「秘密だよ」
そう言っていたのは、あたしが誰よりも大好きなお兄ちゃんだったよね。
小さな窓がついている屋根裏部屋で、あたしはお兄ちゃんと手を重ねた。
あたしが知っているお兄ちゃんの手は大きくて、あたしは小さい。
それだけなのになぜか緊張して汗ばんだ。
照れくさくて笑ったけど、お兄ちゃんは優しくあたしを見てるだけ。
「秘密って‥‥ここの屋根裏部屋のこと?」
「そうだね」
「わかった!」
「それとね、姫」
「ん?」
あたしは名前を呼ばれて窓の景色からお兄ちゃんの方を向いた。
するとお兄ちゃんの顔がすぐそばに来て、少しだけ空いた口にキスをしてくれた。
「これも‥‥‥秘密だよ」
「!!!」
大好きなお兄ちゃんにキスをされてあたしは舞い上がった。
だっていつも自分の自慢のお兄ちゃんがキスをしてくれたから。
少しだけ、特別感が出て嬉しい。
「秘密?」
「うん。今度出逢った時に忘れてたら、思い出させて?」
「うん!」
12歳という純粋な年齢なあたしに、疑問という文字はなかった。
ただ。
お兄ちゃんが就職で離れてしまうことは聴いていたから、
次に、
その次に逢える日がやってくるんだと嬉しくなった。