家に帰ると、僕が学校を抜け出した事も知らないようで特に話しかけられることもなく、二階へと上がった。
もし、今日僕があのまま屋上から飛び降りて死んだとしたらこの人達は悲しむだろうか。泣いて絶望しながら後悔するだろうか。
いや、父なら僕の存在を知られたくないから隠すだろう。
祖父が一代で築き上げた大きな病院の跡取りとして生まれ育ち、次期院長として勤務する父のことだ、出来の悪い息子が自殺したなんて知られたら立場も名誉にも傷がつくに決まっている。
最初から息子は、弟しかいなかったことにでもするのだろう。
渦巻く負の感情を消そうと風呂場のある下へと降りていくと弟がちょうど帰ってきたのか母と会話しているのがドア越しに聞こえてきた。
「母さん、テストの答案用紙が返ってきたよ。
この成績なら、問題なく志望校にも合格するだろうって言われたよ。」
「凄いわね。全教科満点じゃない!」
嬉しそうな甲高い声が、聞こえる。
聞き耳を立てていると、玄関からバタンという音が聞こえて振り向くと父が玄関で靴を脱いでいたので、急いで風呂場に向かう。
引き止められるかと冷や汗をかいたが、何事もなかったようにリビングに入っていったようだった。
部屋に戻っても、ため息しかこぼれない。
ベッドライトがあるチェストから携帯に手を伸ばすと、彼女から連絡が来ていた。
〈私と連絡を取る時は、これを使いたまえ。〉
おかしな文章と共に、スタンプが送られてきた。
《気が向いたらな。》
なんて返すか、僕なりに散々悩んで結果がこれだ。
〈せっかくあげたのに。まぁ、いっか。そうそう、明日やりたい事見つけたよ〜♪〉
また無茶苦茶な事を言い出しそう。
しかし、やりたいことが見つかったのなら用件を書いてくれたら一回で済むのに返事を返さないといけないような内容ばかり送ってくるなんて、僕を試しているのか。
ただのいたずらなのか知らないけれど、面倒くさいヤツだ。
《今度は、何だ。さっさと用件を書け。》
〈黒木くんに考える時間をあげてるんだよ。私が何をしたいのか考えて。答えは、明日の朝、たぶん教えてあげるよ。〉
深い溜め息が口から溢れていく…。彼女が何をしようと別にどうでも良いし、考えて正解を導き出せる気がしない。
それに何だ、たぶん教えてあげるとは。曖昧なヤツだ。
《たぶんって、教える気ないだろ。》
〈ちゃんと教えるよ。でも、私ほら病気だから約束は出来ないの。
だから、ちゃんと明日が私にもやって来たら教えてあげる。じゃあ、おやすみ★〉
僕は返事を返さなかった。
彼女は本当に病気なのだろうか。
もし、そうだとするならばここまで明るく生きられるだろうか。
こんな冗談みたいに話せるのだろうか。
どうせ、また僕をからかっているに決まっている。
でも、彼女と連絡を取り合っている内に弟のことも家族の事も考えなくなっていた。嫌な気持ちも、いつの間にか消えている。
今は、不愉快だけど彼女が明日何をしたいと言い出すのかが気になっている自分がいた。アイツの想うツボなのが悔しくはあるが気持ちは穏やかだ。
そうしている内に、僕は眠りについて朝を迎えた。
久々に熟睡出来たので、身体も軽く、気持ちの良い朝だった。
もし、今日僕があのまま屋上から飛び降りて死んだとしたらこの人達は悲しむだろうか。泣いて絶望しながら後悔するだろうか。
いや、父なら僕の存在を知られたくないから隠すだろう。
祖父が一代で築き上げた大きな病院の跡取りとして生まれ育ち、次期院長として勤務する父のことだ、出来の悪い息子が自殺したなんて知られたら立場も名誉にも傷がつくに決まっている。
最初から息子は、弟しかいなかったことにでもするのだろう。
渦巻く負の感情を消そうと風呂場のある下へと降りていくと弟がちょうど帰ってきたのか母と会話しているのがドア越しに聞こえてきた。
「母さん、テストの答案用紙が返ってきたよ。
この成績なら、問題なく志望校にも合格するだろうって言われたよ。」
「凄いわね。全教科満点じゃない!」
嬉しそうな甲高い声が、聞こえる。
聞き耳を立てていると、玄関からバタンという音が聞こえて振り向くと父が玄関で靴を脱いでいたので、急いで風呂場に向かう。
引き止められるかと冷や汗をかいたが、何事もなかったようにリビングに入っていったようだった。
部屋に戻っても、ため息しかこぼれない。
ベッドライトがあるチェストから携帯に手を伸ばすと、彼女から連絡が来ていた。
〈私と連絡を取る時は、これを使いたまえ。〉
おかしな文章と共に、スタンプが送られてきた。
《気が向いたらな。》
なんて返すか、僕なりに散々悩んで結果がこれだ。
〈せっかくあげたのに。まぁ、いっか。そうそう、明日やりたい事見つけたよ〜♪〉
また無茶苦茶な事を言い出しそう。
しかし、やりたいことが見つかったのなら用件を書いてくれたら一回で済むのに返事を返さないといけないような内容ばかり送ってくるなんて、僕を試しているのか。
ただのいたずらなのか知らないけれど、面倒くさいヤツだ。
《今度は、何だ。さっさと用件を書け。》
〈黒木くんに考える時間をあげてるんだよ。私が何をしたいのか考えて。答えは、明日の朝、たぶん教えてあげるよ。〉
深い溜め息が口から溢れていく…。彼女が何をしようと別にどうでも良いし、考えて正解を導き出せる気がしない。
それに何だ、たぶん教えてあげるとは。曖昧なヤツだ。
《たぶんって、教える気ないだろ。》
〈ちゃんと教えるよ。でも、私ほら病気だから約束は出来ないの。
だから、ちゃんと明日が私にもやって来たら教えてあげる。じゃあ、おやすみ★〉
僕は返事を返さなかった。
彼女は本当に病気なのだろうか。
もし、そうだとするならばここまで明るく生きられるだろうか。
こんな冗談みたいに話せるのだろうか。
どうせ、また僕をからかっているに決まっている。
でも、彼女と連絡を取り合っている内に弟のことも家族の事も考えなくなっていた。嫌な気持ちも、いつの間にか消えている。
今は、不愉快だけど彼女が明日何をしたいと言い出すのかが気になっている自分がいた。アイツの想うツボなのが悔しくはあるが気持ちは穏やかだ。
そうしている内に、僕は眠りについて朝を迎えた。
久々に熟睡出来たので、身体も軽く、気持ちの良い朝だった。