シグルンが先導し、その後に俺が続く。
一番最後に、フィンナが付いてきていた。
鬱蒼としたようすの石造りの建物。
それがこの神殿だった。
その通路を俺たちは進んでいた。
この神殿は、随分と広い建物のようだ。もし、神殿である、と彼女らから言われなければ、何かの城のようにも見えるだろう。
シグルンとフィンナがルーン魔法で作成している火の玉という照明で周囲を照らしていることもあって、彼女らと一緒に進む分には問題はない。
しかし、この建物内は、基本的には暗闇に包まれているようで、進む際には注意しなければならない。
「誠さん。先ほども言いましたが、私たちからはぐれない様にしてくださいね。」
フィンナは、俺の後ろでそういった。
これまでのフィンナの説明によれば、シグルンとフィンナのルーン魔法によって、彼女二人の周囲は人間が過ごせる気温と湿度に保たれている、とのことだ。
二人のいる範囲を超えてしまうと、俺は凍死してしまうらしい。
なんとも恐ろしいことだ。
「私たちがこの神殿に召喚されてから、まだ数か月しか経過していません。」
しばらく進むと、再びフィンナはそういった。
俺は、そのフィンナが言ったことに疑問を覚えた。
どうして彼女らは、永遠の冬を永遠だと思っているのだろうか?
「フィンナさん。なら、どうして永遠の冬が数千年続いていることが分かったんだ?」
俺は、フィンナに聞いた。
「それは、この神殿にある記録を通して、ここが私の知っている時代よりも数千年経っていることを知ったからです。」
「記録でですか。」
俺は、ぽつりと言った。
「この神殿は、私たちの時代からあったものだ。だから、ある程度は知っている。ただ、な。」
そう言ったのはシグルンだった。
「ルーン魔法が理解できていない誠には分からないかもしれないが、時を刻む魔道具が正確な時間を記録していたのが決め手だ。」
シグルンは、そう話を進めた。
俺はそれを聞いて、時計か何かをイメージした。
「誠さん。この神殿内にある全ての記録は、私とシグルンが知るよりも、ここが遠い未来であることを指し示していました。とはいえ、これまで、この神殿内での生活基盤を築くことを最優先で活動していましたので。」
フィンナはそこまで言って言葉を止めた。
俺は、いくつか疑問に思うことはあったが、歩みを止めた二人に合わせた。
俺たちは、一つの部屋へと到着したのだった。
無言で、シグルンは部屋へ続く扉を開けた。
「ここだ。」
シグルンがそういって案内をしてくれた部屋に、俺はただ圧倒されるだけだった。
そこは広々とした部屋だ。
その部屋には大きなテーブルが置かれており、椅子も用意されているようだ。
テーブルの上には、燭台があった。
そして、その燭台の前には、何かの文字が浮かんでいた。それは、相変わらず俺には全く分からない文字だ。
「私たちは、ここをリビングとして使用しています。」
フィンナはそういいながら、テーブルの近くにあった椅子へ腰を掛けた。
「この神殿には、部屋がいくつもあるようですが、基本的にはこの部屋の周辺で生活をしています。おそらく、ここらはかつて、修道士が住んでいた場所なのでしょう。」
椅子に座ったフィンナはそういって、俺に微笑んできた。
「私とシグルンの部屋は、ここにある扉から行けます。ねぇ?シグルン。」
フィンナがそういったので、俺は、このリビングを見まわした。
確かに、この部屋に入ってきた扉以外に、いくつかの扉が見える。
「ああ、誠。部屋はあと一つ余っている、お前の部屋はそこでいいな?」
そう言って彼女は歩き始めた。俺もそれに続いて進むことにした。するとフィンナが声を掛けてくる。
「ああ、誠さん?必要なものは言ってくださいね?準備いたしますから……。」
フィンナは、そう言ったので、俺は軽く頭を下げた後に、シグルンを追いかけたのだった。
そんな俺たちの様子を、彼女は微笑みながら見ていた。
シグルンは、広いリビングという部屋を歩いて、ある部屋の扉の前で止まった。
「ここが貴様の部屋だ。」
