ころころと彼女の笑う声が、いつまでも響いていた。



目を開くと、開いているかどうかもわからないほどの暗闇だった。

「……生きてる」

黄泉で、あの着物がなければ死んでいるはずだ。
けれどどういう理屈かわからないけれど、まだ私は生きていた。

――瀕死、だったけれど。

「……言の葉、手に入れなくちゃ……」

なにも見えない闇の中、手探りでずるずると腹ばいのまま進む。
辺りはしんとしていてなんの気配もない。
いないのか、――気配を消しているのか。
そのうち、なにかが手にあたった。
木の幹のようなそれを頼りに立ち上がり、手を伸ばす。

「……取れ、た……」

あとはこれを朔哉の元に届ければいいだけ。
けれど少し動いただけで身体は悲鳴を上げ、動けそうにない。

「……少しだけ、休ませて……。
そしたら朔哉の元に、帰る、から……」

取った葉を抱いて丸くなる。
早く、早く朔哉のところに帰らなきゃ。
わかっているけど、いまはちょっと、無理……。


そよそよと気持ちいい風が頬を撫で、再び私は目を開けた。
視界に入ってきたのはさっきまでなかった……光の、帯。