アツキくんと別れてから、これまでしなかったような小さなミスがぽろぽろ起きる。被害が私の爪先程度ならいいけれど、もしも人にまで被害を与えてしまったら洒落にならない。早く、ペースを取り戻そう。私は重いため息を吐き出し、店を出た。
梅雨入り前の湿った香りが鼻を突き、眉が寄る。空では星が所在なく瞬き、路上ではキャッチの男たちがギラギラと目を見開いて女の子に声をかけている。廃棄ガスとネオンにまみれたこの街は見事にぐちゃぐちゃで、自分という存在が不確かになる。
「由比さんっ!」
突然の大声に、肩がびくりと上がった。訝しみながら振り返ると、またしても獅子央さんがいた。走ってきたのか、息が上がっている。
「どうしたんですか? 私、なにか仕事やり残してました?」
「違います。駅まで送りに来たんす」
「駅って……。すぐそこですけど」
五分もかからない、目と鼻の先。人通りは昼間よりも多く、送る必要なんてまったくない。
「こんな時間に女の人が一人で歩くのは危ないっすから」
「大丈夫ですよ。歩いてる人もいっぱいいますし」
「それに俺もちょうど駅に行くところなんで」
「あー……。じゃあ、いっしょに行きましょうか」
梅雨入り前の湿った香りが鼻を突き、眉が寄る。空では星が所在なく瞬き、路上ではキャッチの男たちがギラギラと目を見開いて女の子に声をかけている。廃棄ガスとネオンにまみれたこの街は見事にぐちゃぐちゃで、自分という存在が不確かになる。
「由比さんっ!」
突然の大声に、肩がびくりと上がった。訝しみながら振り返ると、またしても獅子央さんがいた。走ってきたのか、息が上がっている。
「どうしたんですか? 私、なにか仕事やり残してました?」
「違います。駅まで送りに来たんす」
「駅って……。すぐそこですけど」
五分もかからない、目と鼻の先。人通りは昼間よりも多く、送る必要なんてまったくない。
「こんな時間に女の人が一人で歩くのは危ないっすから」
「大丈夫ですよ。歩いてる人もいっぱいいますし」
「それに俺もちょうど駅に行くところなんで」
「あー……。じゃあ、いっしょに行きましょうか」