給仕に着いている宜生さんを朔哉はちらっと見た。
宜生さんはなにも言わずに、湯飲みに減ったお茶をつぎ足していたけれど。
朔哉はかなりご不満らしく、ぶつぶつ言いながら食べている。
神様なのに結構、不自由なんですね……。

「だったら、さ。
……私が作るとか、ダメかな」

「心桜が?」

朔哉が面の奥で二、三度まばたきする。
そんなに驚くことですか。

「心桜の手料理……」

朔哉の口が嬉しそうに、むにむにと動く。
あ、これはネクタイと一緒で、ドラマで憧れていたとかいう奴なのか?
でも傍に立っている宜生さんの口がへの字に曲がっていて、あれはかなり不満そう。
さらにはこほんと咳払いまでされてしまった。

「……うん。
気持ちは嬉しいけど、心桜にそんなことはさせられないから。
ありがとう」

「そう……」

ちまちまと焼き魚を食べている朔哉は、あきらかに残念そうだ。
私も、残念だけど。


ごはんが終わったら、タブレットを睨んでいる朔哉の隣で、携帯小説を読む。

「なに、やってるの?」

「んー?
株価の動向を見てるの。
大暴落とかすると、負の感情が渦巻いて仕事が増えるからね。
反対に高値で取り引きされていると、明るい気が満ちていいんだよ」