運び込まれた箱は部屋の大半を占め、圧迫してきて息苦しい。
これを全部なんて途方に暮れてしまうが、やるしかないのだ。

箱の中身は和綴じの本になっていた。
ページを捲り、ひたすらカタカタとキーを叩く。
幸い、なのかブラインドタッチは得意だ。
隠していたわけじゃないが、高校では生徒会の書記をしていて毎日のようにキーを叩いていた。
それがこんなふうに役に立つなんて。

「どれくらい進んだー?」

突然、陽気なうか様の声が聞こえてきて、びくっと身体が震える。
手が止まったついでに顔を上げた。

「ようやく半箱、です」

キーを打つのは早いが解読が難航していた。
なんといっても崩し文字で書いてあるのだ。
読むのに時間がかかる。

「遅いなー」

そこしか見えていない、うか様の口がニヤニヤと意地悪く笑っている。
もしかして、もしかしなくてもこれって、私に対する嫌がらせなのだろうか。

「もうお昼だからそろそろ帰りなさい?
あ、朔哉にはひとりで帰らせるって連絡入れてるから」

「はい」

やりかけの分を保存してパソコンを落とす。
帰れ、はいいけれど、鳥居のところまでひとりで行っても大丈夫なのかな。