じるからねー、というかこのワイヤレスイヤホンにした方がいいよ」
半ば強引に付け替えさせられた。
「ちなみにね、王様になっても、魔法が解けるまでの1ヶ月の間自分が王様ってことに気づかない人もいるの。よく分かんないんだよ。でもね」

セラのパスタを巻く手が止まった。曲はサビに入った。 

「12月の王様だけは特別なの。24日、魔法が溶ける日の夜に、サンタさんが王様のとこに来て、望みを叶えてくれるんだよ。」

窓の外は、まだ満天の星空だ。曲は小さなギターの音とともに終結した。

「なるほどねー」
「ああ、星を行き来する電車はね、普通とか、急行とかは、一日一回来るのでも、特急って言うのはいつくるか分からないんだよね。というか、私初めて乗ったし。多分この星にも止まるかなーって。地球って、特急しか止まらないんじゃない?ま、安心しなされ、またいつかきっと来るさ。あと、この星は時が経つのが遅いから、ほかの星でいう一、二カ月が一分とかだったりね。」
まじかよ、おれ、帰れるのかな。てか特急しか止まらないとかあんのか。この世界でも高校があるらしく、明日1日でセラが手続きを済ませてくれるらしい。と、セラのスマホが振動した。スマホもあるんかい。セラの表情が変わると同時に、部屋の電気は暗くなり、テーブルが歪み始めた・・・・・・
「彼氏にふられたー」
「まじかー」
「ねえ、いきなりだよ!?酷すぎない?別れようって、ありえない・・・・・・」
外から雨の音がしてきた。泣き崩れると同時に、土砂降りになった。
「そう、気にしないで。また、次の恋につなげようや」
音楽プレイヤーで適当に失恋ソングを流した。
気持ちが緩んだのか、笑顔が見えた。
「青士、ありがとう」
雨の音は次第に小さくなっていった
「お前さ、いま、王様なんじゃねーの?」
心当たりはめっちゃある。
「あ、そうかも」
「気づくの遅すぎだろ!きょうもう二十四日じゃん」
「もうねる私」
十一時に二人は眠りについた。

11月25日、目覚めた。
その朝は、澄んでいた。雨上がりだろうか。
踊る草木が太陽に照らされて、まるで何かが始まるかのような感覚で僕は家を飛び出した。

手続きとか知らないけど、学校は、あるらしいから。セラと一緒に、チャリでこいでいった。
青空に満ちていた。
どこからか桜の花びらがボロボロ落ちてきた。
俺は1人で、すべての始まりを感じていたのではないか。

鼓動は次第に高まり、風は静かにそれを聞いていた。

大通りに出て空を見ると、人がグライダーをつけてたくさん飛んでいた。おはよー、おはよー。人ほんと沢山いる。なんか瞬間移動でたくさん移動したり 、のんびり歩いている人だっていた。

学校まで結構ある。1時間くらいかかる。
ついてからセラの一言、お前2A な。

「クラスがアルファベットってかっこいいな」
そう言うと、雲が動いて少し日が照ってきた。窓から見える景色は、意外と明るくていい。今日も電車が走っている。なんか、空を飛んでる電車もいっぱいある
チョット怖い夢を見てしまったんだけど、だからもっといいこと考えよう。そうしたら、空の色は青色になる。隣にいた水槽の中の亀が急にノリノリになって、いいかんじ!
「えー、今から転校生を紹介する」
「どんな女の子なんだろ」
「話しかけれるかなー」
「どうせ仲良くなれないんだしさ、いいんじゃないの」

まあ、聞かなかったことにしよう。もう震えが止まった手でドアを開ける。
「どうも」
いやそんな嫌そうな顔すんなよー俺も結構勇気いるけーだったんだぞーいやどうしよう。
「青士です、よろしく 」
言えた!
そう思うと教室がピンク色になって、壁とか床とか天井から綺麗な花が光とともに音を立てて咲いた。
なんだこの達成感は!!泣きそうだよもう、、
 
教室の中はとてもいい雰囲気になった。
「うえーーーい!!」

「転校生パネー!!」

いや、いい雰囲気・・・・・・いや、いい雰囲気!!
クラスは、となりの授業妨害になるくらいうるさくなった。

というかいきなり何も無いところからめっちゃ花が咲いても驚かないって!この世界なんでもありなのな。
「転校生イケメンじゃない?美咲」
「確かに・・・・・・私の右の席に来てほしいな」
「左じゃダメなん?」
「いや、利き手の方にいるのがいいし、私左利きだから教科書見せてもらう時に、右に来てくれれば、ノートとっている時に目が合って・・・・・・」
「別にお前の隣って決まったわけじゃないからな?」
「まあね、でも、隣の席になったら、毎日教科書忘れてきちゃーう・・・・・・ああ、もう、なんで右の机も左の机も離れてるんよ?小学生みたいにさ、隣同士いつもくっつけりゃいいのにー」

あの席の離れてる女子何話してるんだ?絶対愚痴・・
ちょっと暇だし、前の男子の会話聞いてみよー
「いやー、でも転校生男子かー」
「そういうこと言うなって、てかお前有言実行しろよ?」
「は?え?なんか言ったっけ?」
「話しかけるんだろ!」
「まあね」
この感じで話しかけられるのなんかいやだな・・・・・・

本当に上手くやっていけるのかな??少し不安が募る よし!そうだ!

「みなさーん、い、一発芸やりマース」
「オーーぇーいいいね」
言ってしまったー! いや、でもこうなったら渾身の力でやるしかない
僕はひだりのひじ、ひざ、右の肘膝をちかづけて、

「関節大集合っっっ!!!」

たくさんの花がいっせいに枯れた。

というかセラ違うクラスなのかよ、

「じゃあ・・・・・・アヤのとなりでいいか」
「はい」
隣のアヤさんは、机に本を隠しながら読んでいた。あそこにはどんな世界があるのだろうか。まあ、どうでもいいやー

「じゃあ、、ここを音読お願いね、、ナナ」
窓側のひとが音読をする景色は、どこかで見たようなものだった。
風に髪を靡かせながら、透き通るような声で音読をする。文字を追うその大きな目は、漏れる陽の光に照らされて輝いていた。綺麗だなー これが青春・・・・・・zzz

「キリーつ」ズザザザザザガガ
(!!??????)
たっていない僕の方をみんなが見ている

はっとしてすぐ立った

すぐさま礼した。

転校生の僕の方にはたくさんの人が集まってきた
「ねー、彼女いるの?」
「彼女いるのか リア充死ね」

「いやいねーよ」
その瞬間、重苦しい空気が一転、雲が動くと明るい光が教室内に飛び込んできた。
「俺もいねーんだよー」
小柄な坊主頭の安心できる一言。
「俺たち仲間だなー」
茶髪、長身、小顔キラキラ目のイケメンくんの意外な一言。
俺の心の不安要素が一瞬にしてとけさった。

「おれ、ルフ 野球部なんだ」
「おれは、エクル バスケ部」

この世界にも、部活とかやっぱりあるのか、、というか、似すぎじゃね?地球と、リンクしすぎてない??そんなもんか。

「部活は後で決めろよ、それより次は音楽なんだ、」」
「音楽?」
「そう、とくに、今日はクラス1ピアノのできるエクル、と、あの、あのナナちゃんのバイオリンの共演だぞ!」
「さっき音読してた?可愛いよなー」
「うわー、緊張するー」
「何に対してだよー、」
「ピヤノのだよ!」
「よーし、エクル、いつもみたいに一緒に行くぞ」
「いいぜーーい」
「俺も一緒に行っていいかな?」
エクルは茶髪を靡かせながら口をひらいた。
「おおー、青士!当たり前じゃん!一緒に行こーぜー!」
このノリ大好き!やっぱり友達って持つべきじゃん?
音楽の教科書は・・セラが確か鞄に・・あっこれだ!
「あーーっ」
ルフのがなかったらしい。一緒に探してみるけど、五分たっても見つからない

「あったぞ」
ナイスエクル!!あと授業まで・・2分!音楽室まで行かなきゃいけない!
行けないという諦めと、行けるという松岡風精神の葛藤をかき消すように、俺たち3人は急いで教室をでた!

