俺の部屋では、シグルンとフィンナによるルーン魔法講義が行われていた。
順調に魔法が使えていたが、幾分、疲れてしまった。
「なんだか、疲れを感じるんだが。」
俺はそう口に出した。
「ああ、貴様は人間だったな。確かに精神力を使うから、連続して使うと疲れるのか?」
シグルンは、他人事のようにそういった。
「なるほど、では食事にしましょうか?」
そうフィンナはいった。
食事か。そういえば、この生命の存在が絶望的な世界では何が食べられるのだろうか?
「えっと、何が食べられるんだ?」
俺はそう言った。
「あのな。誠。フィンナ殿下が、素材を魔力から錬成するんだ、それは失礼だろ?」
そんなシグルンの言葉に俺は少し驚いた。
「え?魔力から錬成ですか?」
俺は、思わずそう言った。
「ええ、誠さんは、完全に人間だからそれに合わせて、料理をしようかと思ったのだけど、どうかしら?」
「ありがとうございます。」
俺は要領を得なかったが、そう答えた。
「不思議な顔をしているな、誠。」
シグルンがそう言ってから続けた。
「私は、ヴァルキリーであり、姫殿下は、半神だ。魔力があれば生きていけるのだ。もっと言えば、貴様も契約をしているのだから、魔力だけで生きていけるだろう。だけど、姫殿下は気を使っておられるのだ。」
シグルンがそう言った。
「なるほど、そういうことか。」
俺は納得した。
「シグルン。そこまで改まることもないわ。これはお祝いです。誠さんと出会ったことのです。それにようやく最近は、生活に余裕も出てきたことですし。」
フィンナはそう言った。
「はっ。」
シグルンはそう答えると、頭を下げたのだった。
そして、フィンナが俺を見た。
そんな俺たちの様子を見てからフィンナは微笑んだのだ。
「ふふ、お食事を用意いたしますね。」
彼女はそう言って立ち上がった。
「あっ、じゃあ俺も手伝います。」
俺はそう言った。
「いいえ、誠さんはシグルンとルーン魔法についてお勉強を続けてください。」
フィンナはそう言った後、部屋の外へ出たのだった。
俺はシグルンを見ると、彼女は軽く頷く。どうやらルーン魔法について講義を続けてくれるらしい。
その後、しばらくはシグルンからルーン魔法を教わっていた。
すると、扉をノックする音が部屋に響いた。
「シグルン?誠さん。料理が出来ましたよ?」
そんなフィンナの声が扉のほうから聞こえた。
俺は、さっと立ち上がると扉を開けた。するとそこにはフィンナが立っていた。
「食事の準備ができましたよ?」
そう彼女は言って微笑んだのだった。
「ありがとうございます。」
俺はそう言って立ち上がる。そしてシグルンを見たのだが、彼女も立ち上がったのだった。
三人で部屋を出ると、目の前の部屋。
彼女たちがいうリビングにある大きなテーブルには、料理が置いてあった。
「姫殿下、言ってもらえれば、お手伝いしたのですが。」
シグルンは、どこか申し訳なさそうにそう言った。
「いいのです。それより、冷めないうちに食べましょう?」
フィンナはそう言ってから椅子を引いた。俺もその椅子に座ることにした。
シチューのようなもの。何の肉かは不明だが、ステーキ。牛乳。そして、リンゴやブドウなどの果物だ。
どれもおいしそうだ。
「誠さんのお口に合うかどうか分かりませんが。」
「いえ、こんなに豪華な食事を頂けるなんて……。」
そう、見たこともない食材が使われていて驚いた。
そんな俺たちのやり取りを見ていたシグルンは笑って言ったのだ。
「ふふ、姫殿下の料理だ、ありがたく食べるべきだぞ。」
そんなシグルンに、フィンナは恥ずかしげに笑った。
「では、頂きます。」
俺は手を合わせてそう言って食べ始めた。ステーキを頬張る。
何の肉だろうか、豚や牛、鶏ではないが、癖になるおいしさだ。
そして、シチューに見えたものは、やっぱりシチューだった。
香辛料による濃い味付けでないのは不満だが、それは現代日本にいる俺の舌がおかしいのかもしれない。
「誠さん。ルーン魔法は順調ですか?」
そうフィンナが聞いてきたので俺は答えたのだ。
「はい、順調です。」
「それならよかったです。」
