☕️
出会ってから一つの季節を過ぎたころ、初めて彼女に誘われた。
都内の公園で行われている季節限定のビールフェス。
本格的な夏が全身の水分をあっという間に奪っていく。
半袖一枚でも汗をかくレベルの暑さ。
リボンスカーフでポニーテールにし、カジュアルワンピースを着てきた彼女はこの暑さでも煌々と輝き、横に並ぶと細く艶やかな白い肌が際立つ。
公園内にあるフェスの特設場に向かう途中、噴水の周りでは小さな子供たちが水着を着た元気に遊んでいる。
その姿を見ていると子供の話になった。
「ばり可愛いね」
「紫苑ちゃん子供できたらめっちゃ甘やかしそう」
「息子ならそうしちゃうかも」
息子だけなの?
「慶永くんは厳しいお父さんになりそうやね」
「俺は甘々パパになると思うよ」
「そうなん?」
「たぶんね」
子供の話をしていると家族になった姿を想像してしまった。
まだ付き合ってもいないし、付き合えるかもわからないから変に考えるのはやめようと思ったが、そう思えば思うほどそれを拒むように脳が彼女との姿を映し出す。
「慶永くんのお父さんはどんな人なん?」
その質問に戸惑った。
俺の家庭事情を知っているのは一部の人だけ。
話すと重い空気になるし、ヘタに同情されるのは複雑な気持ちになる。
彼女には話してもいいかと思ったがいまはやめた。
「……今度話すよ」
「うん、わかった」
再び噴水を見ると、きゃっきゃ言いながら水鉄砲を撃ち合ったり小さなビーチボールを投げて遊んでいる。
1人の子供が投げたビーチボールが大きく逸れ、そのボールをジャンピングキャッチした男の子がいた。
「いまの見た?」
思わず大きな声が出た。
「うん、見た。すごいジャンプやったね」
彼女も大きな目を見開きながら一緒に驚いていた。
「あの子は将来優秀なワイドレシーバーになるよ」
「わ、わいど?」
この人は一体何を言っているの?という顔をされたが無理もなかった。
ワイドレシーバーとは、アメフトのポジションの一つでオフェンス時にボールを持ち、走りながら点を取る人のこと。
「どうせならタッチダウンまでしてくれたらベストだったんだけどな」
タッチダウンとは簡単に言うとゴールのことで、ラグビーのトライに近い。
もちろんアメフトを知らない彼女はポカンとしている。
「慶永くんってたまに意味不明なこと言いよるよね」
「ありがとう」
「いや、全然褒めてないんやけど」
「俺も一緒に遊んで来ようかな」
「たぶん怖くてみんな逃げ出すよ」
「今日は子供たちが寄ってくる薬塗ってきたから大丈夫」
「何その恐ろしい薬。違う薬もらってきた方が良いけん病院行く?」
そんな中身のない会話がとても楽しかった。
特設会場には世界中のビールが売られている。
お酒好きにはたまらない場所だろう。
それなのに俺はコーヒーを、彼女はアイスを頼んだ。
ビールが飲みたいというよりも彼女から誘われたことがシンプルに嬉しかった。
だから場所はどこでも良かった。
ベンチに座って乾杯した後、彼女がバッグから何かを取り出した。
「これ」
この前貸していたカネサズラのハンカチを渡される。
「この前はありがとう」
「いえいえ、お客様。また必要になったらお貸ししますので」
「そうさせていただきます」
「よろしければこちらのサブスクリプションプランというものがありまして、月々100円でご契約できますがいかがでしょうか?」
「まぁ、ずいぶんとお安いですね」
「神法様にはいつもお世話になっておりますので」
「検討させていただきます」
フフフと笑い合いながら軽口を言う。
出会ったころと比べたら心の壁がなくなってきた気がする。
正直ここまでノリが良い人だとは思わなかった。
最初はモデルや芸能人のようなすごく綺麗な子という外見での印象が強かったが、彼女を知っていくうちにお茶目な一面や律儀な一面を知ることができて、より魅力が増していった。
何気ない会話で盛り上がっていると、雲行きが怪しくなってきた。
今日は雨の予報などなかったはずだが。
