雪崩れていく夜をどうにかやり過ごしているのは、あたしだけじゃない。その事実があたしを救うわけじゃないけれど、それでも少し軽くなるものもある。
 軽くしたり紛らわせたり、そうしているうちにいつかは手放せるだろうか。
「やろっか、ドミノ」
 力なく言うと、飛田林くんはうなずいた。
「オレンジジュース飲む?」
 飛田林くんはまた頷いた。
「お腹減ったんだけど、ピザ頼んでいいかな。チーズたっぷりの、ぎとぎとこってりしたやつ食べたい」
 クーポン持ってる、と飛田林くんはポケットからスマホを取りだした。そしてなぜか急に、ぶはっ! と大きく噴き出した。
「え、どしたの?」
「だめだ。このTシャツ、やっぱうける。あと、ドミノ世界記録は499万個らしいから」
 飛田林くんはひーひー笑った。まっしろだった大きな塊は、大きな笑い袋になった。
 感情、じゅうぶん顔に出てないか? それともそれだけあたしの絵心がやばいのか?
 疑問に思うところはあるものの、あたしも負けじと笑って
「それじゃあ今夜は朝まで寝かせないから。覚悟しろよ」
 と男前にかました。






 ――了――