目を開けていられなほど、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
まさに毒ガスだ。

「でも、行かなきゃ……」

一歩踏み込んだ先は鼻を摘ままれてもわからないほどの闇だった。
うか様我持たせてくれた狐火の提灯を掲げると、辺りがぼぅと蒼白く照らされる。
ぴちょん、ぴちょんと水滴が落ちる音が響く。
なにかがかさかさと這いずり回り視界の隅を通り過ぎるが、気づかないフリで前へと進んだ。
目指すはうか様の母親、伊弉冉様のいるところ。

うか様から聞いた朔哉を救う方法。
それは伊弉冉様から言の葉を譲り受けるというものだった。

「伊弉冉様って……」

「私の母親。
それで、黄泉の国の女王」

自分の母親のことなのにうか様は、忌ま忌ましそうに吐き捨てた。

「伊弉冉の元にある言の葉は、文字通り言霊が宿った木の葉。
これがあれば絶対に、心桜の願いは叶うから、朔哉もよくなる」

「そんなものがあるなら……!」

どうしてすぐに、教えてくれなかったの!?

「でもそれは、伊弉冉の元へ行って、譲り受けなければならない。