青かった空がどんよりとしてきて少しずつ黄色く染まっていく。
まさか、
「紫苑ちゃん、行くよ」
「えっ?どこに?」
「黄砂がくる」
「黄砂!?」
黄砂は夏が最も少ないはずなのだがタイミングが悪かった。
ゲリラ豪雨ならぬゲリラ黄砂だ。
こんなものまともに受け続けたら敏感肌の俺はすぐに肌荒れしてしまう。
吹きつける砂塵に前を向くこともままならない状態で小走りで近くにあったビルに逃げ込む。
判断が早かったおかげでそこまでダメージは大きくなかった。
返してもらったばかりのサネカズラのハンカチを彼女に渡そうとしたが、ミニタオルを持参していたらしくお互いトイレに行って身体に付着した黄砂を拭いた。
外はまだ黄砂が吹き荒れているのでビル内で時間を潰すことにした。
すると、すごく怪しい店を見つけた。
『占い館 Carpe Diem』
占いでこの名前怪しすぎでしょ。
「ねぇ、占ってもらわん?」
こっちを見つめる彼女の目はキラキラと輝いていた。
そんな真っ直ぐな目をされたら断れるわけがない。
黄砂が収まるまでの間、占いを受けることにした。
中にいた占い師はその辺のおばちゃんって感じだが、どこか不思議なオーラを感じた。
「あら、あなた。すごい力を持ってるわね」
入るや否や水晶を見たままそう言う占い師。
「えっと、私?」
人差し指を自分に向けて確認する彼女に対し、今度は目を合わせて
「えぇ、あなたはオーラを感じるわ」
本当だろうか?なんだか胡散臭い。
「あなたたちの名前と生年月日を教えてちょうだい」
俺はあまり乗り気ではなかったが、彼女はワクワクしながら椅子に座った。
「ーなるほどね。まず雪落 慶永さん。あなたは気分屋で頑固。周りに左右されない強い意志の持ち主ね。好きになったらとことん追求するけど、興味のないものには全く興味を示さない。寂しがり屋なのに甘え下手。もともとお腹周りが弱いから急激な気温の変化には気をつけて。カフェインの摂取はほどほどにね。それと、あまり他人のことに首を突っ込まないほうが良いわよ」
最後の言葉、どういう意味だ?
なぜか強く印象に残った。
「どう?当たっとる?」
「めっちゃ当たってる。とくに興味ないものには全くってとこ」
「それってどうなん?」
自分でもわかっていた。
これはメリットでもありデメリットでもある。
きっと興味のないものに目を向けていたらもっと視野が広がっていたのかもしれない。
でも何度か試してみたが仕事を除いては無理だった。
「次に神法 紫苑さん。あなたはとにかくピュアで明るい人。嘘や曖昧なことが嫌い。冷たくて甘いものは好きだけど辛いものはあまり得意じゃないわね。幼いころ愛犬と遊んでいたときに左の内腿を怪我したことがあったでしょう?そこは適度に解してあげるようにしないとまた大きな怪我するわよ。恋愛に対してはちょっと奥手なところがあるけど、その素直な気持ちを忘れなければあなたの魅力は十分すぎるくらいに伝わるわ」
占いを聞き終えた彼女は驚きと感動の感情が入り混じったような表情に見えた。
「当たりすぎとって怖いんやけど」
「内腿の怪我も?」
「うん、昔愛犬と遊んでて怪我したことあった」
占いというものはどうも胡散臭い。
出会って間もない見ず知らずの人に心の中を土足のまま覗かれた感覚になる。
他人事だからなのか、テレビを観ていても信じられなかった。
しかし、実際占ってもらうとどこか信じてしまう不思議な力がある。
「それと」
占い師が低い声で発する。
「それと?」
「あなた」
瞳だけを動かして瞬きを1回した。
「え?私?」
人差し指で自分のことを差す彼女。
小さく頷く占い師。
「そう。あなた、来年の運勢があまり良くないから気をつけなさい。とくに夏は多くの災難が訪れるわよ」
そんなことを言われても何をどう気をつければ良いの?という顔をしている彼女。
「あなたたち2人の相性も見させてもらったけど、非常に良いわね。好きなものや感性がまるで違ったりするからこそ一緒にいると刺激的で痛みを分かち合い、補い合える関係だわ」
それはどっちの意味だろうか?
