「代替わりした神は、人間になる。
私は……心桜と一緒に老いて、死ぬことができる」

朔哉の手がうっとりと私の頬を撫でる。
それはとても、――とても幸せそうだった。

「朔哉……。
じゃあ私は、何十年も何百年も、朔哉をひとりにしないでいいの?」

「そうだね。
一緒になんて無理だろうけど、せいぜい数年違いだろうし」

自分から手を伸ばし、朔哉に抱きつく。

「……よかった。
あ、でも、神様じゃなくなっちゃうんだから、よかったとか言っちゃいけないのかな」

だからあのとき、うか様は朔哉が代替わりするつもりだと言って、あんなに怒っていた。
朔哉が、いなくなってしまうから。

「ううん。
これは私が、望んだことだから。
心桜と一緒に老いて、一緒に死にたい。
結婚を決めたときから、考えていた」

胸の中が温かいもので満たされていく。
それは身体の中に収まりきれなくなって、涙になって溢れていった。

「……ありがとう」

私はこんなに、朔哉から愛されている。
それだけでもう、朔哉と結婚してよかった。

「でもそれで、なんで熱が出るの?」

そこまで聞いてもやっぱり、理屈がわからない。