そう言って彼女は扉を開けてくれたので中に入ると、そこにはベッドや机などが置かれていた。そして、先ほどのリビングにもあった、何かの文字が浮かんでいる蝋燭。部屋の隅にはクローゼットもあるようだ。
「この部屋にある物は好きに使って構わない。」
そう言いつつ、彼女は部屋の扉を閉めた。そして改めて俺を見る。
「……さて、誠。改めて貴様にはルーン魔法を教えなければならんな。」
シグルンはそう言うと、俺の目の前に立つ。
「まずは、基本的なことからだ。」
彼女はそういうと、俺に手を差し出した。俺はその手を取るべきか迷った。
しかし、さっさとしろという様子のシグルンに負けて、彼女の手に触れたのだった。
すると……何かが流れ込んでくるような感覚があった。それはまるで血液のように体の中を流れていくような不思議な感覚だったのだが……不思議と不快ではなかったのだ。
その感覚が終わると、彼女は手を引っ込めた。そして俺を見た。
「今のは、魔力を流した感じだ。この感覚がルーン魔法の発動起点だ、分かったな?」
俺はとりあえず頷いておくことにしたのだが、正直よく分かっていない。
そんな俺の様子に気が付いたのか、シグルンは少し考える素振りを見せた後で口を開いた。
「誠。まずは魔法を使ってみろ。そうだな、この蝋燭に明かりを灯すんだ。」
そう言った彼女は、文字が浮かんでいた蝋燭を手に取り、俺の前に突き出した。
俺は、蝋燭を受け取った。
「えっと、どうすればいいんだ?」
流石に怒られるかと思ったが、何も分かっていない俺は、そう言った。
ところが、シグルンは怒らなかった。
「今の感覚で、この蠟燭の魔道具へ魔力を通して、明かりを灯すイメージをしろ。」
シグルンは、どこか諦めた様子で話した。
俺は言われたとおりにやってみる。まずは魔力を通すんだっけか?
手に持った蝋燭へと、流れ込んでくるような感覚を向けた。
おおっ……。確かに何かが流れた。
これまでにない感覚を、自らの意志で動かしてみる。
ゆっくりと、その流れを蝋燭へと向けた。
そして、俺は物理学の実験のイメージ。燃焼をイメージした。酸素が燃焼し、熱が発生する。それは俺も知っている現象だ。
その瞬間、蝋燭の燃える部分が燃焼し始めて、その明かりを周囲に振りまいたのだった。
「おお!やったじゃないか!」
シグルンはそう言いつつ、驚いている。なんだか照れ臭かったので俺は頭をかいた。
「初めてにしてはかなり明るいな。誠は、炎に関係した仕事に関係していたのか?」
シグルンは、そう言って俺を見たのだが、俺にはよくわからなかった。
「いや、俺は学生で、そういうわけでは、ないんだが……。」
俺はそう言いつつ首を振ると、シグルンもそこまで興味はなかったようで頷いてくれたのだった。
そんな会話をしていると……。
突然部屋の扉が開く音がしたのだ。俺が振り返るとそこにはフィンナが立っていた。
「あら?誠さん、ルーン魔法が使えるようになったんですか?」
彼女はそういうと俺に微笑みかけてきた。その笑顔は美しく、俺は思わず見とれてしまう。
「えっと、これはまだ、シグルンさんに教えてもらってるところでして……。」
俺は慌てて視線を逸らしたのだが、そんな俺の様子を見ていたフィンナは小さく笑う。
「私は、誠さんと契約しているので分かりますよ。誠さんは、立派にルーン魔法を行使しています。」
フィンナは、そういうと俺へと近づいてきた。
「シグルン。素晴らしいです!この調子で誠さんにルーン魔法を教えてあげてください。」
「姫様。分かりました。」
シグルンはすっかり、フィンナに上手く乗せられており、俺にルーン魔法を教える気満々だ。
正直、俺は二人の会話に俺はついていけないのだが……。
とりあえずはルーン魔法を学ぶことになったのだった。
「さぁ!早速練習するぞ!」
俄然、元気になったシグルンは、俺に向かってそう言ったのだった。
「さて、次は魔道具を使用しないもの。……うーん。そうだ、誠。水を創り出してみろ。」
シグルンは、そう言った。
「えっと。手順は一緒なのか?」
俺はそう言った。
「そうだ、魔力を大気中に伝える感じだ。そして、大気中に含まれている水をイメージする。」
