桜井まゆり。
世界一可愛い僕の恋人。

「おはよう、ミキくん」

朝。まゆりはそう言って僕に笑いかける。
僕がおはようと返すと、クスッとからかうような笑い声。

「まだ眠そうだね。また夜更かししていたんでしょ」

悪戯っぽいまなざし。
まゆりのこの表情がとても好きだ。
どちらかといえば童顔なまゆりだけれど、この顔をしているときは俄然大人っぽく見える。
少しだけ青みがかった目が、美しくゆらめく。

ああ。可愛いな。
まゆりは今日もすごく可愛い。

黒くて長い髪も。
長いまつげに縁取られた丸い目も。
ちょっとだけ幼く聞こえる声も。
涼しげな半袖のセーラー服も。

いつも通り、なにも変わらず、とても可愛い。

まゆりは僕の最高の恋人だ───。



「………はああ、まゆり最高。ずっと見ていたいけど、学校行かなきゃ。マジで現実なんてクソだよクソ」

「私」はそうつぶやき、アプリを終了した。
まゆりの姿がスマホから消える。