そんな俺とフィンナのやり取りを聞いていたシグルンは口を開いたのだ。
「誠は、ルーン魔法をうまく使えます。」
そう言ったシグルンは、リンゴを齧っていたのだった。
「ルーン魔法は、イメージしたものを作れるんだよな?」
俺はそう言った。
「はい。そうですが。」
フィンナはそう言った。
「何か、作ってみたいですか?」
そんな彼女の質問を受けて俺は考えた。
「うーん。何が作れるのかが分からないからなぁ……。」
俺がそう答えると、フィンナは笑った。
「確かに、誠さんの地にあるものを創造できると面白いかもしれませんね。」
フィンナはそう言った。
「誠。お前はまず、何かを作る前に身の回りの魔法を覚えるべきだ。気温の操作くらい自分でやらないと、すぐに凍死するじゃないか。」
シグルンは、そう俺に注意したのだった。
「確かに、そうですね……。」
俺はそう言ってから、謎肉のステーキに噛り付いた。
俺たちは、食事を終えたあと、食器の洗浄などをどうするかと、俺は思った。
リビングは広く、その見えない一画がキッチンになっているようで、そこには炊事場があった。
「あっ、食器は俺が洗っておきますね。」
そう言って俺は立ち上がったのだが、フィンナに止められたのだった。
「いいえ、私がやりますわ。」
そう彼女は言った。
そんな俺たちのやり取りを聞いていたシグルンが口を開いたのだ。
「姫殿下、誠には、学んだルーン魔法を使って片付けをさせるべきです。誠には、私が指導しますので、お気遣いなく。」
そう言った彼女の言葉に俺は同意した。
「フィンナさん。俺が後片付けをしますよ。」
俺がそういうと、フィンナもそれに同調する。
「そうですか。では、私もその手ほどきをしましょう。いいでしょう?シグルン。」
フィンナは楽し気にそういった。
それから、俺は、シグルンやフィンナと一緒に皿を洗ったりするだけなのだが。
この異世界では驚くことばかりだった。
水のルーン魔法で皿を洗い、水分を飛ばす。そして、風で水分を飛ばしながら乾拭きをする。
その一連の動作が当たり前のようだった。
もちろん合成洗剤なんてないので、俺はふと思った。
「うーん、ちょっとこれから洗剤をイメージしてみようかな。」
「石鹸ですか?」
どこか、期待した様子でフィンナは俺を見る。
「ええ、まぁ、そんな感じです。」
俺はそう答えたのだった。
そして、俺がイメージしたのは、洗剤が流れるイメージなのだが。
しかし、何も起こらなかった。
「あれ?おかしいな……。」
俺は思わずそう言ってしまうが、そんな俺を二人は見ているのだ。
「誠さんは、本当に面白い方ですね。」
フィンナはそう言ってフォローしてくれたのか。
とりあえず、洗剤は不発だ。俺には、そうなった意味が分からなかったが、とりあえず後回しにした。
そんなことをしていると、後片付けも終わったのだった。
リビングのテーブルの周囲にある椅子に3人は座っていた。
「ああ、そういえば。誠は人間だったな。」
シグルンは、同じく座っていた俺へそう話しかけた。
「もちろん、そうだ。」
「じゃあ、トイレとか風呂とか必要だよな?」
「ああ。もちろん、そうだが。」
「人間の体は、なにかと不便だな。」
そんなシグルンの言葉を受けて、フィンナが口を挟むのだった。
「誠さん、お手洗いは廊下を出ると、すぐです。お風呂も、その近くです。」
そう彼女は指さした方向を見ると……そこにはドアがあるのが見える。
「ありがとうございます。じゃあ、ちょっと行ってきますね!」
俺はそう言った。
「気温の操作を忘れるなよ、誠。死ぬぞ。」
リビングから出ていこうとする俺へ、シグルンはそう言った。
「シグルンさん、分かりました。」
俺は、そう言ってリビングを出た。
リビングから出ると、俺は自らの魔法を使って気温を操作していた。
そんな調子で、廊下から出て、あちこちを探索する。
使われていない部屋のようなものがあちらこちらへ存在する。
しばらくすると、どこにトイレがあった。
かなりリビングからは近い場所だ。
俺は、その中へ入る。
「なるほどな……。」
俺はそう呟くと、用を足したのだった……。
