【 ╳╳にて 】
次に気がついたときには辺り一面が花で満たされた花畑にいた。明るい光が遠くで煌めいた様な気がして、人を探すためにも私はその方向に向かって歩き出した。
やがて、光を放っているかのような明るく白い色をした扉と周りの闇と同化しそうな程黒い門が並んだ場所に辿り着いた。
私が来たことを感知したのか一瞬にして灰色の礼服に身を包み黒縁メガネをかけた人が現れた。
「ようこそ、死後の世界へ。私は案内人の御堂と申します。ここでは天国か地獄かどちらかを選べる場所でございまして。白い扉が天国、黒い門が地獄となっております」
「……死んでしまったのね、裕希夏を残して」
「残念ですがそうですね。しかし、人というものはいつか必ず死ぬものですから」
「やっとあの人たちの元に行けるのね」
内心安堵したが、私はまだ心残りがあった。あの人達を……
「……天国か地獄かを選ぶのは貴方自身です。良く良く考えてからご決断下さい」
「まぁでも君には別の方法もあるんだよな」
私でも御堂さんでもない声がした方を見ると、軍人の格好をした男性がいた。軍服の感じからしてずっと昔の人かしら?
「もしも君が過去に戻りたいんだっていうなら1度だけ戻してやろう。君の望む変えたい時間にね」
厳つい見た目に反して、その口調は人当たりのいいものだった。
「あなたは……?」
「あぁ自己紹介がまだだったね。俺は無月雪正という物だ。まぁこの銘の通り俺は人間じゃないんだけどな」
「……!もしかして。昔話は本当だったの?」
「ふむふむ、昔話で俺たちの事が伝わってるんだな。って今はいいか……さて、どうするんだい美香さん?」
「いやはや、美香様は運が良いですね。この御方が現れるとは……驚きです」
「案内人さん、ありがとうな」
「いえいえ、貴方様に言われるのは恐悦至極にございます」
御堂さんはそう言ったきり役割がもう無いと言わんばかりに黙ってしまった。
「さぁ、どうするんだい君は?悔いのない人生を送ったと思うのならこのまま行き先を選べばいい。やり直したいことがあるなら俺についてこい」
そんな事、ずっと前から決めている。私は、私は……。
「……私は後悔にまみれた人生を送ってきました。神様でもなんでもいいんです、どうか、どうか、あの頃に戻してください!今度こそ誰も欠けない卒業式を、誰も死ななくていい未来を、皆と笑って過ごしたいんです!」
「良いだろう!変えてみせろ、君自身の力で!」
雪正さんが笑ったような気がした、そんな答えを待っていたと言わんばかりに。雪正さんのその言葉を聞き終えないうちに、私の視界は白く染まり暖かい光が身体を包んだ。
見送った後に雪正と御堂はある話をしていた。
「しかし、あのことを伝えなくてよかったのですか?雪正様」
「あんなに必死な願いを聞いて伝えられるのか?あなたは」
「私でしたら、あまりにも非情な判断である故に伝えませんかね」
「そうだろう、あの娘には酷なことをしたが、仕方あるまい」
あるべき未来の形は定められている。その時の悲劇を変えることが出来たとしても、いつかはその対価を払わなければならぬ時が来る。それが未来を変えた貴女なのか、それとも俺も知らぬ誰かなのか。それを知るのは運命だけなのだろう。
次に気がついたときには辺り一面が花で満たされた花畑にいた。明るい光が遠くで煌めいた様な気がして、人を探すためにも私はその方向に向かって歩き出した。
やがて、光を放っているかのような明るく白い色をした扉と周りの闇と同化しそうな程黒い門が並んだ場所に辿り着いた。
私が来たことを感知したのか一瞬にして灰色の礼服に身を包み黒縁メガネをかけた人が現れた。
「ようこそ、死後の世界へ。私は案内人の御堂と申します。ここでは天国か地獄かどちらかを選べる場所でございまして。白い扉が天国、黒い門が地獄となっております」
「……死んでしまったのね、裕希夏を残して」
「残念ですがそうですね。しかし、人というものはいつか必ず死ぬものですから」
「やっとあの人たちの元に行けるのね」
内心安堵したが、私はまだ心残りがあった。あの人達を……
「……天国か地獄かを選ぶのは貴方自身です。良く良く考えてからご決断下さい」
「まぁでも君には別の方法もあるんだよな」
私でも御堂さんでもない声がした方を見ると、軍人の格好をした男性がいた。軍服の感じからしてずっと昔の人かしら?
「もしも君が過去に戻りたいんだっていうなら1度だけ戻してやろう。君の望む変えたい時間にね」
厳つい見た目に反して、その口調は人当たりのいいものだった。
「あなたは……?」
「あぁ自己紹介がまだだったね。俺は無月雪正という物だ。まぁこの銘の通り俺は人間じゃないんだけどな」
「……!もしかして。昔話は本当だったの?」
「ふむふむ、昔話で俺たちの事が伝わってるんだな。って今はいいか……さて、どうするんだい美香さん?」
「いやはや、美香様は運が良いですね。この御方が現れるとは……驚きです」
「案内人さん、ありがとうな」
「いえいえ、貴方様に言われるのは恐悦至極にございます」
御堂さんはそう言ったきり役割がもう無いと言わんばかりに黙ってしまった。
「さぁ、どうするんだい君は?悔いのない人生を送ったと思うのならこのまま行き先を選べばいい。やり直したいことがあるなら俺についてこい」
そんな事、ずっと前から決めている。私は、私は……。
「……私は後悔にまみれた人生を送ってきました。神様でもなんでもいいんです、どうか、どうか、あの頃に戻してください!今度こそ誰も欠けない卒業式を、誰も死ななくていい未来を、皆と笑って過ごしたいんです!」
「良いだろう!変えてみせろ、君自身の力で!」
雪正さんが笑ったような気がした、そんな答えを待っていたと言わんばかりに。雪正さんのその言葉を聞き終えないうちに、私の視界は白く染まり暖かい光が身体を包んだ。
見送った後に雪正と御堂はある話をしていた。
「しかし、あのことを伝えなくてよかったのですか?雪正様」
「あんなに必死な願いを聞いて伝えられるのか?あなたは」
「私でしたら、あまりにも非情な判断である故に伝えませんかね」
「そうだろう、あの娘には酷なことをしたが、仕方あるまい」
あるべき未来の形は定められている。その時の悲劇を変えることが出来たとしても、いつかはその対価を払わなければならぬ時が来る。それが未来を変えた貴女なのか、それとも俺も知らぬ誰かなのか。それを知るのは運命だけなのだろう。