「ルフ野球部だっけ?走るのはえーなー」
「えっへーんお前らと違ってなー」
「はぁー!?バスケ部の力舐めんじゃねーぞ おい、、お前、、」
「あおしだよ、」
「あおしか、ルフを調子に乗らせるわけには行かない、本気で走るぞ!」
「おう!!」
紅葉、広葉樹の舞う開けっ放しの窓の隣を、3人は本気で競走して言った。俺たちで歴史の1ページを刻むように・・

空いている広いドアに三人一緒に入った瞬間のチャイムは、俺たちを祝福しているようだった。

みんな俺たちの方を向いて笑っている。俺たちも、顔を見合わせてから、笑った。

「きりーつ」

「今日のメニューはー!これ!
まず合唱してー、その後今まで練習してきたみんなの発表を聴くよー!
ということでみんなたってー!」
まあ、知らない曲が流れ、みんなが歌う
のをいま聴いてる。なんか、冬の合唱祭では、海沿いで歌の練習するらしい。楽しみだなー。
そして、みんながグループに分かれて、二学期中練習してきたらしい発表を聞く。
自分は演奏しないのに、この楽しみ感はなんだ?
男子の4人グループが全員でギターを披露。ビートルズか!でも、一人ひとり個性のあるフォークギターの音の出し方で、結構俺は好きかな。 上からー!
次のグループー、なんかおにぎりがいっぱい・・・・・・なるほどねー野球部か!もちろんルフもいる。

ゴリゴリの野球部5人が小さなソプラノリコーダーをふいているけしきは、思わず吹いてしまう。
その後、女子ふたりでピアノ演奏とか、吹奏楽のガチ演奏とかが続いた。
「さーて、今日のメニューは次で最後デース!では、エクルさん、ナナさん、お願いします」
教室は静まり返った。これから始まることに対する期待が心を支配し、気持ちだけが前進していく。

音のない、自分だけの独創世界に浸っていた。
俺は実は、この瞬間が好きだ。始まる前に劇場が暗くなる瞬間とか、もう心に楽しみの気持ちしかないその瞬間が、まさに至福なのだ。

エルクは、さっきまでの彼とは違い、集中し鍵盤と対峙している。

ナナは、バイオリンをゆっくりと小さな顔に当てた。

エルクの細い指が動き出した。
短い節の、夜空を移すような優しい前奏が音楽室を包み込む。
そこへ、語りかけるようにバイオリンが入ってくる。
 
二人の世界に入っていった。観客はそれに飲み込まれるようにして聞いていた。
語りかけるようなバイオリンを、流星のように綺麗なピアノの音色は優しく包み込む。幻想的だ。
おれは目を閉じた。
暗い中、青と赤と白の色が少し見える。

目を開けた。辺りは星空に包まれる。僕の前には青色の海が澄み渡っていた。 寂しそうに浮かんでいる小さな島には一本のケヤキ、隣に大きなグランドピアノ。音符を月にプレゼントするように鍵盤を引くエクルがいた。ナナはその世界に祈りを込めて奏で続ける。 グランドピアノの上で足を組んで座り、白のワンピース姿で演奏している。
巨大樹は、その2人を静かに見守っていた。
次第に曲調も速く、ピアノタッチ、バイオリンを引く手が早くなっていく。星がきらめき、海の波はコーラスしていた。踊るように弾いていく。光り輝く世界に浸るエクルは、顔を上にあげながら涙を流していた。
ナナは美しい眼差しでエクルをみて、またバイオリンに目線をうつしてすこしほほえんだ。曲調が落ち着いた。僕の目からも涙がこぼれ落ちるのがわかった。
星が滲んでいき、ダイヤモンドのよう。

エクルの最後のワンタッチで、拍手が巻き起こった。同時に今まで何も無かったように現実の、音楽室の世界に戻された。

「凄いねー、私幻覚見ちゃったよ、とても綺麗な、、」
いや、セラの言うことが本当なら、あれは幻覚ではない。王様のいまの心の中の世界は、このような感じなのだろうか。 俺は、それを似ていると思うと同時に、世界観が好きだという感情を描いた。
「じゃあ、今日もメニューは終わりねー」
「きりつれーあしたー」
みんなは急ぎ足で音楽室から消えて言った

「おい、なにしてんだよ青士、次小テストだぞ」
エクルとルフは僕を待っていたようだ。

学校が終わって部活。僕はエクルに誘われ、経験のあるバスケ部を見に行った。同じ男子ながら、相手を抜いていくエクルの姿に心惹かれた。

「一緒に帰ろうぜーー!」
エクルが誘ってくれたから、途中まで一緒に帰った。
「ここで別れか、じゃーな!」
「じゃあ・・・・・・」

ようし、帰ろう・・・・・・どこに帰るんだっけ?ああ、セラのうちか・・・・・・セラの家ってどこだ!?

「おい、エクル、セラの家わかる?」
「せら?ああ、リケジョの。って、お前どういう関係だ!この時間に女子の家に行くなんて・・・・・・」
「いや、あの・・・・・・ちょっと親の関係で、ね?」
違うんだけどな。
「なんだよーつまらん、えーっと確か、あそこの交差点を右で・・・・・・で、セラの家だ。」
思いのほか説明がわかりやすい。だいたいイメージはついたというか、思い出せた。
「あいつは、俺と同じ中学だからだいたい知ってるんだょ。てかお前・・・・・・ほんとに付き合ってないよな?まあいいや、じゃーね」
「ホントだってば!じゃーね」
そうして僕は一人で歩き出した。

えーっと、交差点を右に曲がって・・・・・・考えていると、俺の通る道沿いの草木が小さく光り始めた。交差点を右に曲がった瞬間道沿いの草木は、手前から奥に向かって一気に綺麗な黄色の輝きを放った。そして700mくらい先のところで、その光は左へと向かった。それも、エクルが言っていた道、俺がいま頭で考えた道と同じだ。

一瞬にして、光り輝く道になった。その光にしたがっていった。前見つけた綺麗なカフェも横目に見て、今日は明るい路地を抜け、セラの家に着いた。
「よくつけたねー、おかえり。ご飯とか作ってやったから感謝しろよ」
「ああ、あり。」
「がとうまでいえ!!」
「めんどい」
「はあ?」
家に入っていった。
あったかいシチューを食べながら、
「エクルって知ってる?」
表情が明るくなった。
「ああ、あいつね、だいぶ面白いっしょ」
「というかイケメンじゃね?」
「そ!そんなことないって、」
あれ?この反応は・・
「手、つなぎたいとか思わない?」

「え、いやそんなこと・・・・・・てかちょっと青士キモいよ今日」

「そんなことないしー!俺だって頑張って生きてるんだからー」
なんだろう、2人だけなのに、5人家族のような団欒が生まれた。そういやみんな、何してんのかな、地球で。
いつものように睡眠用BGMを聴きながら寝た。

今日は早く目が覚めた。なんか、気分がいい。すぐに窓を開けると、まあ、差し込んできた。今まで曇り空だった日とかばかりだったからなんか嬉しい というかこの家ってこんな高いところにあったっけ。街一面が見渡せた。少しにやつき、制服をきて、リビングへ向かった。

「ああ、おはよー」
「おはよーよーよー」
「テンションいいねー」
「だらーだりー」
「料理作っといたから、私の手料理だよ!美味しいかな?ちょっと自信あるんだ、ふふ」
机の上にはトーストされたパンが置かれていた。
マーガリンをスラスラっと塗り、かじってみた
「どうかな?」
「うん、サクサクだね!マーガリンが少し溶けて甘味が染み込んで、噛めば噛むほど溢れ出す、朝からこんな至福な瞬間を体験できるなんて、やっぱセラ最高だわ!」
僕の目は多分今までで一番輝いていたのだろう!
(ちょっとしたジョークを言っただけなのに何なんだこいつ、朝からめんどくせえ。でもなんか嬉しいわ。何なんだこいつ。キモッ)
「そ、それより青士、早く出ないと」
「あ、そうだな」
「私準備できてっから、先行くね!」
「あ、おう、いってら」
学校の始業時刻は八時四十五分、家から学校まで徒歩二十分、時計を見ると・・・・・・
八時二十五分!!は?え?やべーーー
鞄を片手に、椅子から離れようとしてつまづいた。パンを咥え、家をでて鍵を閉める。 かおを上げると、輝く草木、太陽へと続く道路、そこを俺は無心になって駆け出した!!

