そういうわけで朔哉も、宜生さんも鼻までの狐の半面を私に会うときはいつも着けている。
私が来るときは屋敷中に報せが回っているが万が一、素顔の人と鉢合わせするといけないので、屋敷では常に宜生さんか朔哉が一緒じゃないと行動できない。

「ありがとうございました」

部屋に戻った際、宜生さんにお礼を言ったけれど返事はない。
いつもそう。
彼は私と口をきいてくれない。
もしかしたら口をきいたら穢れるとでも思っているのだろうか。

「おふぁえりー」

朔哉は口いっぱいにシュークリームを頬張り、もごもごしていた。
そういうとこ、ほんと可愛いんだよなー。
いや、齢二百六十歳の神様に失礼だけど。

「ほんと好きだね、ronronのシュークリーム」

「うん、大好き。
……でも、これを食べられるのもあと少しかな」

「え?」

意味が、わからない。
いつだって私は、朔哉のために届けるのに。

「心桜の誕生日って、三月だよね?」

「そうだけど」

「じゃあこうやって会えるのは、あと三月だ」

なんでそんなことになるのか理解できない。
私の誕生日がなにか、問題あるの?