【 4月22日日曜日 ある医者の自宅 】
「ただいまー。あれ?お姉ちゃん?」
 帰宅する頃にはいつもいるはずなのに今日はお姉ちゃんがいない。ダイニングテーブルの上に置き手紙があった。それにはただ短く、同窓会に行ってきますとだけ書かれていた。それともう1つ、朝までに帰ってこなかったら読んでくださいと書かれた封筒に入った手紙があるのに僕は気がついた。読んではいけないような気がした。読もうとしたら、何となくつけていたテレビで速報が流れた。いつもなら気にしないはずなのに、耳に飛び込んできた単語に惹きつけられた。間違えようのない名前が聞こえ、稲妻が走ったかのような衝撃に襲われた。信じられなかった、信じたくなかったのかもしれないけど。
速報のテロップには、『月曜日の殺人鬼事件』の犯人逮捕の文字が踊っていた。違った、それじゃなかった。僕の目を引いたのは、犯人の名前だった。…………姉ちゃん、どうしてなんだよ。どうして、僕に何も言わなかったんだよ。あれほど一人で抱え込まないでって言ったのに。
 涙で見づらくなったもう1枚の手紙を読んだ。それにはただ、僕への謝罪の言葉が綴られた。
馬鹿だよ、本当に!置いてかれた僕のことなんて全然考えないで。
手紙の最後には何故か英語で文章が書き殴られていた。やはり悲しかったのか、紙と字がぐちゃぐちゃになっていた。
『You may be going to hate me. But I don't dislike you. Let's end this.Must live well till death by life.』
何とかして解読したそれは、お姉ちゃんらしく僕に向けたメッセージだった。
『お前は私のことが多分嫌いになるだろうな。でも、私は違う。こんなこと書くのは終わりにしようか。死ぬまでちゃんと生きてくれよ?』
こんな感じなんだろう、きっと。大丈夫、僕はちゃんと生きるから。姉ちゃんの分も姉ちゃんが好きだった人の分も絶対に。