整えてあった髪は全て後ろへ、カッターシャツが風で揺れる。全力疾走・・・・・・
パンが食えねー!
やべー、落ちる・・・・・・!校門前・・・・・・時間は?
八時四十分
(なんだ、余裕じゃん)

すぐに下駄箱へ向かい、蓋を開ける。

授業。

家に帰る道も、昨日通ったから覚えたし、こわい、と思うこともなくなった。道が光ったりとかはもうしなくなった。

昨日動画サイトで怖い話を見たのを思い出した。
やっぱり怖いわ。
狭い路地に入った。
背中の光る蜘蛛が建物のスキマから10匹、20匹と音も建てずに出てきた。ひたすら走って路地を抜けた。
後ろから音が聞こえる。
その音は段々大きくなってきた。人の声だろうか、とにかく振り返らずに走って家に入った。
セラが笑顔で待っていた。
「おかえりー、ご飯にする?お風呂に…」
この家は最高だ。平和すぎて泣きそう・・・

寝る部屋に入った。カーテンから月の光が差し込んで、その部屋は青色だった。

いつ、帰りの電車が来るのだろう。高校の友達のこととか、東高でサッカーやってた事とか、屋上で弁当食べたとか、眠いとしか思ってなかった日々が輝きて見えた。学校に行きたくないとか、何で思ったりしたんだろう。あんなにも楽しかったのに・・


窓の外がいきなり明るくなり、一人の人が降りてきた。肌は青く、目は黄色だった。
「おい」
イヤホンをしているから言葉が通じるようだ

「お前、どこか行きたい星はあるか、今から地球へ行こうと思っているのだが、、」
「お、お願い」
連れられてでると、そこには円盤があった。
「行くぞ」

円盤に乗り込んだ。円盤は徐々に上がって行った。

上から見ると、たくさんの光が街を作っていることがわかった。
「加速するぞ」
音の速さでUFOは進んだ
すごい速さで、沢山の星を通り過ぎていく。

「ねえ、サンタクロースって知ってる?」
「ああ、あの魔法使いか、 結構面白い魔法使うだろ、あいつは、中学の時に、あの事件にあって、それで、」

いきなりUFOの窓があいた。 隣の宇宙人は数少ない支柱を掴んでいたからよかったが、僕はすぐに宇宙空間へ投げ飛ばされた。

1人だけの、世界・・ずーっとおんなじ方向へ飛んで行っている・・・

後ろから黄色い光が迫ってきた。
「ガタンゴトンガタン・・・」

「うわあああっ」

目が覚めた。

「今日は初雪です、皆さんスリップに注意しましょう、ちなみに雨は降りませーん。」
カーテンを開けると、寂しい、アスファルトにちょっとだけ積もった雪があった。
なんかセラももう学校へ行っちゃってるし。
チャリで走っていくと、途中でスリップした。うわあああーーっ!!ぼくはコケて、しばらく意識を失っているように演じた。

目を開けると、空だった。白い雪が降ってきた。寝起きで急いでいてテンションが低かった僕の口が少し、少し緩んだ。
すると、雲がどいて、日が差した。
上から降ってくる雪がひとつひとつ光って、、世界すべてが光っているように思えた。

「よっしゃあーーーっ!」
立ち上がり、すぐにペダルに足をかけて、いつもの坂をすぐにかけていった。
空には2本の、七色の虹がかかっていた。

わからないでしょうねー!!マフラーをしたエクルのかわいさ、あのマフラーの向こうのブラックホールのような瞳、黒い学ランと白のコントラスト、その下に隠れた赤いパーカーの包容力、左に流された髪、そして、そして・・・・・・
「おお、青士か、おはよう」

そう、このクシャッとなる笑顔!!

「おはよーっ!!」

なんか今日テンション高いわー

「おはよー」
おー、ルフもスヌード似合うーーー・・・・・・それよりそれより、

ガラガラッ

やばい!!白と黒の柄のマフラーに雪がかかって、それを払う小さな手の奥にある大きな瞳と白い肌、そして流された白い髪!!!!
めっちゃきれい、ナナ!!

小さな口が開く。
「おはよーっ、寒いねー」

「そうだねー、さ・・・・・・」
「寒いねー」

エクルに言ったのか。

「おーい、席につけー」
にぶい音がそこら中から聞こえて、みんな椅子に座っていく
「きりーつ」
級長の掛け声とともに、鈍い音が一つになった!!なんて鈍いんだ!

「ガガガゴゴガガガ」
椅子を引く音、どれだけうるさいんだよ笑
これが、朝の目覚めか。
「エクル、パーカーとか先生に喧嘩売ってるんか、脱げ。」
「すみません。」
 そうだそうだ。
「そんなことは今日はいいんだ。とりま朝の連絡。12月15日にある合唱コンに向けて自由曲とか、指揮者とか、伴奏者とか、級長中心に決めとけや」
エクルは少し不満そうな顔をしている まあ、そこが可愛いんだけど。あ、俺ホモじゃないからね。
というか、こん中に音楽得意なやつとかいんのか。

「なんか、自由曲っつっても、この中から選べってことだから、貼っとくから決めとけや、じゃあ1限も適当にがんばれ、さよーならー」
「起立、れい、ありがとうございました」
「ありがとうございましたーー」
級長にみんな続く。ほんとにありがとうございましたって思ってる人なんているのだろうか、いや、いない。

級長が大きく口を開ける
「帰りの会で多数決を取りますので、決めといてください!!!!指揮者、伴奏者もね!!」
それでも眠いみんな、1限の現国は寝ていた。

「何がいいとお思いになりますか?」
何故か敬語を使ったルフは、卵焼きを口にした。
「そもそも何があったっけー」
「COSMOS、3月9日、時の旅人、カリブ海の夢、手紙、、、」
「なーるほどねー」
面白い口調のエクル
「時の旅人とか良くね、」
「金賞を取れそうだよね」
「・・・・・・もう一回確認してみよ!」
「級長ー、紙くれや」
「うい」

30曲書かれていた。さっき言ってた曲の他に、空駆ける天馬とか、HEIWAの鐘とかがあった。
「うー、決めがたいですねー」
ルフ、なぜ今日敬語なんだ。
エクルの表情がいきなり変わった。
ずっと真顔だったのが、徐々にニヤついてきた。何かを見つけたのか、気持ち悪い。
口を開いた。
「これいいんじゃない?これ前中学の頃先輩歌ってたんだよねー」
指の向こうをみた。

あなたへ~旅立ちに寄せるメッセージ~

夕暮れ時、先生の、いつもの小さな声が響く。
「よーし、帰りの会はじめるぞー」
「きりーつれー」
「連絡のあるやつー」
級長が口を開いた。
「じゃあ、自由曲の多数決をとりまーす、みんなかお伏せてねー、1回だけてーあげるんだよー、いっくよー!COSMOSがいい人ー、、、」
淡々と進められていく。というかなんで顔を伏せるんだ・・そうか!顔を伏せればなにに決まったのかドキドキできるからか!なんとあたりまえなことに気付いてしまったんだ!

「はーい、かおあげてね、自由曲わあああああっっっ」

なぜ溜める、気になるだろうが!
「っっ!!」
おおおーー!胸の高鳴りは最高潮だわ!

「明日発表するねっ。」

「えええええっ!」
酷い、ここまで期待させといて、級長、お前ほんとに人間かよ。
先生が元々細い目を糸のようにして言う。
「お前なー、それはひでーわ、だから俺が発表するな、あ、やっぱ俺も目つぶってたんだったわごめん。」
黙れゴミが。
「やっぱりいまいいまーす、あなたへです」
え・・・・・・おれがいいと思った曲じゃないか!! 級長が神に見えてきた、みんなこの曲が良かったんだなやっぱ。
「指揮者は、あ、ナナちゃんね、よろしく!」
おお!指揮はナナちゃんがやってくれるのか、これなら僕も大きい声が出る気がする。
「伴奏、エクルくん?宜しく。」
あ、エクルとナナ・・・・・・

帰りの会が終わった。僕はエクルの所に走っていた。
「おいお前、伴奏者か、良かったじゃ」
「エクルくーん、一緒に頑張ろうねっ。」
「そうだな!あ、今からちょっと音楽室来て合わせてくれない?」
「いいよー、バイオリンもついでにやりたいしね!」
2人は顔を合わせ、その後同じタイミングで笑った。
僕のかき消された言葉は、2人が出ていくのを見ることしか出来なかった。
なんか、言葉では言い表せない虚無感の中歩いて帰った。雨が凄く降っている。天気予報では晴れって言ってたのに・・・・・・

「セラー、お前らのクラスは何になったの?」
「あー、空駆ける天馬だよー」
「あー」
セラは顔を顰めた。
「よく分かんないけど、私級長だし、適当にカッコイイ名前の曲にきめたんだー。」
まあ、クラス全員がその曲がいいって思えばいいんか。
自分の部屋に戻った。


「っしゃーっ、金賞目指して頑張るぞー!」
パートに分かれて、歌練が始まった。
「じゃあ、テノールのリーダーは、、青士、君に決めた!!」
ツリ目のサマに、大きな拍手が起こった。

僕は照れを隠しきれず、笑ってしまった。すると、テノールのみんなも笑った、
「いえーい、じゃあラジカセ持ってくるな!」
不良っぽいエメが、ぴょんぴょん飛びながら向かった。
それをみた僕達と、ソプラノと、アルトと、バスと、みんなで大笑いした。

それぞれ楽しく始まった。
首をわざと大きく動かして笑わせるルフとか、メガネでちっちゃくて成績優秀なメガも、楽しそうにピョンピョンジャンプしながら歌ってた。
青空の下で光る雨上がりのケヤキの木も、僕達を応援しているようだった!
ここで、最高の気分になりたい、もっと最高の気分になりたい!!