このトイレは、水道などの概念がない。
つまり、水のルーン魔法を使用することが前提である。
俺は魔法を使って、流した。
そして、すぐ近くが風呂になっていると聞いていたので、トイレから出て、その風呂のほうへ向かった。
廊下を出ると確かにそこにあった。
俺は風呂場で服を脱ぎで、その中を確認した。
石造りの銭湯という感じだった。
しかし、シャワーヘッドなどはない。湯舟にも水道の蛇口のようなものは見当たらなかった。
この異世界の風呂は、完全に魔法前提の作りだ。
俺は、ルーン魔法を使っていい感じのお湯をためることにした。
そして、湯舟にお湯がたまると、俺はその中へ入った。
「ああ……気持ちいいなぁ……。」
そんな声が思わず出たのだった。
俺は風呂を出ると、体を拭いて服を着る。そしてリビングへ戻った。
「誠さん!こちらをどうぞ。」
にこやかな笑顔でフィンナが俺へ手渡してきた。
新しい服のようだ。シンプルなズボンと上着だ。
「ありがとうございます。」
俺は、フィンナへそう言った。
「いいえ。これを作ったのは、シグルンです。」
フィンナはそう言ってシグルンのほうを見た。
俺もシグルンのほうを向くと。
プイっと彼女は顔を背けたのだが、俺は思わず笑ってしまった。
そして、フィンナからもらった服は手触りがよく、温かそうだった。
「シグルンさん。ありがとう。」
俺は、シグルンへそうお礼を言った。
「ふん、これくらい大したことはない。それに、勝手に凍死されても困るからな。」
そういう彼女は、どこか照れているように見えるが、そういった。
「いいや、それでもうれしいよ。シグルンさん。ありがとう。」
「ああ。分かった。」
シグルンはそう言って、自分の部屋へと向かっていった。
その様子をフィンナは、微笑んで見ていたのだった。
俺はそんなフィンナに改めてお礼を言ったのだ。
「ありがとうございます。」
すると、彼女は俺を見た。
「誠さん。私は、誠さんがシグルンと仲良くなってくれてうれしいです。」
そんな彼女の笑顔を見て、俺も自然と笑みになったのだった……。
順調に魔法が使えていたが、幾分、疲れてしまった。
「なんだか、疲れを感じるんだが。」
俺はそう口に出した。
「ああ、貴様は人間だったな。確かに精神力を使うから、連続して使うと疲れるのか?」
シグルンは、他人事のようにそういった。
「なるほど、では食事にしましょうか?」
そうフィンナはいった。
食事か。そういえば、この生命の存在が絶望的な世界では何が食べられるのだろうか?
「えっと、何が食べられるんだ?」
俺はそう言った。
「あのな。誠。フィンナ殿下が、素材を魔力から錬成するんだ、それは失礼だろ?」
そんなシグルンの言葉に俺は少し驚いた。
「え?魔力から錬成ですか?」
俺は、思わずそう言った。
「ええ、誠さんは、完全に人間だからそれに合わせて、料理をしようかと思ったのだけど、どうかしら?」
「ありがとうございます。」
俺は要領を得なかったが、そう答えた。
「不思議な顔をしているな、誠。」
シグルンがそう言ってから続けた。
「私は、ヴァルキリーであり、姫殿下は、半神だ。魔力があれば生きていけるのだ。もっと言えば、貴様も契約をしているのだから、魔力だけで生きていけるだろう。だけど、姫殿下は気を使っておられるのだ。」
シグルンがそう言った。
「なるほど、そういうことか。」
俺は納得した。
「シグルン。そこまで改まることもないわ。これはお祝いです。誠さんと出会ったことのです。それにようやく最近は、生活に余裕も出てきたことですし。」
フィンナはそう言った。
「はっ。」
シグルンはそう答えると、頭を下げたのだった。
そして、フィンナが俺を見た。
そんな俺たちの様子を見てからフィンナは微笑んだのだ。
「ふふ、お食事を用意いたしますね。」
彼女はそう言って立ち上がった。
「あっ、じゃあ俺も手伝います。」
俺はそう言った。
「いいえ、誠さんはシグルンとルーン魔法についてお勉強を続けてください。」
フィンナはそう言った後、部屋の外へ出たのだった。
