朔哉……というか、朔哉のご先祖?はもともと、土地神様のような存在だったらしい。
村の片隅に祀られている、小さな神様。

けれどうか様がこちらへ分社を建てるにあたって、代理として抜擢された。
同じ神様を祀る神社がたくさんあるけど、どこも同じようなシステムを取っているらしい。

それで、抜擢された朔哉はめきめきと頭角を現し、あっという間に九州を束ねるほどの稲荷神になったというわけだ。

ちなみに御稀津って名乗っていたのは、仮の名なんだって。
本名はうか様の別名の、三狐神という。

「それで、うか様が千歳を超えているとかさー」

うか様は伊弉諾尊(いざなぎのみこと)伊弉冉尊(いざなみのみこと)の娘になるんだって。
これは日本書紀と古事記で違うんだけど、日本書紀が正しいらしい。
朔哉は三代ほど代が変わっているからいま二百六十歳だけど、うか様は代替わりしたのがずっと昔だから千歳を超えているらしい。
あのバイタリティで千歳越えは恐ろしいけど。

お昼になって戻ってきた朔哉と一緒にお昼ごはん。

「うか様が心桜に頼みたいことがあるからって言ってきたけど」

「えー、なんだろう」