目隠しを結び直し、また陽華さんは歩きだした。

「あの、うか様の力で傷は治るんじゃ……?」

私が酷いやけどをして痕が残ってしまったとき。
朔哉が簡単に消してくれた。
朔哉にできるんだから、うか様にできないはずがない。

「そんな。
せっかくあの方からいただいた傷痕を消すなど……!」

若干、陽華さんの呼吸がはぁはぁと荒い。
おかげで一歩、後ろへ下がってしまった。

「私はこれで満足しているのです。
短い間ですが、精一杯お仕えさせていただきますよ」

まあ、幸せの形は人の数だけあるんだろうし、陽華さんがそれでいいのならいいんだろう。
けれど。

――短い間。

その言葉は鋭い棘になって私の胸に突き刺さった。



行きたい場所を思い浮かべればそこへ出られると教えてもらい、朔哉の屋敷を思い出しながら鳥居をくぐる。

「おかえり」

出口ではすでに、朔哉が待っていた。

「ただいま!」

さっき感じた不安なんて振り払うように朔哉に抱きつく。

「そんなに私と離れて淋しかったのかい?」

「うん」

人の生は神様に比べたらずっと短い。