朔哉は静かに答えたけれど、必死に冷静を装っているのか声が少し震えていた。

「連絡くれたら出口まで迎えをよこすけどー?
それなら目隠し無しできても問題ないし?
はい、そういうわけで明日から、心桜はひとりで来ること!」

「はい」

「……はぁーっ」

朔哉の口から諦めのため息が落ちる。
きっとうか様にはなにを言ったって無駄なのだろう。
会うのはまだ二度目だけど、私も悟ってしまった。

「はーい、じゃあ心桜はお預かりしました。
お昼過ぎには帰すから、朔哉はさっさと帰った、帰った」

しっ、しっとうか様が朔哉を追い払う。

「……わかりましたよ。
じゃあ心桜、なにかあったらすぐに呼ぶんだよ?
頑張ってね」

「はい」

見るからに仕方ないって感じでおもむろに朔哉は腰を上げ、部屋を出ていった。
昨日はあんなに大丈夫だって言い切って見せたくせに、いなくなると不安になる。

「さて。
いまから心桜にやってもらうことだけど……」

「はい」

姿勢を正し、うか様を見つめる。
高校生時代はアルバイトなんてしたことなかった。
これが、初めての仕事。
ちょっとだけわくわくする。

――パンパン!