友達としてなのか、それとも恋人としてなのか。
それ以上知るのが怖かったので聞くのをやめた。
「他に占って欲しいことはあるかい?」
「ーあの、占ってほしいことが……」
そう言った彼女が俺の肩を控えめにトントンと叩いて、
「ごめん、ちょっとだけ席外してもらえたりせん?」
俺には知られたくない内容なのだろう。
理由を聞くのは野暮な気がしたので外で待つことにした。
数分後、彼女が出てきた。
「お待たせ」
ビルの外を出ると黄砂は去り、澄んだ青い空に戻っていた。
彼女を待っている間スマホで天気予報をチェックしていたら、この後また黄砂がくるおそれがあるらしい。
「あの占い師、めちゃくちゃ怪しかったな」
「やけん、当たりまくっとってドキドキした」
「名前と生年月日言っただけなのに色々と見透かされた感じがしたよ」
黄砂を落としきれていないのが気持ち悪く、家に帰ってシャワーを浴びたい気分だった。
この後再来予定の黄砂の懸念もあり、今日は早めに切り上げて帰ることにした。
「紫苑ちゃん、今日は誘ってくれてありがとう。すごく楽しかった」
最寄り駅まで送って別れたが、彼女はどこか寂しげな顔をしているように見えた。
そういえばあのとき何を占ってもらったんだろう?
出会ってから一つの季節を過ぎたころ、初めて彼女に誘われた。
都内の公園で行われている季節限定のビールフェス。
本格的な夏が全身の水分をあっという間に奪っていく。
半袖一枚でも汗をかくレベルの暑さ。
リボンスカーフでポニーテールにし、カジュアルワンピースを着てきた彼女はこの暑さでも煌々と輝き、横に並ぶと細く艶やかな白い肌が際立つ。
公園内にあるフェスの特設場に向かう途中、噴水の周りでは小さな子供たちが水着を着た元気に遊んでいる。
その姿を見ていると子供の話になった。
「ばり可愛いね」
「紫苑ちゃん子供できたらめっちゃ甘やかしそう」
「息子ならそうしちゃうかも」
息子だけなの?
「慶永くんは厳しいお父さんになりそうやね」
「俺は甘々パパになると思うよ」
「そうなん?」
「たぶんね」
子供の話をしていると家族になった姿を想像してしまった。
まだ付き合ってもいないし、付き合えるかもわからないから変に考えるのはやめようと思ったが、そう思えば思うほどそれを拒むように脳が彼女との姿を映し出す。
「慶永くんのお父さんはどんな人なん?」
その質問に戸惑った。
俺の家庭事情を知っているのは一部の人だけ。
話すと重い空気になるし、ヘタに同情されるのは複雑な気持ちになる。
彼女には話してもいいかと思ったがいまはやめた。
「……今度話すよ」
「うん、わかった」
再び噴水を見ると、きゃっきゃ言いながら水鉄砲を撃ち合ったり小さなビーチボールを投げて遊んでいる。
1人の子供が投げたビーチボールが大きく逸れ、そのボールをジャンピングキャッチした男の子がいた。
「いまの見た?」
思わず大きな声が出た。
「うん、見た。すごいジャンプやったね」
彼女も大きな目を見開きながら一緒に驚いていた。
「あの子は将来優秀なワイドレシーバーになるよ」
「わ、わいど?」
この人は一体何を言っているの?という顔をされたが無理もなかった。
ワイドレシーバーとは、アメフトのポジションの一つでオフェンス時にボールを持ち、走りながら点を取る人のこと。
「どうせならタッチダウンまでしてくれたらベストだったんだけどな」
タッチダウンとは簡単に言うとゴールのことで、ラグビーのトライに近い。
もちろんアメフトを知らない彼女はポカンとしている。
「慶永くんってたまに意味不明なこと言いよるよね」
「ありがとう」
「いや、全然褒めてないんやけど」
