二千××年 四月十五日。窓から朝の冷たい春風が通り過ぎていく。
病室から見える桜の木には、小さいつぼみ。
もう少しで咲くこの桜を窓越しではなく、実際に外に出て、見て、触れることが私の夢。
欲を言うなら、昔みたいに普通の暮らしをしてみたい。もっと生きたい。
叶えられそうにない夢。
だけど少しでも希望があるなら、それに賭けてみたい。
コンコン、と優しく扉を叩く音が聞こえる。
「陽葵さーん。おはようございまーす」
看護師さんの眠そうな声が病室内に響く。
「片桐さん。おはようございます。」
「毎朝早いですねー、ふわあ」
大きく口を開けながらあくびをする片桐さん。
この人はいつも目の下に隈をつくっている。ちゃんと休息出来てないのだろう。
「あはは、いつも寝てばかりですから。
片桐さんもきちんと寝て下さいね。休むのは大事です」
はーい、と目を擦りながら気怠げに返事をする彼女の姿は本当に私より年上なのか疑ってしまうぐらいに幼く見えた。
「あ、そういえば今日は高校の入学式なんですよ」
彼女の言葉を聞いて私は再度窓の方に目を向けた。
歩道には制服を着た生徒とその親御さんらしき人が居る。
「いやー初々しいなー。
あーあー、歩きスマホは危ないよー…」
「誰目線ですか…片桐さんはどこの高校だったのですか?聞いても分からないかもしれませんが、」
「私は…北高でした。」
思い出に浸っているのか、少し口角が上がっているように思える。
「…って朝食忘れてた~!取ってきますね!」
「あ、え!」
本当に忙しない人。うるさいし。
だが悪い気はしない。あの人が居なくなると誰も居ない病室が寂しく感じられる。
「入学式、新しい出会い。」
…
「いいな~、これから文化祭とか体育祭とかで青春するのか。楽しそう」
私には縁が無い世界、だからどうしても羨ましくなってしまう。
___普通に生活できている人が。
病室から見える桜の木には、小さいつぼみ。
もう少しで咲くこの桜を窓越しではなく、実際に外に出て、見て、触れることが私の夢。
欲を言うなら、昔みたいに普通の暮らしをしてみたい。もっと生きたい。
叶えられそうにない夢。
だけど少しでも希望があるなら、それに賭けてみたい。
コンコン、と優しく扉を叩く音が聞こえる。
「陽葵さーん。おはようございまーす」
看護師さんの眠そうな声が病室内に響く。
「片桐さん。おはようございます。」
「毎朝早いですねー、ふわあ」
大きく口を開けながらあくびをする片桐さん。
この人はいつも目の下に隈をつくっている。ちゃんと休息出来てないのだろう。
「あはは、いつも寝てばかりですから。
片桐さんもきちんと寝て下さいね。休むのは大事です」
はーい、と目を擦りながら気怠げに返事をする彼女の姿は本当に私より年上なのか疑ってしまうぐらいに幼く見えた。
「あ、そういえば今日は高校の入学式なんですよ」
彼女の言葉を聞いて私は再度窓の方に目を向けた。
歩道には制服を着た生徒とその親御さんらしき人が居る。
「いやー初々しいなー。
あーあー、歩きスマホは危ないよー…」
「誰目線ですか…片桐さんはどこの高校だったのですか?聞いても分からないかもしれませんが、」
「私は…北高でした。」
思い出に浸っているのか、少し口角が上がっているように思える。
「…って朝食忘れてた~!取ってきますね!」
「あ、え!」
本当に忙しない人。うるさいし。
だが悪い気はしない。あの人が居なくなると誰も居ない病室が寂しく感じられる。
「入学式、新しい出会い。」
…
「いいな~、これから文化祭とか体育祭とかで青春するのか。楽しそう」
私には縁が無い世界、だからどうしても羨ましくなってしまう。
___普通に生活できている人が。