【 3月18日 12時 昼仲宅 】
娘が仕事先で行方不明になってからもう一ヶ月が経った。チャイムが鳴った。玄関に出ると宅配便の人が大きなダンボールを抱えて待っていた。……うちの人、大きなぬいぐるみでも買ったのかしら?
「昼仲様ですね?お届けものです」
「ありがとうねぇ」
宅配便の人は容姿の割には真っ白な髪をしていた。帰り際にニヤリと不敵な笑みを浮かべたような気がしたのはきっと気の所為なんだろう。それにしてもこのダンボール重いわね、底も少し濡れてるし……。一体何が入っているの?
それを開けるべきではなかったと今でも私は後悔している。まさかあんな形で娘と対面することになるなんてその時は思いもしなかった。
開封したダンボールに入っていたのは、無残に変わり果てた娘の姿だった。声にならない悲鳴が漏れた。四肢は切り落とされ真ん中にちょこんと生首が添えられていた。なんでこんな酷いことに……!?
娘の手に一通の手紙が握られていた。動悸を抑えながら解読した内容はこうだった。
『 昼仲末莉 2月20日未明 殺害 親愛なる家族の元へ 』
メモ書きのようにも思える大事な証拠を手に私は黎明警察署に駆け込んだ。
【 1か月前 23時半頃 某飲食店 】
やっと仕事が終わった……。働くのは楽しいけどやっぱり朝から晩までは辛いなぁ。明日の事とかを考えていたら後輩が先に上がって帰っていった。
「店長!お疲れ様です」
夜中まで働いているというのに後輩は威勢のいい挨拶をして帰っていった。
「あ、お疲れー」
私もそろそろ帰らないと、お義母さんが心配しちゃう。24とはいえまだまだ家で過ごす身。連絡を入れてから帰り支度をする。空にはオリオン座が輝いていた。
北風がマフラーを揺らす度に、二月の寒さを感じる。そうして灯りのない道に差し掛かった時だった。
聞き覚えのある声が背後からした。誰なの?と聞き返す間もなく頭に鈍い衝撃が走り私の意識は闇に落ちた。
目を覚ますとそこは帰り道なんかではなく地下室だった。椅子に縛りつけられているのか身動きが取れない。コツコツと廊下の反響音が近づいてくる。音の主は白い髪の女性だった。恐らく私をここに連れてきたのもこの人なんだろう。
「よぉ、久しぶりだな。茉莉」
「なんで私の名前を知っているの!?てか早くここから出してよ!」
「ん、私の事忘れたのか?おっかしいなぁ、お前なら覚えてると思ったのに」
「なんなの!?アンタは誰なのよ?」
喚く私をよそに女はポツリと何かを呟いた。
「11月22日。この日を覚えてるかな?」
「どういう事なの……。…………はっ!」
「思い出してくれたかい?人殺し?」
「あんたは……██ █!」
「フルネームでどーも」
ようやく合点がいった。そうか、こいつは。高校時代私たちがイジメていた奴じゃない!
「何よ、今更。復讐のつもり?」
「復讐といえばそうだが、少し違うなぁ」
「じゃあ何なのよ」
「あいつの約束を守る為かなぁ」
「あいつって誰よ!」
「…………」
饒舌だったあいつが途端に黙る。今までの貼り付けていたような狂った笑顔が消えた。
「ヒッドイなぁ、なんで██の事を忘れるんだよ。…………よし、きーめた」
恨みがましく吐き捨てるように言った奏はどこからかナイフを取り出すと、こう告げた。
「やっぱ、テメェに生きてる意味なんて無いんだわ。死んでくれる?」
私の運命はあの日からもう決まっていたんだと悟った。奈々や智美に連絡がつかなくなったのもきっとコイツのせいだ。お義母さんごめんなさい、私まだ何も返せてないのに。このまま死んじゃう私を許してね……。
娘が仕事先で行方不明になってからもう一ヶ月が経った。チャイムが鳴った。玄関に出ると宅配便の人が大きなダンボールを抱えて待っていた。……うちの人、大きなぬいぐるみでも買ったのかしら?
「昼仲様ですね?お届けものです」
「ありがとうねぇ」
宅配便の人は容姿の割には真っ白な髪をしていた。帰り際にニヤリと不敵な笑みを浮かべたような気がしたのはきっと気の所為なんだろう。それにしてもこのダンボール重いわね、底も少し濡れてるし……。一体何が入っているの?
それを開けるべきではなかったと今でも私は後悔している。まさかあんな形で娘と対面することになるなんてその時は思いもしなかった。
開封したダンボールに入っていたのは、無残に変わり果てた娘の姿だった。声にならない悲鳴が漏れた。四肢は切り落とされ真ん中にちょこんと生首が添えられていた。なんでこんな酷いことに……!?
娘の手に一通の手紙が握られていた。動悸を抑えながら解読した内容はこうだった。
『 昼仲末莉 2月20日未明 殺害 親愛なる家族の元へ 』
メモ書きのようにも思える大事な証拠を手に私は黎明警察署に駆け込んだ。
【 1か月前 23時半頃 某飲食店 】
やっと仕事が終わった……。働くのは楽しいけどやっぱり朝から晩までは辛いなぁ。明日の事とかを考えていたら後輩が先に上がって帰っていった。
「店長!お疲れ様です」
夜中まで働いているというのに後輩は威勢のいい挨拶をして帰っていった。
「あ、お疲れー」
私もそろそろ帰らないと、お義母さんが心配しちゃう。24とはいえまだまだ家で過ごす身。連絡を入れてから帰り支度をする。空にはオリオン座が輝いていた。
北風がマフラーを揺らす度に、二月の寒さを感じる。そうして灯りのない道に差し掛かった時だった。
聞き覚えのある声が背後からした。誰なの?と聞き返す間もなく頭に鈍い衝撃が走り私の意識は闇に落ちた。
目を覚ますとそこは帰り道なんかではなく地下室だった。椅子に縛りつけられているのか身動きが取れない。コツコツと廊下の反響音が近づいてくる。音の主は白い髪の女性だった。恐らく私をここに連れてきたのもこの人なんだろう。
「よぉ、久しぶりだな。茉莉」
「なんで私の名前を知っているの!?てか早くここから出してよ!」
「ん、私の事忘れたのか?おっかしいなぁ、お前なら覚えてると思ったのに」
「なんなの!?アンタは誰なのよ?」
喚く私をよそに女はポツリと何かを呟いた。
「11月22日。この日を覚えてるかな?」
「どういう事なの……。…………はっ!」
「思い出してくれたかい?人殺し?」
「あんたは……██ █!」
「フルネームでどーも」
ようやく合点がいった。そうか、こいつは。高校時代私たちがイジメていた奴じゃない!
「何よ、今更。復讐のつもり?」
「復讐といえばそうだが、少し違うなぁ」
「じゃあ何なのよ」
「あいつの約束を守る為かなぁ」
「あいつって誰よ!」
「…………」
饒舌だったあいつが途端に黙る。今までの貼り付けていたような狂った笑顔が消えた。
「ヒッドイなぁ、なんで██の事を忘れるんだよ。…………よし、きーめた」
恨みがましく吐き捨てるように言った奏はどこからかナイフを取り出すと、こう告げた。
「やっぱ、テメェに生きてる意味なんて無いんだわ。死んでくれる?」
私の運命はあの日からもう決まっていたんだと悟った。奈々や智美に連絡がつかなくなったのもきっとコイツのせいだ。お義母さんごめんなさい、私まだ何も返せてないのに。このまま死んじゃう私を許してね……。