「ファミレス♪ファミレス♪」

 楽しそうにリズムをつけながら歩いて、たまに僕に振り向く彼女の笑顔が眩しかった。
 それからも、僕達は陽が落ちるまで遊び尽くした。
そして、駅のトイレで制服に着替えるとそのまま帰ろうとする彼女を無理やり引き連れながら、学校に鞄を取りに戻る。
 学校に着くなり、職員室に連れられ信じられない程に叱られたが、親が出てきたり、停学にもならず、反省文だけで済んだので割とあっさりしているのだなと驚いた。
 帰り道、少し前を歩く彼女の後ろ姿をぼんやり眺めながら僕は黙って歩き続ける。
交差点に入る直前、彼女の足が止まり振り返る。

「今日は、ありがとう。凄く、楽しかった!」

満面の微笑みが後ろから照らす夕焼けと重なって、綺麗に輝いてみえる。普段、そんなことを感じたことがないのに。

『思っていたより、怒られずに済んで良かった。』

本当に言いたいことはこんな言葉じゃないのに、言えないのが僕の性格だ。

「だね!あ、そうだ。連絡先交換しようよ。」

彼女は鞄から、スマートフォンを取り出す。

「別に良いけど。」

メールアドレスを見せようとしたら〈ちょっと貸して〉と奪われたので、そのまま待つことにした。

「はい、黒木くんはメールというよりはこういうアプリの方が良いでしょ?ちゃんと、既読がついたか確認したいし返事無さそうだから。」

『今までする人がいなかっただけで、ちゃんとやるよ。
お前は、ちゃんと返さないと面倒くさそうだし。』

「なにそれ、ひどい。ちゃんとやるって言ったからにはスタンプも送ってきてよね!可愛いのが良い」

『もってない。』

「嘘ー、一つも?」

『持つ必要がないものは、要らない。』

 そう言い切って、返してもらった携帯をポケットに入れた。また携帯でも奪われるかと思ったが、何もされない。

「じゃあ、また明日学校でね!」
 
ただ、それだけ言って手を降ると交差点を曲がって行って姿が見えなくなったので僕も家へと向きを変えた。