「……は?」

そんな術、かけられているなんて知らなかった。
でもそういえば、うか様のところでなにか口にするときは必ず、食べていいよって声をかけられたけど。
あれって遠慮しないで大丈夫って意味じゃなくて、本当に食べていいって許可だったんだ……。

「心桜、帰るよ。
帰ったら私との約束を破った罰を受けてもらわないと」

ひょいっと私を抱き抱え、朔哉はすたすたと坂を上っていく。

「この、ヤンデレ夫がー!」

背後から追ってくる伊弉冉様の声を聞きながら、どうやってそんな情報を仕入れているのか不思議に思っていた。



私を抱き抱え、朔哉は鳥居をくぐる。

「なんで?
はぁはぁ。
朔哉、なんで?
はぁ、はぁ」

あんなに熱が高くて、意識もないくらいだった。
しかも、原因不明でこのままってこともって言われていた。

「黙ってて。
重傷、なんだから」

私を抱く、朔哉の手が震えている。
心配させたのはわかるけれど、なんでここに朔哉がいるのかわからない。
考えようとするけれど、あたまは粘土でも詰まっているかのように酷く重い。
呼吸をするのすら、だるい。

鳥居を抜け、屋敷に出た。

「心桜様!」