いつも使っているメモ帳を見返せば、いつでも入学前に決めた目標を見返せる。
・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・周りの人にこれ以上絶対に迷惑をかけないこと
・高校を無事卒業すること
良くなっていない「頻発性哀愁症候群」、周りの人に迷惑をかけたくないくせに新入生オリエンテーションで私は菅谷くんに保健室に連れて行ってもらった。カレー作りを手伝うことすら出来なかった。
何も達成できていないまま、周りの優しさを返せないまま、周りからの優しさだけが降り積もっていく。
私は四人のグループに表示されたメッセージをただ見つめていた。
「今度、四人で遊びにいかない?」
他の三人の返信は早くて、すぐに決断出来ない自分がもどかしかった。草野くんのメッセージに一番早く返したのは菅谷くんだった。教室で話を聞いていたのもあったのかもしれない。
「行く!」
それからすぐに美坂さんもメッセージを返した。
「行きたい!でも、今週の土日だったら厳しいかも……!」
美坂さんのメッセージに草野くんが「まだ日程決まってないから平気!」と送っている。言葉は思いつかないのに、早く返したいと思う気持ちで焦ってしまう。
その時、もう一度通知音が鳴った。
「川崎さんは来れそう?」
返さないと。周りの人に迷惑をかけないために誰とも関わらないと決めたのなら、断らないと。そう思うのに何故かすぐに文字を打つことが出来ない。
その時、スマホの着信音が鳴った。画面には「菅谷 柊真」と表示されている。私は何が起こっているかよく分からないまま、電話に出た。
「もしもし、川崎さん?急に電話してごめん。今ちょっと大丈夫?」
「うん……」
「班で出かける話さ、無理しなくていいから。川崎さんの病気の状態もあるだろうし、本当に無理しなくていいよ」
菅谷くんが電話をかけてきてくれた理由に私はひどく安心してしまう。
「川崎さんはどうしたい?」
菅谷くんの問いに私は返事が出来ず、黙ってしまう。
「やっぱり症状が出るのが怖い?」
違う。症状が出るのが怖いのもあるけれど、一番は人と関わって周りの人に迷惑をかけることが怖かった。菅谷くんは私の返事が遅れたことで、私が症状が出ることを怖がっていると思ったようだった。
「川崎さん、もし出かけるのが嫌じゃないなら遊ぼ。症状が出たら真っ先に俺に言って。お互い助け合えば大丈夫だよ」
菅谷くんの優しさにうまく返事が出来なくて。
「川崎さん?大丈夫?」
「あ、うん……ごめん」
「全然。俺の方が川崎さんに助けてもらってるし。今日、高校に行けたのも川崎さんのおかげ」
「ちがっ……!」
「ん?」
「それは菅谷くんが頑張ったからだよ。菅谷くんが勇気を出したから……」
私の言葉に菅谷くんはしばらく何も言わなかった。しばらくして菅谷くんが少しだけ嬉しそうに笑った声が聞こえた気がした。
「川崎さん。遊ぶ日程が決まったら連絡するから、もし来れそうだったら来て。当日、来れそうだったらでいいから。勿論無理しなくていいよ。基本的に来ないと思って遊んでる。草野と美坂さんには俺から上手く伝えとくから」
私は菅谷くんの言葉に返事が出来ないまま、菅谷くんは「じゃあ、また明日」と言って電話を切ってしまう。
翌日の夜、菅谷くんから「6月2日10時」と送られてきた後、集合場所に最寄り駅の前が指定されている。最後に「一応送っとく」とメッセージが届く。
きっとこの「一応」は私が断りやすいように書いてくれている。その優しさが嬉しくて、はっきり断ろうと思っているのに決断を後回しにしてしまっている自分がいた。
・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・周りの人にこれ以上絶対に迷惑をかけないこと
・高校を無事卒業すること
良くなっていない「頻発性哀愁症候群」、周りの人に迷惑をかけたくないくせに新入生オリエンテーションで私は菅谷くんに保健室に連れて行ってもらった。カレー作りを手伝うことすら出来なかった。
何も達成できていないまま、周りの優しさを返せないまま、周りからの優しさだけが降り積もっていく。
私は四人のグループに表示されたメッセージをただ見つめていた。
「今度、四人で遊びにいかない?」
他の三人の返信は早くて、すぐに決断出来ない自分がもどかしかった。草野くんのメッセージに一番早く返したのは菅谷くんだった。教室で話を聞いていたのもあったのかもしれない。
「行く!」
それからすぐに美坂さんもメッセージを返した。
「行きたい!でも、今週の土日だったら厳しいかも……!」
美坂さんのメッセージに草野くんが「まだ日程決まってないから平気!」と送っている。言葉は思いつかないのに、早く返したいと思う気持ちで焦ってしまう。
その時、もう一度通知音が鳴った。
「川崎さんは来れそう?」
返さないと。周りの人に迷惑をかけないために誰とも関わらないと決めたのなら、断らないと。そう思うのに何故かすぐに文字を打つことが出来ない。
その時、スマホの着信音が鳴った。画面には「菅谷 柊真」と表示されている。私は何が起こっているかよく分からないまま、電話に出た。
「もしもし、川崎さん?急に電話してごめん。今ちょっと大丈夫?」
「うん……」
「班で出かける話さ、無理しなくていいから。川崎さんの病気の状態もあるだろうし、本当に無理しなくていいよ」
菅谷くんが電話をかけてきてくれた理由に私はひどく安心してしまう。
「川崎さんはどうしたい?」
菅谷くんの問いに私は返事が出来ず、黙ってしまう。
「やっぱり症状が出るのが怖い?」
違う。症状が出るのが怖いのもあるけれど、一番は人と関わって周りの人に迷惑をかけることが怖かった。菅谷くんは私の返事が遅れたことで、私が症状が出ることを怖がっていると思ったようだった。
「川崎さん、もし出かけるのが嫌じゃないなら遊ぼ。症状が出たら真っ先に俺に言って。お互い助け合えば大丈夫だよ」
菅谷くんの優しさにうまく返事が出来なくて。
「川崎さん?大丈夫?」
「あ、うん……ごめん」
「全然。俺の方が川崎さんに助けてもらってるし。今日、高校に行けたのも川崎さんのおかげ」
「ちがっ……!」
「ん?」
「それは菅谷くんが頑張ったからだよ。菅谷くんが勇気を出したから……」
私の言葉に菅谷くんはしばらく何も言わなかった。しばらくして菅谷くんが少しだけ嬉しそうに笑った声が聞こえた気がした。
「川崎さん。遊ぶ日程が決まったら連絡するから、もし来れそうだったら来て。当日、来れそうだったらでいいから。勿論無理しなくていいよ。基本的に来ないと思って遊んでる。草野と美坂さんには俺から上手く伝えとくから」
私は菅谷くんの言葉に返事が出来ないまま、菅谷くんは「じゃあ、また明日」と言って電話を切ってしまう。
翌日の夜、菅谷くんから「6月2日10時」と送られてきた後、集合場所に最寄り駅の前が指定されている。最後に「一応送っとく」とメッセージが届く。
きっとこの「一応」は私が断りやすいように書いてくれている。その優しさが嬉しくて、はっきり断ろうと思っているのに決断を後回しにしてしまっている自分がいた。