そう言って苦笑する顔は目尻や目頭に程よくくしゃっと皺が寄って、「モテる奴」だった。私は首を横に振って弁解する。

「そういう意味じゃないですよ。獅子央さんの彼女ならアクティブ系っていうか、いっしょにジムでも行くようなタイプを想像するっていうだけで」

「うわ、すごい偏見すね!」

 獅子央さんは楽しそうに笑って八重歯をのぞかせた。ばつの悪い私はお冷のはいったグラスに口をつける。

「でも、そっか、アクティブ系か。そういうこと、ぜんぜんしなかったなあ……」

 そう言って頬杖をつき、窓の外を眺める獅子央さんの目は、まるで宇宙のそのまた先を見つめるように遠かった。

 もしかして、これは――。

 私は勝手に仲間意識を抱いたけれど、なにも言えなかった。下手になにか口にして、傷を抉るような真似はしたくなかった。そんなことをするよりは、沈黙が続く方がずっといい。

「お待たせいたしました」

 沈みだした空気をそっと切り開くように、スコーンとミルクティーはほわりと湯気を立ててやってきた。獅子央さんの目は光を取り戻し、テーブルの上は途端に華やいだ。