「そんなことだろうと思ったんだよね」

はぁーっ、朔哉の口から重いため息が落ちた。

「ようするに心桜を虐めたいんだろ、あの人。
私から言ってあげるから……」

「ダメ」

「え?」

朔哉の目が、面の穴よりも大きく見開かれる。

「これは、私がうか様に試されていることだから。
受けて立つよ?
それで、ちゃんとやり遂げて、認めさせてやる」

きっと私が人間だから気にくわないんだろうけど。
そんなの知らない。
だいたい、こんな幼稚な虐めをしてくるなんて、本当に一番偉い、稲荷神様?
見た目と同じで、そこらの女子高生と変わらない。

「わかった。
でも無理はしないこと。
いい?」

はぁっ、と小さく朔哉がため息をついた。
私、そんなに呆れられるようなこと、言っている?

「わかった」

「じゃ、指切りね」

「え……」

朔哉に小指を差し出されたものの、躊躇した。
神様との約束は絶対だって言われた。
破ったら罰が本当に下るって。
だから今度はさすがに、そんな気軽な気分で指切りなんてできない。

「それはちょっと……」

逃げるようにじりじりと少しずつ後ろに下がる。