「でもなんであたしがあの人と夜な夜なドミノするの? しかもおそろしいくらい大量にあったんだよ?」

「よっぽど暇だったんじゃない? それかあの人の性癖」

「性癖、ドミノ。あだ名、トントン」

「妙なキャラだな。あ、すみませーん。オーダーお願いします」

 セリちゃんが店員に注文するあいだ、あたしは改めてドミノらしき物体を眺めた。性癖ドミノ、あだ名トントン。彼はいったい
何者だろう。つぶやかれたカルサリも、なんのことだかわからないままだ。

「セリちゃん今日はよく食べるね」

「奈央のおごりだし食べておこうと思って」

「え、おごり?」

「そうそう、私の通ってた高校の近くにあったファミレス、こないだ閉店したらしいんだよね」

 セリちゃんはあたしのツッコミをさらっとスルーした。

「友達とよく行ってたから、ちょっとさみしいな。奈央、あそこでバイトしてたよね。高二の夏くらいに」

「あー……。うん、そうだね」

 あたしがへらっと笑うと、セリちゃんはにやにや含み笑いを浮かべた。

「あのときさ、奈央の面倒よく見てくれる先輩がいて、バイト終わりに送ってくれたとか、デート行ったとか言ってたよね」

「そうだっけ」

 あたしは笑顔のまますっとぼける。