俺はシグルンを見ると、彼女は軽く頷く。どうやらルーン魔法について講義を続けてくれるらしい。
その後、しばらくはシグルンからルーン魔法を教わっていた。
すると、扉をノックする音が部屋に響いた。
「シグルン?誠さん。料理が出来ましたよ?」
そんなフィンナの声が扉のほうから聞こえた。
俺は、さっと立ち上がると扉を開けた。するとそこにはフィンナが立っていた。
「食事の準備ができましたよ?」
そう彼女は言って微笑んだのだった。
「ありがとうございます。」
俺はそう言って立ち上がる。そしてシグルンを見たのだが、彼女も立ち上がったのだった。
三人で部屋を出ると、目の前の部屋。
彼女たちがいうリビングにある大きなテーブルには、料理が置いてあった。
「姫殿下、言ってもらえれば、お手伝いしたのですが。」
シグルンは、どこか申し訳なさそうにそう言った。
「いいのです。それより、冷めないうちに食べましょう?」
フィンナはそう言ってから椅子を引いた。俺もその椅子に座ることにした。
シチューのようなもの。何の肉かは不明だが、ステーキ。牛乳。そして、リンゴやブドウなどの果物だ。
どれもおいしそうだ。
「誠さんのお口に合うかどうか分かりませんが。」
「いえ、こんなに豪華な食事を頂けるなんて……。」
そう、見たこともない食材が使われていて驚いた。
そんな俺たちのやり取りを見ていたシグルンは笑って言ったのだ。
「ふふ、姫殿下の料理だ、ありがたく食べるべきだぞ。」
そんなシグルンに、フィンナは恥ずかしげに笑った。
「では、頂きます。」
俺は手を合わせてそう言って食べ始めた。ステーキを頬張る。
何の肉だろうか、豚や牛、鶏ではないが、癖になるおいしさだ。
そして、シチューに見えたものは、やっぱりシチューだった。
香辛料による濃い味付けでないのは不満だが、それは現代日本にいる俺の舌がおかしいのかもしれない。
「誠さん。ルーン魔法は順調ですか?」
そうフィンナが聞いてきたので俺は答えたのだ。
「はい、順調です。」
「それならよかったです。」
そんな俺とフィンナのやり取りを聞いていたシグルンは口を開いたのだ。
「誠は、ルーン魔法をうまく使えます。」
そう言ったシグルンは、リンゴを齧っていたのだった。
「ルーン魔法は、イメージしたものを作れるんだよな?」
俺はそう言った。
「はい。そうですが。」
フィンナはそう言った。
「何か、作ってみたいですか?」
そんな彼女の質問を受けて俺は考えた。
「うーん。何が作れるのかが分からないからなぁ……。」
俺がそう答えると、フィンナは笑った。
「確かに、誠さんの地にあるものを創造できると面白いかもしれませんね。」
フィンナはそう言った。
「誠。お前はまず、何かを作る前に身の回りの魔法を覚えるべきだ。気温の操作くらい自分でやらないと、すぐに凍死するじゃないか。」
シグルンは、そう俺に注意したのだった。
「確かに、そうですね……。」
俺はそう言ってから、謎肉のステーキに噛り付いた。
俺たちは、食事を終えたあと、食器の洗浄などをどうするかと、俺は思った。
リビングは広く、その見えない一画がキッチンになっているようで、そこには炊事場があった。
「あっ、食器は俺が洗っておきますね。」
そう言って俺は立ち上がったのだが、フィンナに止められたのだった。
「いいえ、私がやりますわ。」
そう彼女は言った。
そんな俺たちのやり取りを聞いていたシグルンが口を開いたのだ。
「姫殿下、誠には、学んだルーン魔法を使って片付けをさせるべきです。誠には、私が指導しますので、お気遣いなく。」
そう言った彼女の言葉に俺は同意した。
「フィンナさん。俺が後片付けをしますよ。」
俺がそういうと、フィンナもそれに同調する。
「そうですか。では、私もその手ほどきをしましょう。いいでしょう?シグルン。」
フィンナは楽し気にそういった。
それから、俺は、シグルンやフィンナと一緒に皿を洗ったりするだけなのだが。
この異世界では驚くことばかりだった。
水のルーン魔法で皿を洗い、水分を飛ばす。そして、風で水分を飛ばしながら乾拭きをする。
その一連の動作が当たり前のようだった。
