そうして今日、私は奏ちゃんの過去を知った。私なんか比べ物にならないくらいに悲しくて辛いものだった。
「……長々と話して悪かったな。これで全部だ、最後のは要らなかったかもな」
奏ちゃんは自嘲するように笑った。
確かに、奏ちゃんは精神を病んでいた。今までもそういう一面はあったけど今回ので知れて良かったと軽く思った。あぁ違う違うそうじゃないの、奏ちゃんは一つだけ忘れていることがあるじゃん。
「奏ちゃん。奏ちゃんはどうして一人で抱え込もうとするの?」
「それ……は」
言葉に詰まる奏ちゃんに優しく伝える。かつての私に声をかけてくれた時ように、私の心を救ってくれた言葉を。
「言ってくれたじゃない?『私たちは友達なんだ。ひとりで抱え込んむんじゃない』って。私はそれで救われたんだよ……!」
「こんな事は話したところでどうにもならないんだよ」「なんでそんな事言うの?」
「話したところで過去は変えられない」
確かに、奏ちゃんの言う通りだった。きっとこの傷も愛されなかったことも、その事によってできた心の傷も。全部を話しても、それはただの自己満足にしかならないのかもしれない。でもさと私は言う。
「過去は変えられなくてもこれからの未来は変えられるじゃん?だからこれからを楽しく生きればいいんじゃない、私も似たような境遇でここまで生きてきたから」
「……そうだな、変えられない過去に縋っても何も無いからな」
「それとあと1つ、私は奏ちゃんの味方だから」
少しキョトンとした顔をしてから、奏ちゃんは笑った。
「はは、そんな事言われたの初めてだ。美琴だけだよ私をこんな風に言ってくれんのは」
「え?そうなの?」
私でも力になれたのかな?こんなちっぽけな私でも奏ちゃんの力になれてたらいい……な。