「ちょっとみんなきいてくれー!」
教室は静かになった!でもみんなの笑顔は消えていない!
「俺さー、転校してきて、いきなりだから訳わかんなかったし、毎日学校行くのがやっとだったけどさー、このクラスの雰囲気がメッチャ大好き!!どんなアーティストのライブよりも、どんな遊園地よりも、この教室のほうが最高だよ! 俺は今、今まで味わったことのない気分!!胸の高鳴りが半端ねー!絶対、絶対優勝してやろーぜ!俺は2年A組が大好きだー!」
「イエーーーーイ!!」
みんな立ち上がってジャンプして手をあげてた!後ろのほうを見ると、ナナが口を抑えて静かに笑っていた。僕も笑顔になって、教壇を降りて、またパート練習に参加した。

「ねーねー、合唱コンって最高だよね!!」
スマホをソファで触るセラに、かまってちゃんに変身して話しかけた。
「最高だよ!!特に本番とか、去年どんだけみんな、笑って泣いてたか、早く本番にならないかなー」
「まじでそうだねー!」
「うん、でも、優勝は俺たちだからな?!」
「いや、ペガサスの私たちも、絶対に負けないから。」
顔を合わせた。ふたりがふたりのマジ顔に笑って、グータッチ!
「いえい!」
「テレビでもつけよーぜ」
「いいぜ!」

「王様、それは、自分の思考で世界を作り変えてしまうことがある謎の存在。サンタという魔法使いによって創られる存在だといわれる。」
「王様だったよー!!めっちゃ大変だったよー!早く一ヶ月たたないかなーって思っているよー!」
王様のもたらす幸福とは何か。
名誉教授のナワーゼさんに聞いてみた。
「例えばねー、機嫌がよかったら、星が綺麗とかね。これは本当にすごいと思う。あと、12月の王様は願いが叶えられるんでしょー!?
例えばこのイヤホンみたいに、いいものを作ってくれるかもよー!」

「なるほどー!王様は願いを叶えることも出来るのかもしれないのですね、その都市伝説は僕も聞いたことがあります。
では、肝心の、その力を制御する方法を」
「うーん、、平常心を保つしかないのね、
正直、綺麗な音楽を聞いたら景色が綺麗になったとか、今日は機嫌がいいからはれとか、悪いから雨とか、王様も人間だからしょうがないんよ、それ以上の、たとえば受験で落ちたとか、そういう時に、いかに平常心を保てるかにかかってるのよ」
「なるほど、では、王様の力の影響力というのは?」
「それも謎でね、王様の影響が半径何メーターとかも分かってないし、そもそも、王様の機嫌に対応する現象が王様の周りで起こるかどうかもいまいちわかってないの」
「なるほどー、とにかく、異常気象が起きないためにも、王様には余り動揺しないで欲しい、ということですね まあ王様が誰かわかりませんが」
「そうだねえーさよならー」

へえー
セラは興味なさげに聞いていた。
「平常心ねーー」
王様ってなんなんだろ

謎すぎて僕は全然理解出来なかった。だって、エクルが王様かもしれないってことだ
ろ?気づかなかったってことはさ、僕かもしれないってことだし、意味わからん。前回セラだし。あの音楽の時間の綺麗な景色も、うちのクラスの誰かの影響とは限らないんだろ。ねよ。

次の日
「よーしホームルーム始めるぞー」
隣の席のやつが憂鬱な顔をしている。それをみたその隣の席のやつがそれを見て憂鬱な顔になった。
憂鬱って移るんだな。まあ朝だしなー
「どうしたー青士ー、そんな憂鬱な顔してー」
人のこと言えねー

「じゃあ、今日から合唱の練習だからなー、歌詞つきの楽譜配っとくからなーー」
「えーーだりーーー」
うぇーいのルカクがなんかいってる。
憂鬱な顔のみんなは無視。
「じゃー1日がんばれよー」

ここから7時間な。無理くね?

「はーい、みんな机後ろにやってー」
授業がすべて終わって解放感に満たされたみんなは、級長リリの命令に素直に従った。
ナナの指揮、エクルの伴奏のもと、曲を通す。去年やっていた先輩達のことを思い出して、みんな必死で歌うが、もちろんバラバラだよ。
「最初はしっかり出来ていなくていいから。」
よく聞く言葉だ。しかし合唱コンまで時間が無いので、すぐにパート練習にうつった。
ソプラノ、アルト、テノールに分かれて、声がどんどん揃っていく姿は、まるで奇跡のようだ!!!

それから朝早く来て、帰りは遅くまで練習する練習が始まった。たまに体育館とか音楽室とかに移って練習するときが、青春を感じてめっちゃ楽しいんだよ!
土曜日練習は、最初に行ったら女子がちょっとしかいなかったけど、どんどんみんな来て、午後の体育館での練習は全員でできた。

次の水曜日が本番だ!!

月曜日。授業が終わり、机を下げて練習を始めようとしたその時、
「ごめん、今日塾のテストがあるんだよじゃーね!!明日も来れないからーー!!」
まさかのエクルが帰った!!
「まってよーーーみんなで練習出来ないじゃん!」
リリが叫んだ時にはもうエクルは教室をでていた。

「どうしよう・・・・・・」
リリは涙を流した。

「よし、伴奏なしでやろ!!私が手拍子するからさ!ね!」
そのナナの言葉に震撼されて、みんなで手拍子で歌った!

でも、いつもよりも声が小さかった。
というか、歌ってなかった?
「なんでこんな時に口パクするの?」
ナナが言う。
「ごめん、俺歌下手だから、ア・カペラやっぱ無理だわ」
「私も、ちょっとムリ」
「今日はもうやめよ!無理だよ、エルクがいないんだもん!!」
モブたちがほざいている。
「じゃあ今日はもうやめよう。はい、かいさーーん!!」
リリが叫んで、そのまま教室を走って出ていってしまった!
そのままみんな教室を出ていった。

俺は、みんなが出ていったあと、指揮の台の上で1人呆然としているナナに、勇気を出して話しかけてみた。
「ねえ」
「なに!!明日もエクル来ないんだよ!!もう、無理だよ!!」
「あのー、CDプレイヤー使えばいいんじゃないかな」
「それも壊れてるんだよー!!!」
「じゃあ、俺が持ってこっか?」
「・・・・・・え、ほんとうに!?」
「うんいいよー」
「ありがとう!!」

僕はナナに抱きしめられた!!

「私たちだって、優勝できるのかな?」

こんなの反則だろう!好きになっちゃうよ!!
「うん、俺たちならできるよ!笑ナナの最高の指揮で今までこんなにがんばっていたじゃないか!」
「そうだよね!ねえ、一緒に帰ろ?」
「いいの?」
「全然、一人じゃ寂しいし」

夕日に照らされた教室に立つナナを改めて可愛いって思った。

「どこの中学校のひと?」
興味津々に彼女は聞いてきた。
「いや、それは、秘密だよ!!」
「えーーー!すっごい気になる・・・・・・私はね、エナット中学だよ!」
「変わった名前だなー え、一緒にこの高校に上がってきた人いたの?」
「えーっとね、セラってひとだよ!青士はしらないだろうけど、、」
「あ、セラしってるよ!あいつ面白いよねー!」
「それな!毎日一緒に帰ってたわー懐かしー」
「そうなんだー」
「え、あいつとどこで知り合ったん?」
「いや、えーっとねー、普通に」
「普通ってなんだよ!笑」
一緒に歩いてると、交差点についた。彼女は左に曲がるらしい。俺は真っ直ぐだから、お別れだ。
「青士、また明日ね」
「じゃーね」
「うん!」

帰る時に見せる反則の笑顔な!

あー楽しかったなーなんか変なこと言ってないかなー。
好きな人と一緒に帰ってる時って、なんか別世界にいる感覚があるんだよなー。

「ただいまー」
「おかえりー、ご飯出来てるからそこ座っとって」
「はーい」
木製の机の上には、少し大きめのお皿に唐揚げがカラッと乗っている。
「あー美味しそう、いただきまーす!」

「ねー、セラ、ナナと同じ中学だったの?」
「あーそうだよー!え、ナナと話したん?」
「え、うん、一緒に帰ってきた」
「一緒に帰ってきたん!?おお!!あいつ良いひとだからね、すごい男子からも人気でね、よく告白されてたんだけど、全部断ったんだよ!何故か!好きになっちゃったならおつかれ」
「そうなんだー」
ああーーーーーまじかーーーもう俺たちは結ばれない運命なのか・・・・・・絶望的だーーー

次の日。学校に意外とみんな来てた。しかし、エクルは来ていない。
「よし、エクルなしでも今日しっかり練習して、絶対に明日優勝するよ!みんな!!」
リリが呼びかける。
「しゃあ!がんばったるー!!」
みんな賛同して、練習に移る。
午前中はパートごとに練習して、午後からは全体で練習した。

「あーもう3時かー」
「そうだなー疲れたなー」
みんなすっごい、やってやったなって言う、いい顔をしてる!

