「本当にそうだよ。
考え無しにひとりで、黄泉になんか行って。
心桜の身体はもう、ひとりのものじゃないんだからね。
大事にしないと」

「えっと……」

それは、朔哉と結婚したからってことでいいんでしょうか。

「気づいてないの?
心桜は……カイニン、しているよ」

「カイニン……?」

ちょっと字が、よく思い浮かばない。
解任じゃないだろうし。

「……妊娠、してるってこと」

ぼそっと耳元で呟かれ、ぼふっと顔から火を噴いた。

「今回の私の熱は、そのせい」

「なんで私が……妊娠、したら朔哉が熱出すの?」

妊娠、なんて改めて口に出すのは恥ずかしい。
そもそもなんで、そんなことになるんだろう。

「心桜が懐妊したからね。
代替わりがはじまったんだ」

「なんで私が妊娠したら、代替わりがはじまるの……?」

不勉強な自分が憎い。
知っていればこんなことにならず、なにかもっといい方法が取れたかもしれないのに。

「我々はね、人間に子を産ませて代替わりするんだ。
生まれた子が、次代の神になる。
……それで」

私の顔を真っ直ぐに見て、なぜか朔哉は嬉しそうにふふっと笑った。