それは朔哉と結婚しても変わらないのだと言われた。
朔哉はこの先も長い長い時を生きていくが、私はそのときいないのだ。

――ならば。

一緒にいられる時間、目一杯朔哉を愛そう。


お昼ごはんを食べたあと、朔哉に断って書庫に籠もった。

「……崩し文字の読み方、崩し文字の読み方……」

このままではきっと、入力は遅々として進まない。
それにあれは比較的最近のものだったのにこれだけ手間取ったのだ。
年代が下がれば下がるほど、解読不能に陥るに決まっている。

「なんでまんがは滅茶苦茶揃ってるのに、肝心な本はないのー!?」

「心桜、どうかした?」

つい口に出た叫びがあまりにも大きかったのか、ひょこっと朔哉が顔を出した。

「あー、えと。
……欲しい本がなくて」

この書庫は朔哉の趣味なんだろうか。
普通の神社とかにありそうな、古文書の類いとか全然ないけど。

「なにを探してるの?」

「……崩し文字の読み方」

面の奥で朔哉が、二、三度まばたきする。

「なんでそんなもの、探してるの?」

「実は……」

うか様のところでの、仕事を説明した。
だから、崩し文字の読み方を勉強したいのだと。