【 11月20日月曜日 13時5分 】
 予想通り奏は屋上にいた。来たのが美琴では無いと分かると、見て分かるくらいに落胆していた。ウンザリした様子で、「何の用だ、美香」と尋ねた。貴方の人生に関わる大事なことを伝えに来たんです、と言うとなんだかだ話を聞いてくれた。
「は?明後日の放課後に美琴が死ぬだと?嘘言うなよ」
信じられないといったように聞き返した。まぁ、受け入れろという方が難しいだろう。なんてったって最愛の人(美琴)が、明後日に死んでしまうのだから。
「嘘じゃないですし、本当ですよ。私馬鹿じゃないんで」
「予言めいたそんな事信じろって方が馬鹿馬鹿しい」
……やっぱりそうですよね。どうしますかね……このままだと最悪な未来が、皆が死ぬ未来がまた訪れる。どうにかしたいのに!
「じゃあ、これから起きること言い当ててみせましょうか」
「くだらない」
「今日の部活練習で貴方は的を全て外します」
「そんな訳あるか」
「じゃあ、今日の練習で貴方は的を全て外すと言い切れるんですか?」
「……それは」
奏が言葉に詰まった。そう、未来なんて誰にも分からないのだ。少なくともやり直さない限り。
「なら、今私が言ったことも信じてください」
「……」
「私は貴方の味方ですし、貴方と美琴を救いたいんですよ」
「は?何を言って」
「美琴を救いたいなら、明後日の放課後16時に屋上に来てください」
「あいつを救うってどうやって……」
「それは貴方なら出来ることで、です」
奏が困惑した顔で私を見ている。まぁ、それもそうだ。いきなり明後日の放課後に美琴が死ぬと言われ、今度は自身の味方だと言われたのだから。しかし私は本気だし、二人を救いたいのだ。それで皆が助かるのなら……
「……分かったよ」
「じゃあまた会いましょうか」
私はそう言い放ち、屋上から立ち去った。
何だったんだ……と奏の呟く声が聞こえたが、私は気にせず教室へと戻った。明後日の放課後、奏は来てくれるだろうか。少しの不安を抱えながら私は家に帰った。
 その日の夜。一縷の希望を胸に、私はもしものための日記を書いてから就寝した。