「朔哉?
あの、心桜が持ってる機械。
うちで量産したいから、作り方教えて?
……え、心桜専用だから教えない?
……そんなこと言っていいの?
心桜、このまま帰さないわよ。
……最初から、素直にそう言えばいいのよ。
……いまから来る?
わかった、待ってるから」

朔哉がなんと言っているのかは聞こえないが、電話の向こうで盛大にため息をついているのだけは想像できた。

「さて。
そんな便利なものがあるんだから、さくさくやっちゃって」

いつも通り私の前に座り、うか様はマニキュアを塗る準備をしている。

「その。
……ずる、とか言わないんですか」

「なんで?
私は合理的な方が好きよ。
あの、人間のわけわかんない苦労主義、嫌い」

顔をしかめ、彼女は吐き捨てるように言った。
ちょっとだけ、悪しき習慣にとらわれている人間の皆様に聞かせてやりたい。

「それで。
これでかなり楽になった上にスピードアップできるよね。
ならあと百年分、追加してもいい?」

マニキュアを塗りながら、今日の晩ごはんはオムライスが食べたいんだけど、くらいの気軽さで訊いてくる。
一瞬、尊敬したけれど、うか様はやっぱりうか様だった。