「ごめんごめん!遅くなったーーー」
「あ、エクルじゃん!!」
ナナの声を聞いたみんなは扉の方を見る。
「あ、ほんとだ!!」
「おせーよ、みんな待ってたんだぞ!」
「お前がいてのこのクラスだからな!」
その通りだよ!!エクルがいなかったらなんも始まんねえよ!
エクル愛されててうれしそう!
「みんなありがとう!!それじゃあ、通そ!!」
みんな並んだ。
エクルの伴奏はやはりとても上手で、みんなすごい笑顔で、ずっと歌ってる。


順番に色々なクラスの人が歌っていく。
「おれは、右から3番目かなー」
「あー、あの人も可愛いな、俺は左から4番目かな」
エクルと可愛い子探し。自分たちの番がくるまでは、それほど緊張する必要が無い。というか、めっちゃ暇だ。だから、どうしても可愛い子探しに流れがちなんだよなあ。

「それでは、いまから12:50まで昼休憩としまーす。昼休憩のすぐ後に歌うクラスは、早めに準備をしておいて下さい。2年A組ですね。」
その昼休憩のあとに歌うクラスってのが、おれらのクラスな。2年A組。
ホールでは食べることが出来ないので、外の芝生へ行って、みんなで食べた。
「早く食べ終わってなー、すぐに練習するからねー!」
リリはやはり真面目だなー、とか考えてたらみんなめっちゃはやく食べ始めたから、俺も早く食べなくちゃって、どうしても早く食べちゃう!

よし、食べ終わった!周りを見ると誰もいない!みんなに置いてかれたー
すぐにリハ室に向かう。
「おいおせーぞ!」
「おれたちめっちゃ呼んでたのに全然反応しなくて、昼食に集中しすぎか!」
「その割には食べるのがおせーな!」
「よっしゃー並べー!」
なるほどな。めっちゃ食べるのに集中してたのか。一緒に食べてたエクルのことも何回も無視してたかもしれないなー。

みんなで通す。

「おおーー!!めっちゃいい声! 私感動したよ!この調子で本番もね!ねえ、円陣組も!」
リリのまとめ方は最強か!
「絶対に優勝するぞー!」
「オーーっ!!」
そうして舞台裏へと進んだ。

「さて、いまから合唱コン午後の部をはじめまーす!準備にちょっと時間がかかるので、僕と隣にいる会長とでコントをします!」
準備とかないだろ。舞台裏で待つこの時間が1番、ドキドキとワクワクで興奮するのだ!

「あーーーーー緊張するーー!」
「それな!!」
「まじでーもうやばい!」
みんななにか話そうとしても会話が続かないようだ。

「ありがとうございましたあー!」
コントがおわった。
「では、入場してください。」
最後列から順に入場していく。

指揮者が右手をあげた。同時にみんなが足を開く。揃った。完璧だ。
ピアノが流れ始めた。



「はい、全クラス終わりました!!三時十分ですね、予定通りです。」
「結果発表。校長先生、お願いします。」
「はい。今回の合唱コンは、優勝だけしか発表しないやつです。」

まじかよ…無理くね?

「優勝は・・・」

「2年A組!!」

「よっしゃあああ!!!」

「ハイタッチいいい!」

「静かにしてください。」
さっと座った。

優勝かーー!!正直めっちゃ嬉しいわ!

「校長先生のお話」
「えー、本日はみなさん、とてもいい歌声を……」

合唱コンが終わり、外へ出た。

「みんな並んでー、写真撮ろー!」
「イェーイ、はいチーズ!」
みんなのニッコリ顔は、一生の思い出になるだろー。

「はい、かいさーん!」
「よっしゃー、かえろー!!」
空を見上げると、一番星が見えた。

「ねえ、」
後ろから話しかけてくる。
「一緒に帰ろ?」
上目遣いのナナだ!かわいい!愛が止まらない!!
「うん!」

「優勝おめでとう!」
「ありがと!お前もな!」
橙色に空がめく。ナナがよりいっそう綺麗に見える。
「夕焼けが綺麗だね」
「あれじゃない?王様が合唱コンにいてさ、楽しかったから、綺麗な空になったんじゃない?」
「うーん、そうなのかな?そうだとなんか、神秘的だよね!」
「何それ!」

線路沿いを2人で歩く。この上ない幸せ、いまが最高の気分!

「ねえ、」

上目遣いのナナ。

「あのね、青士」
「何?」
「私ね、この合唱コンの練習とか本番とかね、すごい楽しかった!青士にたすけられてね、嬉しかった」
「そっか、俺も楽しかったよ!」

「それでね、私、青士と一緒にいる時間がすごく幸せでね、それで、

私、青士のことが、好きです!」

「・・え?」

夕日に照らされたナナがいっそう輝いた。えっと、、嬉しい、嬉しすぎる!
やばい、胸の高鳴りが止まらない、どうすればいいんだろう!!やばいやばい、、

「だから、、」

動揺する、心が落ち着かない!!世界がゆらゆらに見える、電柱も、木も、ゆらゆら、ふわふわ・・・・・・あ、線路が揺れてる・・・・・・線路がナナのほうに・・・・・・

「私と、付き合ってください!!」

特急電車が猛スピードで走ってくる。

「あ、ナナやばい、電車が、、」
「え!?あ・・・・・:じゃーね!笑」

ナナは、笑顔で別れを告げた。

どうすれば分からなくて、猛ダッシュで家に帰った。強い雨が降ってきた。きっと俺が悲しくなったからだ。とにかく走って帰った。

「おかえりー!ご飯出来てるよー」
あ、、セラの声に涙があふれてくる、、
「ねえ、」
「なに?」
「ナナが、しんだ」
「は、え!?なんで?」
「それは・・・・・・おれが王様で、告白されたら気分が上がって、それで・・・・・・その影響で線路が揺れて、電車に轢かれて死んだ。」
「ああ、そうなのね…青士、もう今夜は寝るといいよ。」
「ああ、うん。おやすみ」
 それから何日も、悪い夢を見ていた。

「・・・・・・ねえ」
夢から覚めて、はじめに視界に入ってきたのは、セラだった。
「わ!」
「しっ、静かに!ずっと寝ていたようね。」

どこだ?ここ・・・・・・暗い・・・・・・
「ここは屋根裏部屋。青士、まずいことになってるよ。」
「ねえ、、殺さない?」
「何寝ぼけてんの。青士が王様ってことがあからさまになった。そして青士の動揺によって、ナナが殺された。このまま王様を生かしておけば危険だってことになったの。だから世間は、王様の青士をとても恐れているとともに、殺そうとしている。このまま屋根裏部屋にいるんだよ!!絶対に!」
「ああ、そういうことか・・・・・・でも、おれを殺しても、また新しい王様が出てきて、何も解決しないことない?」
「あのね、ここ数日、毎日、雷が落ちているの。そして、日は登らない。雨がずっと降っている。毎日、雷に打たれて誰かが死んでいる。王様の精神状態が最悪なので、今の王様を生かしておいたら危険だ、ということになったんだ。」
「あーなるほどねー」
「とにかくね、いつ死ぬかわからないから・・・・・・気をつけてね!!」
「ねえ・・・・・・いま、何日?」
「十二月二十三日!!!」
「おっけえー!」

あと一日でクリスマスだ。

「私は食べ物を買ってくるから、絶対にここから離れないでね!」
「うん。」
セラは出ていった。
説明を聞いてだいたいわかったが・・・・・・やっぱよくわからない。ニュースでやってねえかなー、
下へ降りて見てみよー
パチッ
「クリスマス特集ーー!明日はクリスマスイブ、明後日はクリスマスだよー、神聖だねー、、」
ピッ
「次のニュースです。王様が、まだ捕まりません。外の雨はまだやまず、ずーっと夜は明けません。すぐに王様を見つけ、殺さなければ、また雷で誰か死ぬでしょう・・」
 まじか!!こんな風に報道されてるのか!
「まずは雷に気を付けてください。」
 雷・・本当に雷がずっと落ちてたんだな。
「王様を見つけなければ、クリスマスの願いで、この星の人々がみんな死んでしまう可能性も十分にあります。」
 王様の願い・・・・・・
「王様を見つけたら、皆さんの持つその包丁で刺してください。銃はほかの人に当たる危険があるので、使わないようにしましょう。」

ああ、まずいことになっている。
まずいことになっているわ。
刺されるわ。このままだと。こわ。そしてセラ以外全員敵?ということになるな。

はあーあ、あれ、テレビになんか俺の顔が・・・・・・

「王様の名前は青士、こんな顔です。」
うわーーーーー特定されてる本当に!
とりあえず、雷が止めばいいんだろ?
寝なきゃいい・・・・・・雨をやませればいいんだろ?
あー、雨やんでーー!
外を見た。止んでる。よかったーー。

