きっと私が死んだら、朔哉はまたひとりぼっちになるのだろう。
朔哉をひとりにするのは想像するだけで、胸をばりばりと裂かれるくらい、……つらい。

「……朔哉」

自分から出た声は酷く鼻声で、慌てて鼻を啜る。

――けれど。

「心桜」

不意に後ろから、もう慣れ親しんでしまったぬくもりが私を包む。

「どうかしたのかい、そんなにつらそうな顔をして」

「朔哉……」

私を抱きしめる腕をぎゅっと掴みながらも後ろを振り返れない。
傍にいたいってわがままを言ったから、朔哉は私と結婚してくれた。
でもそれって私よりもずっと長い時を生きる朔哉にとって、つらい決断だったんじゃ。
今頃になって、そんなことに気づいてしまった。

「今日はもう、帰ろう。
うか様には私から詫びを入れておくから」

「でも……」

そんな気分じゃなくなったからと、職場放棄なんてしていいはずがない。
けれど朔哉は私を、抱き抱えてしまった。

「仕事ができる精神状態じゃない。
無理はしないと約束したはずだ」

「……うん」

甘えるように朔哉に抱きつく。
慰めるように軽く、朔哉の手がぽんぽんと背中を叩いた。