【 7日 17時20分 暁第一病院 】
病院に着いた後、お兄ちゃんがいる病室へと緊急オペを行った神代の名札を首から下げた執刀医の方に案内された。病室に入る前に執刀医に、覚悟はしておいた方が良いかもしれませんと告げられた。……死なないでよね、お兄ちゃん。
入ってすぐ目にしたのは、ベッドの上で眠っているかのように動かない兄の姿だった。心電図の規則正しい機械音が、まだ息があることを示している。
「私達はできる限りのことを尽くしました。あとは、御本人の気力次第です」
「ありがとうございます」
主治医と看護婦が出ていき、必然的に兄弟二人が残される。すっかり泣き疲れた私は強烈な睡魔に襲われ眠ってしまった。どれくらい時間が経ったのだろうか。
「起きろー、美香。お前が寝てどーすんだよ?」
普段と何も変わらないような無愛想な声の主に少し乱暴に体を揺すぶられ目が覚めた。眼の前の光景に一瞬思考が止まった。私はまだ寝ていて大好きなお兄ちゃんが復活したそんな夢を見ているのかな?それとも現実なの?
「お兄ちゃん……」
「どうした?美香、そんなに俺の体を触って?」
「……あったかい、生きてる。お兄ちゃんが、生きてる……」
これは夢なんかじゃない。れっきとした現実だ。ボロボロと涙がこぼれる。子どものように泣きじゃくる私の頭をお兄ちゃんはただ優しくポンポンと撫でていた。
「なぁ、美香俺のカバンとか持ってたりするか?」
お兄ちゃんはなにか思い出したのか唐突にそう言った。
「ん、持ってきてるよ」
「そうか、なら良かった。ちょっと待っててくれ」
お兄ちゃんはカバンをガサゴソと探り始めた。会う前に主治医の先生に言われた。怪我の後遺障害で足に麻痺が残っている為兄はもう刑事として働けないと。多分お兄ちゃんもそれは心のどこかで分かっているんだろう。
「大丈夫。私がお兄ちゃんの分の分も頑張るから」
「……なら、一つ渡しておくものがあるか」
探しものを見つけたお兄ちゃんは私に1つのものを手渡した。それは表紙がすっかりボロボロになった手帳だった。
「これは?」
「俺が今までやってきたことや『月曜日の殺人鬼』事件の憶測だとか、あと美香に伝えたいこととか全部書いてある」
そっか、お兄ちゃんが帰ってからずっと部屋に籠っていたのはこういうことだったんだね。
「お兄ちゃんは……これからどうするの?」
「ん?これからか……。考えてなかったなぁ、リハビリして歩けるようになるが今のところの第一目標かな」
お兄ちゃんはいつも気持ちの切り替えが上手い。私だったらしばらく引きずりそうなのに。
「そうなんだね、私に出来ることがあったらなんでも言ってね。お兄ちゃんが好き、だから」
「それはlikeの方でいいのかい?」
「うん、Loveの方じゃないから。安心してね、お兄ちゃん」
「勿論さ」
意識を取り戻してから数日が経ったのち、お兄ちゃんはようやく家に帰ってきた。ただ、刑事として働くことができなくなってしまったお兄ちゃんは泣く泣く退職届を出すことになった。
病院に着いた後、お兄ちゃんがいる病室へと緊急オペを行った神代の名札を首から下げた執刀医の方に案内された。病室に入る前に執刀医に、覚悟はしておいた方が良いかもしれませんと告げられた。……死なないでよね、お兄ちゃん。
入ってすぐ目にしたのは、ベッドの上で眠っているかのように動かない兄の姿だった。心電図の規則正しい機械音が、まだ息があることを示している。
「私達はできる限りのことを尽くしました。あとは、御本人の気力次第です」
「ありがとうございます」
主治医と看護婦が出ていき、必然的に兄弟二人が残される。すっかり泣き疲れた私は強烈な睡魔に襲われ眠ってしまった。どれくらい時間が経ったのだろうか。
「起きろー、美香。お前が寝てどーすんだよ?」
普段と何も変わらないような無愛想な声の主に少し乱暴に体を揺すぶられ目が覚めた。眼の前の光景に一瞬思考が止まった。私はまだ寝ていて大好きなお兄ちゃんが復活したそんな夢を見ているのかな?それとも現実なの?
「お兄ちゃん……」
「どうした?美香、そんなに俺の体を触って?」
「……あったかい、生きてる。お兄ちゃんが、生きてる……」
これは夢なんかじゃない。れっきとした現実だ。ボロボロと涙がこぼれる。子どものように泣きじゃくる私の頭をお兄ちゃんはただ優しくポンポンと撫でていた。
「なぁ、美香俺のカバンとか持ってたりするか?」
お兄ちゃんはなにか思い出したのか唐突にそう言った。
「ん、持ってきてるよ」
「そうか、なら良かった。ちょっと待っててくれ」
お兄ちゃんはカバンをガサゴソと探り始めた。会う前に主治医の先生に言われた。怪我の後遺障害で足に麻痺が残っている為兄はもう刑事として働けないと。多分お兄ちゃんもそれは心のどこかで分かっているんだろう。
「大丈夫。私がお兄ちゃんの分の分も頑張るから」
「……なら、一つ渡しておくものがあるか」
探しものを見つけたお兄ちゃんは私に1つのものを手渡した。それは表紙がすっかりボロボロになった手帳だった。
「これは?」
「俺が今までやってきたことや『月曜日の殺人鬼』事件の憶測だとか、あと美香に伝えたいこととか全部書いてある」
そっか、お兄ちゃんが帰ってからずっと部屋に籠っていたのはこういうことだったんだね。
「お兄ちゃんは……これからどうするの?」
「ん?これからか……。考えてなかったなぁ、リハビリして歩けるようになるが今のところの第一目標かな」
お兄ちゃんはいつも気持ちの切り替えが上手い。私だったらしばらく引きずりそうなのに。
「そうなんだね、私に出来ることがあったらなんでも言ってね。お兄ちゃんが好き、だから」
「それはlikeの方でいいのかい?」
「うん、Loveの方じゃないから。安心してね、お兄ちゃん」
「勿論さ」
意識を取り戻してから数日が経ったのち、お兄ちゃんはようやく家に帰ってきた。ただ、刑事として働くことができなくなってしまったお兄ちゃんは泣く泣く退職届を出すことになった。