「昨日はごめんね。カルサリキャンニトする! ってあたしがガンガン脱ぎだして困ったでしょ」

 ふたりで廊下のドミノを拾い集めながら、あたしは謝った。飛田林くんはすっかり笑いの引いた冷ややかな顔で

「うん。あれは困った。そもそもパンツ一丁っていうのは多分男性の場合のことで、ただしくは下着姿で(、、、、)、みたいだけどね」

「そうなの? 言ってよ!」

「言ったけど聞かなかったんだよ」

 あ、ごめんごめん。あたしは情けなく謝りながら、改めて今朝のことを思い起こす。

「今朝、ごめんね。妹にまで同じこと言われたら、そりゃ腹も立つよね」

「べつに……。こっちこそうちの兄がひどいことしてるし」

「じゃあ、おあいこかな」

 あたしは笑いながら、手のひらのドミノに視線を落とした。

 飛田林くんのお兄さん――バイト先の先輩は、あたしが好きだと言った日から、きれいさっぱり音信不通になった。

 毎日連絡とって、何度もデートして。自分を丸ごと愛されていると感じるようなセックスだってした。

 それなのに先輩は、好きだと言ったら表情を失くして、あたし達つき合ってるんだよね? と訊いたら「連絡するから、またね」と返した。

 連絡なんてなかった。「また」なんて一生こなかった。