うか様は興味なさげに、テーブルの上に置いたままだった、和綴じの本をぺらぺらと捲っていた。

「行きましょうか」

「……は、はい」

促されて、部屋を出る。
陽華さんは見えていないなんて嘘みたいに、すたすたと歩いていた。

「その。
……陽華さんも人間なんですか」

目隠しが必要な人など、この世界ではそれしか思いつかない。

「はい。
二十年前に偶然、迷い込みまして。
うか様に惚れて、そのときから置いていただいております」

ということは、三十過ぎくらいなのかな。

「陽華さんはうか様の……旦那さん、なんですか」

だって、神様は人間が子供の間しか会ってはいけないのだと言っていた。
だからこそ私は朔哉と結婚したのだ。
なら、陽華さんだって。

「まさか」

なぜか、くすくすと可笑しそうに陽華さんは笑った。

「僕がうか様の夫だなんて畏れ多い」

「でも……」

違うのならば、彼がこの年にになってもうか様の傍にいられることに説明がつかない。

「ああ。
子供のうちにしか神にまみえられないのをご存じなんですね。
簡単ですよ、神から眷属として認めてもらえばいいだけです」

「……はい?」