黄泉比良坂(よもつひらさか)を下った先、――死者の、国。

「黄泉には絶対に行ってはいけないよ。
私たちでも無事ではいられないし、人間の心桜なんて入った途端に死んでしまうからね」

「わかった」

そんなところ、行きたいわけがない。
それに、朔哉と一緒じゃないと限られた範囲でしか行動できないんだから、関係ないだろう。

「こっちでの生活はまた追々教えていくけど。
あと知っててほしいのは、……あれ」

朔哉の指さした先には、ネモフィラのような花が帯になってずっと先から遙か遠くまで咲いていた。

「導き草っていうんだ。
その名の通り、迷った者を導いてくれる花。
こちらではどこでも咲いている。
心桜も迷ったときはこれを探すといいよ。
といってもさっきの術で、私がすぐに駆けつけるけど」

「覚えておく」

でもやっぱり……以下同文。
でもこの花は綺麗だから、私の見える範囲でも咲いていてくれたらいいんだけど。


お昼ごはんを食べ、朝聞いたとおり偉い神様に結婚の報告に行く。

「このままじゃダメだからね」

ぱちんと朔哉が指を鳴らし、私の服があっという間に変わる。