「俺も一緒に遊んで来ようかな」
「たぶん怖くてみんな逃げ出すよ」
「今日は子供たちが寄ってくる薬塗ってきたから大丈夫」
「何その恐ろしい薬。違う薬もらってきた方が良いけん病院行く?」
そんな中身のない会話がとても楽しかった。
特設会場には世界中のビールが売られている。
お酒好きにはたまらない場所だろう。
それなのに俺はコーヒーを、彼女はアイスを頼んだ。
ビールが飲みたいというよりも彼女から誘われたことがシンプルに嬉しかった。
だから場所はどこでも良かった。
ベンチに座って乾杯した後、彼女がバッグから何かを取り出した。
「これ」
この前貸していたカネサズラのハンカチを渡される。
「この前はありがとう」
「いえいえ、お客様。また必要になったらお貸ししますので」
「そうさせていただきます」
「よろしければこちらのサブスクリプションプランというものがありまして、月々100円でご契約できますがいかがでしょうか?」
「まぁ、ずいぶんとお安いですね」
「神法様にはいつもお世話になっておりますので」
「検討させていただきます」
フフフと笑い合いながら軽口を言う。
出会ったころと比べたら心の壁がなくなってきた気がする。
正直ここまでノリが良い人だとは思わなかった。
最初はモデルや芸能人のようなすごく綺麗な子という外見での印象が強かったが、彼女を知っていくうちにお茶目な一面や律儀な一面を知ることができて、より魅力が増していった。
何気ない会話で盛り上がっていると、雲行きが怪しくなってきた。
今日は雨の予報などなかったはずだが。
青かった空がどんよりとしてきて少しずつ黄色く染まっていく。
まさか、
「紫苑ちゃん、行くよ」
「えっ?どこに?」
「黄砂がくる」
「黄砂!?」
黄砂は夏が最も少ないはずなのだがタイミングが悪かった。
ゲリラ豪雨ならぬゲリラ黄砂だ。
こんなものまともに受け続けたら敏感肌の俺はすぐに肌荒れしてしまう。
吹きつける砂塵に前を向くこともままならない状態で小走りで近くにあったビルに逃げ込む。
判断が早かったおかげでそこまでダメージは大きくなかった。
返してもらったばかりのサネカズラのハンカチを彼女に渡そうとしたが、ミニタオルを持参していたらしくお互いトイレに行って身体に付着した黄砂を拭いた。
外はまだ黄砂が吹き荒れているのでビル内で時間を潰すことにした。
すると、すごく怪しい店を見つけた。
『占い館 Carpe Diem』
占いでこの名前怪しすぎでしょ。
「ねぇ、占ってもらわん?」
こっちを見つめる彼女の目はキラキラと輝いていた。
そんな真っ直ぐな目をされたら断れるわけがない。
黄砂が収まるまでの間、占いを受けることにした。
中にいた占い師はその辺のおばちゃんって感じだが、どこか不思議なオーラを感じた。
「あら、あなた。すごい力を持ってるわね」
入るや否や水晶を見たままそう言う占い師。
「えっと、私?」
人差し指を自分に向けて確認する彼女に対し、今度は目を合わせて
「えぇ、あなたはオーラを感じるわ」
本当だろうか?なんだか胡散臭い。
「あなたたちの名前と生年月日を教えてちょうだい」
俺はあまり乗り気ではなかったが、彼女はワクワクしながら椅子に座った。
「ーなるほどね。まず雪落 慶永さん。あなたは気分屋で頑固。周りに左右されない強い意志の持ち主ね。好きになったらとことん追求するけど、興味のないものには全く興味を示さない。寂しがり屋なのに甘え下手。もともとお腹周りが弱いから急激な気温の変化には気をつけて。カフェインの摂取はほどほどにね。それと、あまり他人のことに首を突っ込まないほうが良いわよ」
最後の言葉、どういう意味だ?
