ドキドキしながらその日の仕事が終わり、倉田課長と会社を出た。連れて来られた場所はバッティングセンター。
飲みにでも連れて来てくれるのかと思っていたから、意外だった。
「落ち込んだ時は体を動かした方がスッキリするぞ」
そう言って倉田課長は私をバッターボックスに立たせ、初めてだという私にバッドの握り方から打ち方まで教えてくれた。
手取り足取りと教えてくれる課長との距離がいつも以上に近くてドキドキする。私がときめいている事を全く気づいていない課長が何だか憎らしくなった。課長が私を異性として見ていない事がわかる。九歳も年下で、課長より20㎝近く背の低い私は子どものように思われているのかもしれない。
「麻生、球をしっかり見ろ。ほら、来るぞ」
球が怖いという私のために倉田課長は後ろから私を抱きしめるような恰好で一緒にバッドを持っている。あきらめなきゃいけないと思っているのにこの仕打ちは酷い。ますます、倉田課長を好きになる。
「ほら、麻生、来るぞ」
ピッチングマシンから白い球が飛んでくるが、それ所じゃない。
背中に倉田課長の体温を感じて、落ち着かない。近いから倉田課長の匂いもするし、息遣いも感じる。好きな人の気配に必要以上に動揺する。
倉田課長との距離に戸惑っていると、握っていたバッドが勝手に動く。倉田課長がバッドを振ったんだ。
カキーンと金属音が響き、白い球が夜空に吸い込まれるように飛んで行く。
「どうだ。気持ちいいだろう」
すぐ耳元で倉田課長の弾んだ声がした。
「は、はい」
好きな気持ちを隠すので必死で、全くバッティングを楽しむ余裕はない。
「麻生、お前は魅力的な女性だよ。失恋した相手が悔しがる程幸せになってやれ」
次の球が飛んで来たとき、後ろからした声に胸がギュッと収縮した。
課長にそんなことを言われるとは夢にも思わなかった。
期待してはいけないと思うのに、期待してしまう。もしかして、倉田課長は私のことを部下以上に思ってくれているの?
飲みにでも連れて来てくれるのかと思っていたから、意外だった。
「落ち込んだ時は体を動かした方がスッキリするぞ」
そう言って倉田課長は私をバッターボックスに立たせ、初めてだという私にバッドの握り方から打ち方まで教えてくれた。
手取り足取りと教えてくれる課長との距離がいつも以上に近くてドキドキする。私がときめいている事を全く気づいていない課長が何だか憎らしくなった。課長が私を異性として見ていない事がわかる。九歳も年下で、課長より20㎝近く背の低い私は子どものように思われているのかもしれない。
「麻生、球をしっかり見ろ。ほら、来るぞ」
球が怖いという私のために倉田課長は後ろから私を抱きしめるような恰好で一緒にバッドを持っている。あきらめなきゃいけないと思っているのにこの仕打ちは酷い。ますます、倉田課長を好きになる。
「ほら、麻生、来るぞ」
ピッチングマシンから白い球が飛んでくるが、それ所じゃない。
背中に倉田課長の体温を感じて、落ち着かない。近いから倉田課長の匂いもするし、息遣いも感じる。好きな人の気配に必要以上に動揺する。
倉田課長との距離に戸惑っていると、握っていたバッドが勝手に動く。倉田課長がバッドを振ったんだ。
カキーンと金属音が響き、白い球が夜空に吸い込まれるように飛んで行く。
「どうだ。気持ちいいだろう」
すぐ耳元で倉田課長の弾んだ声がした。
「は、はい」
好きな気持ちを隠すので必死で、全くバッティングを楽しむ余裕はない。
「麻生、お前は魅力的な女性だよ。失恋した相手が悔しがる程幸せになってやれ」
次の球が飛んで来たとき、後ろからした声に胸がギュッと収縮した。
課長にそんなことを言われるとは夢にも思わなかった。
期待してはいけないと思うのに、期待してしまう。もしかして、倉田課長は私のことを部下以上に思ってくれているの?