私の鼻にぷにっと朔哉の面が当たってしまい、おかしくてふたりで笑いあった。


朔哉の元に嫁ぐのは私の十八の誕生日、三月二十日にしようっていってくれた。
その日が人間の私が神の朔哉に会える、タイムリミットだから。
ぎりぎりまで両親の元にいさせてあげたいという、朔哉の心遣いだ。



「お父さん、お母さん。
……あのね」

高校を卒業したら神様の元に嫁ぎます、なんて説明してわかってもらえるはずがない。
そんなこと言ったら、受験の現実逃避だと思われるのがオチだ。

「その。
高校卒業したら好きな人と結婚したいんだけど」

「ゆるさんぞ!」

見ていたタブレットをバン!と壊れるんじゃないかという勢いでテーブルに叩きつけ、父が立ちがある。

「結婚なんてまだ早い!
そんなの、許せるはずがないだろ!」

顔を真っ赤にして怒っている父とは違い、母と祖母はのんびりとお茶を啜っていた。

「受験がそんなに嫌か?
進学したいと言ったのはお前だろ」

予想通りの答えが返ってくる。
わかっていたけれど、どうしていいのか悩む。

「事情が変わったの。
大学へは行かない。
結婚する」