なぜか強く印象に残った。
「どう?当たっとる?」
「めっちゃ当たってる。とくに興味ないものには全くってとこ」
「それってどうなん?」
自分でもわかっていた。
これはメリットでもありデメリットでもある。
きっと興味のないものに目を向けていたらもっと視野が広がっていたのかもしれない。
でも何度か試してみたが仕事を除いては無理だった。
「次に神法 紫苑さん。あなたはとにかくピュアで明るい人。嘘や曖昧なことが嫌い。冷たくて甘いものは好きだけど辛いものはあまり得意じゃないわね。幼いころ愛犬と遊んでいたときに左の内腿を怪我したことがあったでしょう?そこは適度に解してあげるようにしないとまた大きな怪我するわよ。恋愛に対してはちょっと奥手なところがあるけど、その素直な気持ちを忘れなければあなたの魅力は十分すぎるくらいに伝わるわ」
占いを聞き終えた彼女は驚きと感動の感情が入り混じったような表情に見えた。
「当たりすぎとって怖いんやけど」
「内腿の怪我も?」
「うん、昔愛犬と遊んでて怪我したことあった」
占いというものはどうも胡散臭い。
出会って間もない見ず知らずの人に心の中を土足のまま覗かれた感覚になる。
他人事だからなのか、テレビを観ていても信じられなかった。
しかし、実際占ってもらうとどこか信じてしまう不思議な力がある。
「それと」
占い師が低い声で発する。
「それと?」
「あなた」
瞳だけを動かして瞬きを1回した。
「え?私?」
人差し指で自分のことを差す彼女。
小さく頷く占い師。
「そう。あなた、来年の運勢があまり良くないから気をつけなさい。とくに夏は多くの災難が訪れるわよ」
そんなことを言われても何をどう気をつければ良いの?という顔をしている彼女。
「あなたたち2人の相性も見させてもらったけど、非常に良いわね。好きなものや感性がまるで違ったりするからこそ一緒にいると刺激的で痛みを分かち合い、補い合える関係だわ」
それはどっちの意味だろうか?
友達としてなのか、それとも恋人としてなのか。
それ以上知るのが怖かったので聞くのをやめた。
「他に占って欲しいことはあるかい?」
「ーあの、占ってほしいことが……」
そう言った彼女が俺の肩を控えめにトントンと叩いて、
「ごめん、ちょっとだけ席外してもらえたりせん?」
俺には知られたくない内容なのだろう。
理由を聞くのは野暮な気がしたので外で待つことにした。
数分後、彼女が出てきた。
「お待たせ」
ビルの外を出ると黄砂は去り、澄んだ青い空に戻っていた。
彼女を待っている間スマホで天気予報をチェックしていたら、この後また黄砂がくるおそれがあるらしい。
「あの占い師、めちゃくちゃ怪しかったな」
「やけん、当たりまくっとってドキドキした」
「名前と生年月日言っただけなのに色々と見透かされた感じがしたよ」
黄砂を落としきれていないのが気持ち悪く、家に帰ってシャワーを浴びたい気分だった。
この後再来予定の黄砂の懸念もあり、今日は早めに切り上げて帰ることにした。
「紫苑ちゃん、今日は誘ってくれてありがとう。すごく楽しかった」
最寄り駅まで送って別れたが、彼女はどこか寂しげな顔をしているように見えた。
そういえばあのとき何を占ってもらったんだろう?