【 ╳╳12年 11月25日 元警官の自宅 13時 】
「話せるのはそんなところかしら。長かった?裕希夏」
「ううん、全然。そっか、お母さん大変だったんだね」
「思い返せば、そうだったわね。今は大丈夫だから良いのだけれど」
……今なら分かる気がしますよ、何故貴方が私を残したのかを。私ならきっと真実を伝えてくれるのだろうという確信があったんですよね?奏さん。
忘れていたけれどあの人が死んだ日とあの子が死んだ日は同じなのね。ある意味、一つの運命なのかしら?
「そういえば、11月22日の誕生花ってなんだった?」
「えっとね、アングレカムだよ」
「ありがとうね、裕希夏は本当に花言葉の知識がすごいわね」
「えへへ、お母さんが好きだからなんか私もそういうの好きになっちゃった」
後で調べたら込められた意味は、アングレカムが『いつまでもあなたと一緒』だった。なんだか2人にふさわしい言葉な気がするな。
 そうだ、明日は墓参りに行こう。あの子にもあの人にも報告をしないと。忘れられない限りは人というものが死ぬことは無いのだから。




 【 11月26日 9時30分 】
 寝ぼけ眼を擦り何とか起きる。メガネをかけてから朝ご飯の準備をする為にダイニングに出た。
「おはようーお母さん。あれ?」
お母さんはいなかった。どこかに行ってるのかな?昨日は情報量が多い日だった。
何だかんだあの後、手紙(というか遺書だった)を読ませてもらった。それで、戦後最悪の大量殺人事件とされる『宵ノ内事件』のことを調べてた。……寝なかったんじゃなくて寝れなかったんだ。余りにも悲惨過ぎて、それに読んでてちょっと吐き気もしたし……。
 2つの事件はたった一人が起こした報復で、犯人は私が今通っている黎明高校の49期生だった。調べていて分かったけれど彼らが高2の時にある1人の生徒が屋上から投身自殺をしたらしい。原因はハッキリしていないみたい。
 なんて小説のネタに使えそうな事を考えてたら家の電話が鳴った。第一病院からだった。虫の知らせか何かなのだろう、出てはいけない気がした。にも関わらず電話に出ていた。
電話の相手は男性で神代と名乗った後に、お母さんが事故にあった旨を伝えた。嘘でしょ?お母さんが?てか、神代ってあの?いやいや、今そんなことはどうでもいい。早く行かないと……!