俺はシグルンに言われた通りにやってみた。
先ほどは蝋燭の魔道具へ魔力を流した感覚だった。それを思い浮かべたのだが……上手くいかない。
「ううーん……」
そんな俺の様子を、静かに見ていたフィンナが口を開いた。
「誠さん、少し魔力の流れが乱れていますよ?」
フィンナはそう言いつつ、俺に近づいてきたのだった。そして俺の肩に手を置くと目を瞑り何かを呟いたのだ。すると彼女の手から何かが流れ込んできた感じがしたのだった。
「今の感覚をもとに、同じことをしてみてください。」
フィンナはそう言った。
俺は、フィンナに言われたようにい、彼女の手から流れてきたように、周囲の大気へ魔力を流す。
そして、大気中が地球上で循環して雨が降っている様子や、水の分子が大気中に含まれている様子を脳裏に浮かべ、その水が自分の中から流れ出てくるようなイメージをしてみた。
すると……俺の体から、水が流れ出る感覚があったのだ。
そして俺の目の前には、無重力状態であるかのように、水の塊が浮遊していた。
その水が徐々に集まりだして行き、やがて大きな水の形を成したのだった。
「おおっ!」
シグルンの声が聞こえたのでそちらを見ると、彼女は目を丸くしていた。そんな俺たちの様子を見ていたフィンナは微笑んでいる。
そんな彼女たちの反応に俺は少し気恥ずかしさを感じてしまったが、とりあえずは成功したようだ。
「素晴らしいです!誠さん!」
フィンナはそう言って俺へ拍手を送った。
「いや、これをどうすれば?」
俺は、目の前に出来た水の玉をどうすればいいのか、分からなかったのだ。
「それは誠さんの魔力によって形をなしていますので、イメージ次第ですよ?」
フィンナは、そう俺に言ったので、俺は、水が蒸発するイメージをした。
すると、水の玉は、蒸発するイメージに合わせて、霧散していったのだった。
「すごいですね!誠さん!」
フィンナは、まるで自分の事のように喜んでいる。
俺は少し照れながら頭をかいて誤魔化した。そしてシグルンの方を見ると、彼女は腕を組んで何かを考えていたようだ。
「……ふむ、水か。」
そう言っていたシグルンは、何か思いついたようで顔を上げた。
「よし!次は風だ!誠、やってみろ!」
そう言った彼女は、どこか楽しそうだった。
「え?」
俺は思わず声が出てしまったが、シグルンは気にすることなく続ける。
「風だよ!風!」
俺は少し躊躇ってしまったが、仕方なくやってみることにする。
先ほどと同じように大気中へ魔力を流し、そしてイメージする……。
すると、今度は俺の目の前に風が吹いたのだった。
あたかも人間扇風機のような、その風量は小さなものだったが、確かに風が吹いていた。
「よしっ!」
シグルンは嬉しそうに言った。そんな彼女の様子を見てフィンナは微笑んでいる。
一番最後に、フィンナが付いてきていた。
鬱蒼としたようすの石造りの建物。
それがこの神殿だった。
その通路を俺たちは進んでいた。
この神殿は、随分と広い建物のようだ。もし、神殿である、と彼女らから言われなければ、何かの城のようにも見えるだろう。
シグルンとフィンナがルーン魔法で作成している火の玉という照明で周囲を照らしていることもあって、彼女らと一緒に進む分には問題はない。
しかし、この建物内は、基本的には暗闇に包まれているようで、進む際には注意しなければならない。
「誠さん。先ほども言いましたが、私たちからはぐれない様にしてくださいね。」
フィンナは、俺の後ろでそういった。
これまでのフィンナの説明によれば、シグルンとフィンナのルーン魔法によって、彼女二人の周囲は人間が過ごせる気温と湿度に保たれている、とのことだ。
二人のいる範囲を超えてしまうと、俺は凍死してしまうらしい。
なんとも恐ろしいことだ。
「私たちがこの神殿に召喚されてから、まだ数か月しか経過していません。」
しばらく進むと、再びフィンナはそういった。
俺は、そのフィンナが言ったことに疑問を覚えた。
どうして彼女らは、永遠の冬を永遠だと思っているのだろうか?
