【 11月20日月曜日 放課後の教室 】
  思わぬ時にバレるとは思いもしなかった。美琴と帰ろうとして、それで。美琴が掴んだ私のシャツの袖がめくれて、手首の傷跡が見えたんだった。
「え?」
美琴はすっかり固まっている。好きな人にこんな傷跡があるんだ、理解が追いつかないのも当然だな。
「奏ちゃん!これ、どうして……」
「……何も知らなくていいんだよ、美琴は」
「駄目だよ、こんなの!!わけを教えて、なんでこうなったかをちゃんと。私も知りたいの、奏ちゃんのこと」
どこか必死な様子が変に感じる。こんなに焦った様子は見たことが無い。
腕に残る傷跡の数々がこれまでの私を物語っている。……もう話すべき時が来たのか。できれば隠しておきたかったんだけどな。
「なんで、隠してたの?」
「……言いたくなかった」
「なんでなの?」
「……美琴を心配させると思っていたから」
「…………馬鹿」
泣き出しそうなのを堪えている美琴は、らしくないことを言った。馬鹿か、確かにそうだな。私は変わらない過去をずっと悔いている。
「じゃあ、話してもいいかい?」
「……何をよ」
「私がこうなってる訳、いや過去と言った方がしっくりくるか」
「それって辛い話?」
「まぁまぁ。人によるかもな」
「なら、大丈夫だと思う」
「そうか、じゃあ話させてもらうよ」
たぶん私は美琴に自分をもっと知ってほしいと無意識に感じているのかもしれない。きっとそうなのだろう。


「それじゃ、話そうか。聞いてくれるだけで構わないよ」