「見つけたぞ!」
中年の白髪小太りのおっさんに窓から見つかった!!!どうしよう・・乗り込んでくる!みんな包丁を持っている。
すぐに2階に逃げ込んだ!!
やばい、階段からのぼってくる!!
逃げなきゃ・・・・・・
部屋に逃げたがついてくる!!どうしよ・・窓から飛び降りるか?
「申し訳ないが、死んでもらうぞ!王様!!!」
う・・・・・・万事休すか・・・・・・
「窓のしたに降りてきて!」
セラの声だ! はしごが立ててある。これに降りて逃げよう!
「はしごから逃げるだと!?くそお!」
はしごを速く降りなきゃ・・・・・・
「まてーー!!」
やばい、おっさんが降りてきた!!どうしよう・・・・・・
「青士!後ろに乗って、しっかりつかまって!!」
バイクだ!バイクが用意されている!
すぐに乗り込んでヘルメットを付け、セラに捕まった。
「いくよ!」
すごい加速でバイクが進んでいく!!
「まてーー!!絶対に逃がさないからなー!」
後ろでなんかおっさんが叫んでる。

「なんで下に降りたの?」
セラがちょい怒ってる。
「いやー、ちょっと、今俺がどんな状況になってるかを確かめたくてね、ニュースを・・・・・・」
「ほんとうにばか!これで家が特定されたし、戻れないんだよ!この世界にいる人は皆、青士の敵なんだよ!死ぬかもしれないんだよ!」
「・・・・・・ごめん」
「まあ、いいわ。こうやってバイクに乗ってれば、ヘルメットしてるからわからんし、暗いし」
「うん」

「ねえ、青士、なんで、ナナは、死んだの?」
「合唱コンの帰りに、告白されたんだ」
「え!?」
セラが一瞬振り返ろうとするが、無理っぽかった。
「告白は、すごい嬉しかったんだけど、すごい動揺しちゃって・・・・・・それで」
「それでどうなったの?」
「それが線路沿いだったの。線路が揺れて、電車がナナの前にきて・・・・・・ナナはじゃーね!っていって、それで」

一瞬セラが左右に揺れた。
「そ、そうだったんだね。すごい可哀想・・・・・・痛かったんだろうね・・・・・・いっつも一緒にいたのに・・・・・・もういないんだね・・・・・・」

体が小刻みに震えている。泣いているのだろう。俺は、セラを少し強めに抱きしめた。

「ねえ、青士。あのさ、もし、ナナが死ななかったとしたら」
「うん」
「なんて返事をした?」
「それは・・・・・・一緒に付き合おうって・・・・・・」
「えっ・・・・・・」
セラの髪が柔らかく揺れた。
「まあ、そ、そうだよね・・・・・・まえなんか一緒に帰ってたし・・・・・・でもなー、まさか青士がナナのことが本当に好きだったなんてなーー、ちょっと、思わなかったかな!」
「そ、そっか・・・・・・」
「だよね、ナナ可愛いもんね!」
「ああ、うん・・・・・・」
「あーー、ナナも幸せ者だなーー!!思いを伝えられるなんて!・・・・・・ねえ、もうすぐで十二月二十四日だよねーー、何を願うの?・・・・・・やっぱり大好きなナナを生き返らせるんだよね・・・・・・私はそれがいいと思うよ!ナナも青士のこと好きだったし、青士も、ね」
「そうだね、そうしよ」
「え?あ、そっか。ああ、うん、それが一番だよ」
暗い道を、電灯がかすかに照らしている。

「見つけたぞ!!バイクに二人乗りしている、間違いない、片方が王様だ!!」
右から黒い車が何台かやってきた。
「やばいよ青士、さっきの人に密告されたわ。とりあえず、私がいないから銃は打ってこないはず。しっかりと捕まっててね!」
「おっけー!!」
バイクを加速させて、右へ、左へと曲がっていった。

「あ!見つけたぞ!」
前方からも車が来た。やばい。うしろからも、前からも、やってくる。
「やばい!!」

十字路だ。セラが右へ曲がろうとするが、違う車が来ていた。
逆側も車が来ていた。

囲まれた。

十字路の前後左右の車から、人がたくさん降りてくる。
スーツを着たおじさんや、チャラい格好をして髪を初めた大学生、OLっぽい人もみんな、四十人くらい、包丁を持って立っている。きっと俺たちがここに来るという情報を聞いて、
近所の人たちがみんな、車に乗って来たのだろう。
俺とセラは、バイクを止め、ヘルメットを取って、地上に降り立った。
見渡す限り、こちらにナイフを向けている人達である。怖い!!
「青士」
「なに?」
「囲まれたね。今まで楽しかったよ。」
え!?めっちゃ諦めモードなんだが・・・・・・
「セラ!?俺助からんの?」
「いやー、この状況、普通に考えて助からんだろ!なにいってんの?」
「ま、まあそうだよな・・・・・・」

僕達を囲んでいる四十人の中の1番年長そうな男性が叫ぶ。
「死んでもらうぞ、王様!俺の娘は、お前のせいで、雷に遭って、死んだ・・・・・・もう、これ以上、人を殺すんじゃない!」
「そうだそうだー!!」
周りを見渡す。あそこにいるのはエクルじゃないか!
「おい、エクル!お前なんでそこにいるんだよ!」
「お前、ナナを殺すようなやつだったなんて、夢にも思わなかったわ。俺は、ナナが大好きだった。そしてナナがお前のことを好きなことも知っていた。なのにお前はなんで殺した?お前がそんなに最低なヤツだとは思わなかった」
「いや、あれは事故だったんだ・・・・・・」
「そんな言い訳は通用しない!みんな、構えて!」
「まって、やめて!ねえ、セラ!」
「青士、今までありがとね。絶対に忘れないよ!」
セラの声が震えている。
「まって!セラ、何で泣いてんだよ!もう俺は死ぬしかないのかよ!」


「うん」

「うんじゃねーよ!!あーーーやばい!」
「よし、あの男にかかれえーーーっ!」
囲んでいる40人が一斉にこちらに向かってきた。
「うわあああ」

思えば色々なことがあったなあ。 セラが助けてくれて、家に一緒に住まわして貰ったんだよな。みんなで合唱して、優勝して、写真撮って、これ以上の青春はもうないだろ。最高だったなーー!

ナイフはもうそこまで迫っていた。
「死ねええええ!!!!」

次の瞬間、ナイフを持った人が全員、身体中から大量に血をだして、たおれ、死んだ・・・・・・
僕とセラを、40の死体と、ものすごい量の血が、取り囲んでいる。
「さ、セラ、何が起こったんだ?」
「わ、分からない、、助かったのは、確かだけど、、」
「ふぉっふぉっふぉっ!!!王様は殺したらダメなんだぞー。」
赤い帽子に赤い服・・返り血か?違う!白ひげもじゃもじゃ、絶対にサンタだ!

「サンタさん!!」

思わず叫んでしまった。
「おう、ワシのことを知っておるのか。今日はクリスマスイブじゃからな。きたわい。どうじゃ?1ヶ月王様をやってみて」
「もう災難だよ!大好きな人は殺されるし、」
またほかの車が来た。
「みつけたぞーー!!!」
「ここに乗るんじゃ。」
セラと俺は、サンタのソリに乗せてもらった。
「いくぞー!ふぉっ!!!ふぉっ!!!」

トナカイが走った。俺たちを追うのに興味のない大多数の人は、クリスマスイブということで、イルミネーションを至る所につけていたのだ。

今、俺たちは空を飛んでいる!!上から見るまちは、キラキラかがやいて、とても綺麗だ!
「めっちゃ綺麗だねーーー!!!キラッキラしてる!!」
俺の思ったことそのまま言うなやセラ。
「そうだねーー!!」
たくさんの家があるんだなー
「ふぉっふぉっ!!!綺麗じゃろーー!」
「色々なぞがあるから、教えて欲しいのですけど」
「ふぉっふぉっ!!!そうかー何から話そうかなー・・・・・・この星は、地球の文化と少しリンクしているのじゃ。地球は素晴らしい星じゃからな、この星のみんなの記憶に残る少しずつインプットしているのじゃ。」
 なるほど、だからこんなにリンクしているのか。
「次に王様のことじゃな。気持ちによって世界が変わる、とても幻想的だと思ったんじゃ、だからそうしたのじゃ。しかし、王様がひとを殺すようになってしまったら、元も子もないからな。これで終わりじゃ。」
「王様は、もう終わるのですか?」
単純に疑問だったから、単純に王様に聞いてみた。
「ああ、王様はなしだ。セラ、全国民に伝えといてくれ。」
「私が伝えるんですか?絶対疑われますよね?」
あ、たしかに。
「ふぉっ!!!たしかに。ワシが全国放送で伝えとくわ。」
「よろしくお願い致します。」
まだ全然よくわかんない。