「フィンナさん。なら、どうして永遠の冬が数千年続いていることが分かったんだ?」
俺は、フィンナに聞いた。
「それは、この神殿にある記録を通して、ここが私の知っている時代よりも数千年経っていることを知ったからです。」
「記録でですか。」
俺は、ぽつりと言った。
「この神殿は、私たちの時代からあったものだ。だから、ある程度は知っている。ただ、な。」
そう言ったのはシグルンだった。
「ルーン魔法が理解できていない誠には分からないかもしれないが、時を刻む魔道具が正確な時間を記録していたのが決め手だ。」
シグルンは、そう話を進めた。
俺はそれを聞いて、時計か何かをイメージした。
「誠さん。この神殿内にある全ての記録は、私とシグルンが知るよりも、ここが遠い未来であることを指し示していました。とはいえ、これまで、この神殿内での生活基盤を築くことを最優先で活動していましたので。」
フィンナはそこまで言って言葉を止めた。
俺は、いくつか疑問に思うことはあったが、歩みを止めた二人に合わせた。
俺たちは、一つの部屋へと到着したのだった。
無言で、シグルンは部屋へ続く扉を開けた。
「ここだ。」
シグルンがそういって案内をしてくれた部屋に、俺はただ圧倒されるだけだった。
そこは広々とした部屋だ。
その部屋には大きなテーブルが置かれており、椅子も用意されているようだ。
テーブルの上には、燭台があった。
そして、その燭台の前には、何かの文字が浮かんでいた。それは、相変わらず俺には全く分からない文字だ。
「私たちは、ここをリビングとして使用しています。」
フィンナはそういいながら、テーブルの近くにあった椅子へ腰を掛けた。
「この神殿には、部屋がいくつもあるようですが、基本的にはこの部屋の周辺で生活をしています。おそらく、ここらはかつて、修道士が住んでいた場所なのでしょう。」
椅子に座ったフィンナはそういって、俺に微笑んできた。
「私とシグルンの部屋は、ここにある扉から行けます。ねぇ?シグルン。」
フィンナがそういったので、俺は、このリビングを見まわした。
確かに、この部屋に入ってきた扉以外に、いくつかの扉が見える。
「ああ、誠。部屋はあと一つ余っている、お前の部屋はそこでいいな?」
そう言って彼女は歩き始めた。俺もそれに続いて進むことにした。するとフィンナが声を掛けてくる。
「ああ、誠さん?必要なものは言ってくださいね?準備いたしますから……。」
フィンナは、そう言ったので、俺は軽く頭を下げた後に、シグルンを追いかけたのだった。
そんな俺たちの様子を、彼女は微笑みながら見ていた。
シグルンは、広いリビングという部屋を歩いて、ある部屋の扉の前で止まった。
「ここが貴様の部屋だ。」
そう言って彼女は扉を開けてくれたので中に入ると、そこにはベッドや机などが置かれていた。そして、先ほどのリビングにもあった、何かの文字が浮かんでいる蝋燭。部屋の隅にはクローゼットもあるようだ。
「この部屋にある物は好きに使って構わない。」
そう言いつつ、彼女は部屋の扉を閉めた。そして改めて俺を見る。
「……さて、誠。改めて貴様にはルーン魔法を教えなければならんな。」
シグルンはそう言うと、俺の目の前に立つ。
「まずは、基本的なことからだ。」
彼女はそういうと、俺に手を差し出した。俺はその手を取るべきか迷った。
しかし、さっさとしろという様子のシグルンに負けて、彼女の手に触れたのだった。
すると……何かが流れ込んでくるような感覚があった。それはまるで血液のように体の中を流れていくような不思議な感覚だったのだが……不思議と不快ではなかったのだ。
その感覚が終わると、彼女は手を引っ込めた。そして俺を見た。
「今のは、魔力を流した感じだ。この感覚がルーン魔法の発動起点だ、分かったな?」
俺はとりあえず頷いておくことにしたのだが、正直よく分かっていない。
そんな俺の様子に気が付いたのか、シグルンは少し考える素振りを見せた後で口を開いた。
「誠。まずは魔法を使ってみろ。そうだな、この蝋燭に明かりを灯すんだ。」
そう言った彼女は、文字が浮かんでいた蝋燭を手に取り、俺の前に突き出した。
俺は、蝋燭を受け取った。
「えっと、どうすればいいんだ?」
流石に怒られるかと思ったが、何も分かっていない俺は、そう言った。
ところが、シグルンは怒らなかった。
「今の感覚で、この蠟燭の魔道具へ魔力を通して、明かりを灯すイメージをしろ。」
シグルンは、どこか諦めた様子で話した。
俺は言われたとおりにやってみる。まずは魔力を通すんだっけか?
