正装、だからか黒留になっていた。

「私も」

またぱちんと朔哉が指を鳴らす。
変わった彼の服は黒の、平安貴族のような服だった。

「これ、ドラマで見たことがある」

確か平安時代の、御所へ参内する正装だったはず。

「神様ってこう、卑弥呼(ひみこ)様!
って時代の感じの服だと思ってた」

「ご期待に添えなくて悪いね。
私は最近の神だから、人間界の神主たちとあまり変わらない格好だよ。
もっと古い、創世記の神たちは心桜が言うみたいな格好だけど」

「ふーん」

神様にもいろいろあるんだな。

「それにしても私がこれだと、心桜と釣り合いが取れないね」

再びぱちんと指が鳴り、私の服が変わる。
今度は、十二単のようなものになった。

「よその神社の、巫女舞の衣装を参考にしてみたけど、これならいいかな」

淡いグリーンの着物は綺麗だけど、一番偉い神様に会いに行くのに、いいのかな。

「正装じゃなくていいの?」

「人間には特に、決まりがないんだ。
そもそも神が人間を妻に迎えるなんて滅多にないからね」

「なら、いいけど」

朔哉は笑っているけど、ちょっとだけ引っかかった。