静寂が耳を突き、居た堪れない気持ちになっていく。彼からの言葉を待っている間は生きた心地がしなくて、足元に落ちている砂利を睨みつけていた。

 暫くして、そろりと上目で吾一を見てみた。すると彼は、一世一代の大告白をした私をよそに、夏季限定ブルーベリー味のチョコを食べているのだから驚きだ。

「やばい。もう溶け始めてる。早いところ食っちゃわないとだ」

 私の口があんぐりと開いたのは、無論そのチョコを食べたいからじゃなくて、仰天したから。

 今このシチュエーションで、なんでチョコを食べられるの?っていうかそれ、私にくれたんじゃなかったっけ?もしかして、揶揄ってる?

 と、次々に疑問符が浮かび、眉間へ皺が寄る私。ハテナのひとつを投げてみる。

「ねえ吾一、私のこと揶揄ってる?」
「いいや?俺はチョコのこと頬張ってる」
「ほら。やっぱり揶揄ってんじゃん、最悪」
「揶揄ってねえよ、狼狽えてんだよ」

 見りゃわかんだろ、と顔を顰め、今度は缶に口をつける彼。真っ逆さまにしたその中見を飲み干す姿を見て、ああと私は理解した。だって吾一は私と正反対で、普段甘いものなど食べないもの。

 あはっと溢れた笑みを惜しみもなく見せつければ、「笑うな」と寄越される顰めっ面。吾一の頬が赤く染まって嬉しくなる。
 浮かれてしまった、期待した。もしかして、吾一も私を好きなんじゃないかって。

 ふたりの間で、そっと広げられた大きな手のひら。そこに手を重ねたら、大事そうに包んでくれた。

「でもごめん。俺、遠距離恋愛は自信ないんだ。だから沙里とは付き合えない」