手に持った蝋燭へと、流れ込んでくるような感覚を向けた。
おおっ……。確かに何かが流れた。
これまでにない感覚を、自らの意志で動かしてみる。
ゆっくりと、その流れを蝋燭へと向けた。
そして、俺は物理学の実験のイメージ。燃焼をイメージした。酸素が燃焼し、熱が発生する。それは俺も知っている現象だ。
その瞬間、蝋燭の燃える部分が燃焼し始めて、その明かりを周囲に振りまいたのだった。
「おお!やったじゃないか!」
シグルンはそう言いつつ、驚いている。なんだか照れ臭かったので俺は頭をかいた。
「初めてにしてはかなり明るいな。誠は、炎に関係した仕事に関係していたのか?」
シグルンは、そう言って俺を見たのだが、俺にはよくわからなかった。
「いや、俺は学生で、そういうわけでは、ないんだが……。」
俺はそう言いつつ首を振ると、シグルンもそこまで興味はなかったようで頷いてくれたのだった。
そんな会話をしていると……。
突然部屋の扉が開く音がしたのだ。俺が振り返るとそこにはフィンナが立っていた。
「あら?誠さん、ルーン魔法が使えるようになったんですか?」
彼女はそういうと俺に微笑みかけてきた。その笑顔は美しく、俺は思わず見とれてしまう。
「えっと、これはまだ、シグルンさんに教えてもらってるところでして……。」
俺は慌てて視線を逸らしたのだが、そんな俺の様子を見ていたフィンナは小さく笑う。
「私は、誠さんと契約しているので分かりますよ。誠さんは、立派にルーン魔法を行使しています。」
フィンナは、そういうと俺へと近づいてきた。
「シグルン。素晴らしいです!この調子で誠さんにルーン魔法を教えてあげてください。」
「姫様。分かりました。」
シグルンはすっかり、フィンナに上手く乗せられており、俺にルーン魔法を教える気満々だ。
正直、俺は二人の会話に俺はついていけないのだが……。
とりあえずはルーン魔法を学ぶことになったのだった。
「さぁ!早速練習するぞ!」
俄然、元気になったシグルンは、俺に向かってそう言ったのだった。
「さて、次は魔道具を使用しないもの。……うーん。そうだ、誠。水を創り出してみろ。」
シグルンは、そう言った。
「えっと。手順は一緒なのか?」
俺はそう言った。
「そうだ、魔力を大気中に伝える感じだ。そして、大気中に含まれている水をイメージする。」
俺はシグルンに言われた通りにやってみた。
先ほどは蝋燭の魔道具へ魔力を流した感覚だった。それを思い浮かべたのだが……上手くいかない。
「ううーん……」
そんな俺の様子を、静かに見ていたフィンナが口を開いた。
「誠さん、少し魔力の流れが乱れていますよ?」
フィンナはそう言いつつ、俺に近づいてきたのだった。そして俺の肩に手を置くと目を瞑り何かを呟いたのだ。すると彼女の手から何かが流れ込んできた感じがしたのだった。
「今の感覚をもとに、同じことをしてみてください。」
フィンナはそう言った。
俺は、フィンナに言われたようにい、彼女の手から流れてきたように、周囲の大気へ魔力を流す。
そして、大気中が地球上で循環して雨が降っている様子や、水の分子が大気中に含まれている様子を脳裏に浮かべ、その水が自分の中から流れ出てくるようなイメージをしてみた。
すると……俺の体から、水が流れ出る感覚があったのだ。
そして俺の目の前には、無重力状態であるかのように、水の塊が浮遊していた。
その水が徐々に集まりだして行き、やがて大きな水の形を成したのだった。
「おおっ!」
シグルンの声が聞こえたのでそちらを見ると、彼女は目を丸くしていた。そんな俺たちの様子を見ていたフィンナは微笑んでいる。
そんな彼女たちの反応に俺は少し気恥ずかしさを感じてしまったが、とりあえずは成功したようだ。
「素晴らしいです!誠さん!」
フィンナはそう言って俺へ拍手を送った。
「いや、これをどうすれば?」
俺は、目の前に出来た水の玉をどうすればいいのか、分からなかったのだ。
「それは誠さんの魔力によって形をなしていますので、イメージ次第ですよ?」
フィンナは、そう俺に言ったので、俺は、水が蒸発するイメージをした。
すると、水の玉は、蒸発するイメージに合わせて、霧散していったのだった。
「すごいですね!誠さん!」
フィンナは、まるで自分の事のように喜んでいる。
俺は少し照れながら頭をかいて誤魔化した。そしてシグルンの方を見ると、彼女は腕を組んで何かを考えていたようだ。
「……ふむ、水か。」
そう言っていたシグルンは、何か思いついたようで顔を上げた。
「よし!次は風だ!誠、やってみろ!」
そう言った彼女は、どこか楽しそうだった。
「え?」
俺は思わず声が出てしまったが、シグルンは気にすることなく続ける。
「風だよ!風!」
俺は少し躊躇ってしまったが、仕方なくやってみることにする。
先ほどと同じように大気中へ魔力を流し、そしてイメージする……。
すると、今度は俺の目の前に風が吹いたのだった。
あたかも人間扇風機のような、その風量は小さなものだったが、確かに風が吹いていた。
「よしっ!」
シグルンは嬉しそうに言った。そんな彼女の様子を見てフィンナは微笑んでいる。