「あのー、サンタさん・・・・・・」
「ふぉっ!?」
「あなたって、何者ですか?ナケキ星はなんですか?」
「ふおっ!わしは魔法使いじゃ!ナケキ星はな、こんな幻想的な星を、夢の星を、作りたかったんじゃよ。」
「たしかに、音楽の時間に、すごく綺麗な世界に飛び込みました」
「そうじゃろ?ここで王様がなくなったとして、みんな楽しく過ごせるじゃろう。わしは、この星を千年前に作った。文明の発達は速かった。何故なら、パイオニアたちの記憶はわしが自分でインプットしたからじゃ。その後も辻褄が合わなくなったらわしが調節する。わしは魔法使いじゃからな」
セラがなにかに気づく。
「あなたのおかげで、私はこうして生きていられるの?」
「まあ、そうじゃよ」
「・・・・・・ありがとう」
ためらいながらのありがとう、なかなか悪くないな。
 
「さあ、青士、これで狙われることはなくなった。願いごとを言うのじゃ。」
僕達を載せたそりは、ナケキ星の上空をどんどん進んでいく。下を見るときらきらしている。色々な形をした家が、それぞれの家庭で輝きあっている。
「サンタさん、さっきあなたが殺した人と、僕の雷で死んだ人、そしてナナを、生き返らせてください。」
「ナナっていうのは?」
「おれの、大好きな・・・・・・」
「どうするのじゃ?」
「は、はい、大好きなナナを生き返らせてください。」
「さっきワシが殺した人もか?雷も?」
「はい。罪ないんで。」
「分かった。じきに夜が開ける。彼女らは生き返り、彼女らの家のベッドに転送され、普段どおり、起きる。そして、それが王様の願いだったと、僕が全国放送で伝えよう。」
「っていうか、サンタさん本人がテレビに出るんですか?いいんですか?」
「ああ、いいとも。影の独裁者をナケキ星の人々は知ることになるが、わしはもう、この星から離れようと思う。色んな星の子供たちへのプレゼントを作るのも大変だしな。あと、もうワシは2000歳を超えた。どんな罵倒を浴びようと先は長くないのだから、もういいわ。それは冗談で、もっと生きるんだけど、まあとにかく、いいわ」
「いいって?」
「ああ、テレビに出てもいいよ、っていう」
「あー、はい」
「あー、これも持ってけ」
サンタがおれになんか金色に光るチケットを渡してきた。
「なんですか?これ。」
「これは、テレポートチケットじゃ。自分、地球から来たろ。なんかの時に、このチケットをいまから渡す読み取り装置にかざしたら、一瞬で地球に帰れる仕組みになっとる。特急しか止まらないからな、いつ帰れるかって、心配だったじゃろ。」
そう言いながら、手のひらサイズのコンパクトな読み取り装置をわたしてきた。
「でも、僕多分これ使うことないですよ。この星が僕は大好きですし。」
「まあ、なんかの時に使うのな。ちなみに、地球では今、お前は行方不明ということになっている。警察が頑張って探したが、見つからなかったので、結局、シベリアとかで、迷い込んでクマに食べられたのじゃないかって、ことで、迷宮入りになっている。だから、もし地球に帰って何か言われたら、シベリアで迷い込んでいて自給自足してましたっていうんだな。ちなみに、その券を使って地球に帰ったら、この星でおった傷とか基本回復されるからな、スライムに攻撃されてもあんしんしろよ」
「分かりました、ありがとうございますサンタさん」
「じゃあ、明日の朝のニュースを見るまで、ワシのアーセント別荘で待機だ。僻地にあるから見つかるまい。ワープポイントを用意しておくから、そこに立ったらセラの家にワープできる。魔法の力でワープできるからな。王様は魔法の副作用で予知夢をみることもあるみたいだ、まあ気にしないことだ。あ、お前は王様終わったのか。じゃー関係ないな俺は何を言ってるんだ。あとは、この星のみんなは優しいから何とかなるわ。ワープしろよ。おれのうちまでおくってくからな、捕まってろよ」
「はい」
びゅーんってアーセント星の空を飛ぶ。
なんか無人島についた。ここでそりをとめ、ちっさい木の小屋に2人で入った。
 
「サンタさんありがとうございました。」
びゅーんってサンタが飛んでいった。

簡素なログハウスにふたりきりだ。電球をつけた。
「セラ、ありがとね。」
「全然いいよ。ああ、疲れたねー」
「疲れたねー!」
「青士、外を見てよ」
海が朝日に照らされて、金色に光っていた。空は赤色に焼けていて、所々青や紫が混じっている。
「綺麗だねー」
「そうだねー、私たちが、この世界に、もう一度迎えられたみたいだ。 久しぶりなんだよ?夜明け。こんなに素晴らしかったんたね」
「語んな」
「悪い?別にいいでしょ!」
「もう、ニュースでやってるのかな?俺達のこと」
「やってるんじゃない?」
ワープポイントが目に入る。

「戻るか。」
「うん。」
部屋の隅、人が2人くらい入れるスペースに、青い円が光っている。そこから青い光が縦に上に漏れている。
トンッ
2人で乗った。
瞬きをしたら、セラの家に着いた。
リビングだ。テレビが付けっぱなしになっている。
「見つけたぞ!!!」
ガラスを割って、大学生くらいのパーカーグラサン金髪男が入ってきた。片手には包丁が見える。
「あの、俺を殺してももう何にもならないですよ。このテレビを見てください。」
サンタが出ていた。
「えー、ワシがサンタじゃ。魔法使い。王様を決めているのはわしじゃ。まあ、毎回適当に決めるけどな」
本当にランダムだったんだ。
「今日で王様が普通だと変わるはずじゃが、もう、王様は終わりじゃ。もう、青士を狙うな。」
隣の男は困惑してる。
「そういうことだ。わかったら帰れ!」
「はい!し、失礼いたしました!」
どっかいってしまった。

「えー、先日亡くなったナナさんは王様の願いによって生き返った模様。また、王様を取り囲んだ何人かも生き返った模様でございます。」
「あー良かったー私たちは無実だー」
「それな。」
「一緒に学校に行こう?」
「うん。」
その日の通学路は久しぶりに思えた。というか久しぶりだわ。


「おはよーっ!!青士!」
学校へ行くと、ナナに話しかけられた。テンションがたかい!

「お、おう、おはよう。」
「なんだよそのテンション!!おーい!」
「う、うえーい」
「青士」
結構テンション高いな、次はどんなセリフが飛び出すんだろう。
「今日、青士のうちに行ってもいい??」
うおおお!!可愛い!やっぱり可愛い!俺大好きだわやっぱりー!
「うん、いいよ、ぜんぜんいいよ!!」
「やったー!ねえ、泊まってもいい?」
最高かよ!!ただ・・・・・・
「俺はすごく泊まって欲しいんだけど、でもな、うちにはセラがいるんだよなー」

そう、セラがいるのだーーー!

「え、いいってー!セラもいいって、いってたよ!」
え、セラと俺が同棲していること知ってんの?

「マジかよ!セラの許可」
「じゃ、決まりねーーっ!!」
ナナはすっごい笑顔でそう言うと、自分の席に向かった。

「それでは、授業をはじめまーす!」
だっるーい授業が始まった。
一限は、数学。難しい問題が出された。
30分後・・・・・・エクル、寝ている。さすがだ。そんなにも余裕で問題が解けちゃうとは。
まあそんなわけないか。
すっかりといつもの生活に戻ったな。こんなに楽しかったっけ。

二限は、国語。
「じゃーこの時の、筆者が言いたいことはー?青士」
「えーっと、背が高くなりたい」
「違うでしょ!結局、哲学は深いってこと!適当に言うんじゃない!」
「いや、あんたも、なかなか適当でしょ。なんだよ、哲学は深い、って。」
「う、うるさい!敬語使え!次行くよ!」
あーー、なんかこのゆるーいかんじも戻ってきてよかったって思うわ。

「ねえ、青士、一緒に帰ろ!」
夕焼けが煌びやかな教室。一緒に歩いて帰る。
「ねー、今日のご飯なにかなー?」
「うーん、お肉とかじゃない?」
「えー、お肉?うれしい!!」
お肉って結構調理方法とかほかの食材との組み合わせによって色々と変わってくるとおもうんだけどな。
「しらんよわかんないよ!セラが何を作っているかなんて俺」
「お肉楽しみだなーー」
もうすっかり暗くなったようだ。家に着くまでもう少し・・・
ナナが覗き込んできた。
「いつ着くの?」
「ここ曲がったらつくから、楽しみにしとけ。」
「わかった。」
家の前につく。どんな反応をされるだろうか、ここへ来て怖くなってきたわ。

「ただいまー。」
セラが廊下をかけてきた。
「おかえりーーあれっ!?」
「うふふ、お邪魔しますっ!」
「え、ナナ連れてきたの?」
「セラ、お邪魔しますっ!!」
「いや、分かったけど、とりあえず入って!あの、二人分しか作らなかったから冷凍食品しかないんだけど、大丈夫かな」
さすがはセラだ。一瞬の同様も一瞬でなくなってしまう。
とりあえず2人とも家に上がった。食卓には二人分の料理が並んでいた。何故だろうか、いつもよりも豪華に見えた気がした。

「さあ、座ってー!」
そう言いながら、セラが冷凍食品をあたためはじめる。
「ナナがこっちねー、私はここにすわってー、青士はそこにすわっててー。」
俺のところには、冷凍食品が乗るのだろうか。2人のはすごく豪華だ。いいなーー!こんな感じの日常が、すごい楽しいって感じるんだよー!