もちろん合成洗剤なんてないので、俺はふと思った。
「うーん、ちょっとこれから洗剤をイメージしてみようかな。」
「石鹸ですか?」
どこか、期待した様子でフィンナは俺を見る。
「ええ、まぁ、そんな感じです。」
俺はそう答えたのだった。
そして、俺がイメージしたのは、洗剤が流れるイメージなのだが。
しかし、何も起こらなかった。
「あれ?おかしいな……。」
俺は思わずそう言ってしまうが、そんな俺を二人は見ているのだ。
「誠さんは、本当に面白い方ですね。」
フィンナはそう言ってフォローしてくれたのか。
とりあえず、洗剤は不発だ。俺には、そうなった意味が分からなかったが、とりあえず後回しにした。
そんなことをしていると、後片付けも終わったのだった。
リビングのテーブルの周囲にある椅子に3人は座っていた。
「ああ、そういえば。誠は人間だったな。」
シグルンは、同じく座っていた俺へそう話しかけた。
「もちろん、そうだ。」
「じゃあ、トイレとか風呂とか必要だよな?」
「ああ。もちろん、そうだが。」
「人間の体は、なにかと不便だな。」
そんなシグルンの言葉を受けて、フィンナが口を挟むのだった。
「誠さん、お手洗いは廊下を出ると、すぐです。お風呂も、その近くです。」
そう彼女は指さした方向を見ると……そこにはドアがあるのが見える。
「ありがとうございます。じゃあ、ちょっと行ってきますね!」
俺はそう言った。
「気温の操作を忘れるなよ、誠。死ぬぞ。」
リビングから出ていこうとする俺へ、シグルンはそう言った。
「シグルンさん、分かりました。」
俺は、そう言ってリビングを出た。
リビングから出ると、俺は自らの魔法を使って気温を操作していた。
そんな調子で、廊下から出て、あちこちを探索する。
使われていない部屋のようなものがあちらこちらへ存在する。
しばらくすると、どこにトイレがあった。
かなりリビングからは近い場所だ。
俺は、その中へ入る。
「なるほどな……。」
俺はそう呟くと、用を足したのだった……。
このトイレは、水道などの概念がない。
つまり、水のルーン魔法を使用することが前提である。
俺は魔法を使って、流した。
そして、すぐ近くが風呂になっていると聞いていたので、トイレから出て、その風呂のほうへ向かった。
廊下を出ると確かにそこにあった。
俺は風呂場で服を脱ぎで、その中を確認した。
石造りの銭湯という感じだった。
しかし、シャワーヘッドなどはない。湯舟にも水道の蛇口のようなものは見当たらなかった。
この異世界の風呂は、完全に魔法前提の作りだ。
俺は、ルーン魔法を使っていい感じのお湯をためることにした。
そして、湯舟にお湯がたまると、俺はその中へ入った。
「ああ……気持ちいいなぁ……。」
そんな声が思わず出たのだった。
俺は風呂を出ると、体を拭いて服を着る。そしてリビングへ戻った。
「誠さん!こちらをどうぞ。」
にこやかな笑顔でフィンナが俺へ手渡してきた。
新しい服のようだ。シンプルなズボンと上着だ。
「ありがとうございます。」
俺は、フィンナへそう言った。
「いいえ。これを作ったのは、シグルンです。」
フィンナはそう言ってシグルンのほうを見た。
俺もシグルンのほうを向くと。
プイっと彼女は顔を背けたのだが、俺は思わず笑ってしまった。
そして、フィンナからもらった服は手触りがよく、温かそうだった。
「シグルンさん。ありがとう。」
俺は、シグルンへそうお礼を言った。
「ふん、これくらい大したことはない。それに、勝手に凍死されても困るからな。」
そういう彼女は、どこか照れているように見えるが、そういった。
「いいや、それでもうれしいよ。シグルンさん。ありがとう。」
「ああ。分かった。」
シグルンはそう言って、自分の部屋へと向かっていった。
その様子をフィンナは、微笑んで見ていたのだった。
俺はそんなフィンナに改めてお礼を言ったのだ。
「ありがとうございます。」
すると、彼女は俺を見た。
「誠さん。私は、誠さんがシグルンと仲良くなってくれてうれしいです。」
そんな彼女の笑顔を見て、俺も自然と笑みになったのだった……。