「……うっ」

また私の目から涙がこぼれた。

「辰己さん、大丈夫っスか?なんかすみません。偉そうなこと言って……」
「ううん。ありがとう。私、うれしい。すっきりしたっていうか……」

所詮ゲームのデータでしかないまゆりは、もうどこにもいない。
そもそも現実に存在すらしなかったのだし。
だけど、まゆりに出会い、確かに救われて支えられた私はこうして現実にいる。
あの日から、今も。
ならまゆりも現実のひとつ。
少なくとも私という存在の中では。

「あー、私まゆりに出会えて良かった。これからもずっと好き。まゆり大好き」
「わかります、そういうの。俺もマユリのことずっと好きだと思いますから」

真由理くんが深くうなずく。
普段と同じように無表情だけど、その目には熱がこもっていた。

「……ちなみに、ね。真由理くんの好きな古市マユリさんはどんな人なの?ごめんね、私あんまり芸能人詳しくなくてさ」
「どんなって……言葉で説明すんの難しいっスね。……辰己さんさえよければDVDとか貸しますけど」
「えっ、いいの?大事なものなんじゃないの」
「問題ないっス。同じの最低二本は持ってるんで」

やっぱりすごいガチだこの人。

うーん。DVDかあ。
失礼ながらアイドルとか本当に興味ないんだけど。

……でも