効率化するのはずるだとして、いちいち昔ながらの手間のかかる方法の方が偉いというはよくない風習だとお父さんはよく怒っていた。
だからいいのだ、これで。

「ねえ。
いつになったら朔哉のとこから出ていくのー」

次の本を読み込んでいたところへうか様が勢いよくドアを開け、手が止まる。
「なに、やってるの?」

つーっと、うか様の視線が私の手の上で止まった。

「なに、その機械?」

「えーっと、ですね……」

暑くもないのにじっとりと脇が汗を掻く。
ずる、とか言われたらどうしよう。
せっかくこれでスピードアップだと思ったもに、ダメだって取り上げられちゃったら。

「朔哉が作ってくれた、お願い帳を丸々取り込める機械で。
読み込んだものを微修正するだけでいいという、優れものでして……」

「いいわね、それ!」

うか様の顔の周りでキラキラと星が飛ぶ。
うん、言葉の綾じゃなくて本当に星が飛んだ。

「朔哉に量産させよう!
あ、いや、作り方を訊いてこっちで量産した方が早いかも」

話ながらもどこからともなく携帯を取りだし、さっそくうか様はどこかにかけはじめた。