電子レンジが鳴った。
「おーー!冷凍食品が出来たみたいだね!」
今日はセラのテンションがたけえ、、
「はーい!おいしそうだねーー」
エビフライがさらに盛られた。白米はあらかじめ置いてあったので、今日は白米とエビフライっていうメニューだ!おいしそうー!!
セラとナナの机には白いさらになんか美味しそうなステーキが乗っていて、ソースがかかっている。その横にはサラダが置いてある。これでもだいぶ豪華だと思うよ!!
「それではー、いただきまーす!」
箸でエビフライを掴んだ。衣がキラキラ光っているように見えた。箸で掴み、口の前まで持っていった。湯気が出ている。食欲がそそられる。口に入れた。
衣がサクサクすぎる!そして中のエビはめっちゃプリプリで、噛めば噛むほど味が出てくる!冷凍食品ってこんなに美味かったっけ?すご。
「美味しいねー。このステーキ、ナナ」
「そうだねー、最高に美味しいねー!」
そう言ってふたりは僕を一瞥した。
「そうか、おいしいかー、よかったなー!おれもエビフライ美味しすぎて今幸せな気分だわー!」
冷凍食品を食べて感動しているおれを、ふたりは不思議そうにみていた。
それで、セラの部屋で二人が、おれの部屋で俺一人が寝ることになった。ナナは俺のためではなくてセラのために泊まりに来たとかそういうことか。

「おやすみなさーい、青士」
満面の笑みでナナがそういう。

「おやすみなさーい、青士」
満面の笑みでセラがそういう。

「はーい」
おれはそう言って、おれの部屋へいった。
部屋の3分の2位を取る少し大きいベッドは、というか部屋が狭いだけか、ベッドは、今まで色々あった俺を包み込んだ。ああ、こんな楽しい日々が、ずっと続けばいいのに・・・・・・

な、なんだここ、、なんだこの風呂、なんだこの牛乳風呂!超気持ちいいーー!!牛乳風呂1階入ってみたかったんだよねー、飲んでみよう。あー、甘くてうめっ!最高だわ。ナナって、上からめっちゃ牛乳が降ってくる、やばい、うわああーーー!

「はっ!」
俺は目を開けた。横を向いて寝ていた。なんだあの夢。

「はっ!」
おれはあることに気がついた。そう、目の前にナナがいるのだ!ナナが、隣で横になっているのだーー!

「青士?」
「ん、なに?」
ナナの声が小さい・・・ちょっと弱々しいかな・・・
「私ね、今ね、怖い夢見ちゃってね、眠れないの。」
「う、うん。」
「そ、それでね、怖くなっちゃってね、青士のところに来たの。」
大きく深い瞳が、こちらを見ていた。
「青士、抱きしめてもいい?」
今までで最高にかわいいナナだ。
「うん。」
ナナが俺に腕をまわして、ギュッでした。柔らかくて温かい彼女の体が俺を包み込んでいる。

「ナナ、俺、お前のこと大好きだよ。」
「私もだよ。私から絶対離れないで、ずっと一緒にいようね!」
「うん」

今夜は楽しすぎる。やばい心臓ばくばくだわ。

「ねえ」

一瞬 彼女の目が鋭くなった気がした。

「青士は、私のこと、すき!?」
「え!?ナナお前、何を言って・・・・・・」
「好き?」
「うん、大好きだよ!」
「よかった。なんか今、一瞬顔色が変わったから」
「お、おう」

な、なんだ、いつもの会話じゃないか、うん。

「私もね、青士のことが好き。だからね、私ね、青士のこと、もっと知りたい」
そう言いながら彼女は、俺のボタン付きパジャマのボタンを外し始めた。
わかんないけど、こんな感じなのか?そうかもしれないけどなんか、こ、これって、普通の恋人の会話だよな・・・・・・

「ねえ、青士、」
「なに?」
「めちゃくちゃにしていい?青士のこと」
こんなセリフ言われて断る男なんていないだろ!!最高!
「うん。」
「ほんとに!?えへへへ、、青士、最高!!」

瞬間!腹部に激痛が走った。

「え、、、!?」
「あははは!!」
何度も何度も、腹部に痛みが走る。ナナは血で染まったナイフを持ちながらめっちゃ笑ってた!彼女はそれを最高に楽しんでいた!
「ちょっと」
「あはは」
ナナは今度は左腕を刺し、太腿をさした。
「うわああああやめてくれ!!!」
「え、めちゃくちゃにしていいって言ったよね?」
ゾゾっと身の毛がよだつ。
ナナの暴走は止まらない!!これはやばい、どうすればいい、前サンタに貰ったテレポートカードがあるじゃないか!スキャナーと!右手を飛ばしたら届きそうだ!よし・・・・・・
「させねえよ!」
ナナは思いっきり俺の右手を刺した。
「いっっっ!!」
「ずっと一緒にいようって言ったじゃん!なんで逃げようとするの!?バカ!!バカ!!」
すごい刺してくる!
左手が・・
やばいめっちゃお腹刺してくる・・・意識が・・・・
「ナナ〜どこいっちゃったのー」
開けっ放しのドアから、
「何してるの!!」

セラが入ってきた!

「サ、セラ!!!こないで!!」
僕は目線を動かしてテレポートカードと読み取り機の位置を伝えた!
「はい、これを使って!」
痛すぎる右手で、テレポートカードを掴んだ!
ナナはもう、手を振りあげている!
「青士はどこにも行かせない!!わあああ」
ナナが心臓に向かってナイフを振り下ろす。
「ほんとはずっと大好きだったんだよ、青士」
俺は急いでカードをかざした。

そこは、駅だった。上を見上げると、星がきれいだ。

電光掲示板を見た。次は23:10の電車か。夜中に来たからテレポートの瞬間をあんまり見られなかったからよかった。

間一髪だった本当に。

家に帰ろう。


「青士!無事だったの!!」
母さんだ!
「シベリアで行方不明だったんじゃないの!?」
「ああ、まあ、自給自足でね!」
「青士・・・おかえり!」
「うん、ただいま、母さん。」

朝起きると、マスメディアが沢山いた。
「母さん、もう警察に報告したの?」
「まあ、被害届出しちゃったからね。」
「そうか。」
「青士」
「なに?母さん。」

「行ってらっしゃい!」

赤色の派手なリュックを背負った制服姿の俺は、靴のかかとを入れた。

「いってきまーす!!」

教室に着くと、久々の顔がたくさん見えた。
「青士!!」
「ねえ、すごいね!シベリアで自給自足だって!?やば!!」
「はーい、座ってー。きょうは青士が帰ってきましたー。」
入ってきたのは、担任ではなく、国語の担当の先生だった。
「今日から冬休み補習始めるからなー。大学進学希望者は必修、頑張って受けろよーさぼんじゃねーぞー」
そうか今冬休みか。十二月二十七から二十九まで補習があるんだわ。さすが自称進学校。だっる。
「まあ、いちばんだるいのは俺だからなーー。じゃあ、古典完璧ロードの四十三ページ、敬語をやるぞー」
みんながだっさいなまえの参考書を取り出す。俺忘れたわ。
「ねえ、俺忘れたから、見してください!」
「あ、いいよー!」
隣の人に見せてもらった。

学校帰りは星が綺麗。家の最寄りの駅に着いた。

「ねえ」

一瞬、背筋が凍った。
恐る恐る、後ろを振り向いた。

ナナが、立っていた。

「久しぶり!青士!」
「・・・・・・ナナ!おお!え、なんで・・・・・・」
「すぐに理由を聞くんだね。もうちょっと久しぶりにあった感動の共有をすると思ったのに」
「いや、そんなつもりではないのでした。」
「まあいいや。あのね、なんでかよくわからないんだけど、サンタがきて、地球に行けって、ソリでここまで連れてきてくれたの」
「そうなんだ!」
「もう、私、青士のことめちゃくちゃになんかしない。だから、ごめんね、あの時は。私、青士と一緒にいたい」
「・・・・・・怖いけど・・・・・・」
 いっか。
 大好きだし。
「うん」